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11. つららとドラゴン 五

「カティア! お願い! 私をにいなの所まで連れて行って! 今、水に流されちゃったの。私の大事な家族なの。お願い!」

 みいなはドラゴンを見上げました。


 ドラゴンはのっそりと首を下げると、正面からみいなの顔を見つめました。いくらゲームで毎日一緒に戦っているからといって、目の前でドラゴンを見るのはこれが初めてです。大きな金色の瞳は、黒い瞳孔が縦長に細くなっています。まるで敵を威嚇している時の猫のようです。そんな瞳に見つめられるのは、正直とっても怖いです。

 でも、みいなは引きませんでした。震える声で続けます。


「お願い。にいなを助けて」

 ドラゴンの顔がどんどん近づいてきて、思わずみいなは目をぎゅっと瞑りました。ドラゴンの熱い鼻息がみいなの顔にかかって、みいなの髪の毛を揺らします。


 この大きな口でパクリと食べられてしまうかもしれない。

 みいなは拳をぎゅっと握りました。


 くんくんとみいなの匂いを嗅いだドラゴンは、みいなの頭に鼻を擦り寄せると、「グォ」と小さい声で鳴きました。その声が思いのほか優しくて、みいなはおそるおそる目を開けました。


「カティア……?」


 カティアはそのままくるりと後ろを向くと、尻尾をピタンと一度跳ねさせました。そして首だけみいなの方を向いて、軽く首を傾げました。


「カティア……えっと、もしかして乗せてくれるの?」

 カティアはいつも背中に乗せてくれるのです。そしていつも二人で自由に空を飛び回るのです。どこまでも高く、自由に飛び回れる世界は、みいなにとってとても大切なものです。


 みいなは思わず自分の格好を確認しました。いつもカティアに乗るときは、飛行用の装備を身につけています。ですが今日はそんなものはありません。普段着と、濡れたコート。それから中まで水が染み込んでしまった運動靴。


 今日は装備はないけど……乗る? 乗れる? うん、絶対に乗れる。


 みいなは覚悟を決めると、学校のジャングルジムより大きなカティアの背中によじ登りました。そして、カティアの首の後ろにしがみつきました。ちょうど手の届くところに大きなウロコがあるので、そこに手をかけます。


「カティア、大丈夫だよ。飛んで」

 みいなが軽くカティアの首の後ろを叩くと、水竜はその大きな翼をゆっくりと羽ばたかせました。

 ぐんぐんと空を飛ぶ――と思ったところで、カティアの翼が壁にぶち当たりました。


「ああ、ちょっとここは狭いかもしれないね。いつも飛んでいるのは外だから……ううん、どうしよう、カティア」

 みいなは困ってしまいました。


 カティアは「くーん」と鳴きました。大丈夫だと言っている、とみいなは思いました。

 カティアは翼を引っ込めると、水の中にダイブしました。ばさんと水しぶきがかかりましたが、みいなの体は水面より上にあります。カティアはみいなが乗っている背中と首だけ水の上に出して、尻尾をしならせながらぐんぐんと水の中を進んでいきます。


「わあ! 早い! すごい!」

 にいなは興奮して叫びました。

 水路の水はとても深いようです。どこにも引っかかることなく、カティアは水中を泳いでいきます。水の流れよりカティアの方が早いです。


 これなら、にいなにすぐに追いつくはず。


 水しぶきがあちらこちらで上がっているので、人影を見つけるのは難しいです。

 みいなは大きい声で叫びました。

「にいな、にいな! どこ? 返事をして!」


 前の方に光の玉が集まっているところがありました。


「あそこにきっと、にいながいる!」

 カティアとみいなは光の玉が集まっているところへ急ぎました。ですが、にいなの姿は見えません。


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