11. つららとドラゴン 四
みいなはごくりと唾を飲むと、膝が浸かるまで水に近づいていきました。
体の芯まで凍えそうなほど冷たい水。こんな中に、にいなはいるんだ。
みいなは大きく息を吸って叫びました。
「光の玉さん! お願い! にいなを助けて! 私一人じゃ無理なの!
お願い!」
ふわふわと辺りを舞う光の玉は、ほわっと光ったような気がします。けれど、それ以上のことは起こりません。
「ねえ! お願い! にいなが溺れてるの!」
みいなは涙ぐみながら叫びました。
みいなの叫びもむなしく、ザーザーという川の流れのような音だけが通路に響きます。
やっぱり私じゃだめなんだ。
みいなは落ち込みました。でも、悲しい気持ちに蓋をして、みいなは目元の涙をぐいっと拭います。そして、にいなが流された道の先を睨みました。
一人で行くから、いい。
みいなは思いっきり息を吸い込んで、水の中へダイブしようとします。
すると、一つの光の玉がみいなの顔の前にやってきて、ふわんとほのかに光りました。まるで励ましてくれているようです。
ですが、みいなはそれどころではありません。早くしないと、にいなが見つからなくなってしまいます。
にいなはさっきよりもっと力強い声で言いました。
「お願い! にいなを助けて! 助けてくれないなら、どいてよ!」
私にはできないなんて思っている場合じゃないの。
私がやらないと。私はお姉ちゃんなんだから。にいなを助けないと。
みいなはそう叫びました。みいなのその力強い声に反応して、光の玉はどんどんと集まってきます。
ぎゅうっと集まってきた光の玉たちは、広がったり、縮んだりを繰り返しながら、一つの塊になっていきます。
やがて光の玉は、何かの生き物のような姿に変わっていきます。
犬か、猫か、それとも別のものか。分かりませんが、頭のような部分と、体のような部分が見えます。
みいなはその様子を身じろぎもせずに見つめました。いま変なことをしてしまったら、光の玉は散ってしまうかもしれないと思ったからです。
この変化が起こっている間、最初にみいなの元へやってきてくれた一つの光の玉は、ずっとみいなの近くをふわふわしていました。まるでみいなに付き添ってくれているようです。その光の玉はみいなの額に近づいてきました。
お願い。助けて。
みいなは目を瞑って心の中で祈りました。
その光の玉は、みいなの願いに応えるようにほわんと光ると、生き物のような姿になった大きな光の塊の頭の部分を目がけて、ぎゅんと飛んで行きました。そのまま塊の中へ突っ込んでいきます。
光の塊がより一層光りました。そしてそれは、徐々に濃い色へと変わっていきます。
高い天井へと伸びていった光の塊は、大きな口を開けて吠えました。
――グォォォォ!
太い首をしならせて、吠える光の塊。いえ、これは――
「ドラゴンだ」
みいなはつぶやきました。
みいなの目の前に立っているのは、エメラルドグリーン色のドラゴンでした。
口の中から覗くのは鋭い牙。
ギョロリとした大きな目。
何でも引き裂いてしまいそうなほど鋭い爪。
全身を覆う硬くて艶やかな鱗は、きらきらと輝いています。
それは、みいながゲームでいつも相棒として一緒に戦っている水竜にそっくりでした。
「カティア!」
みいなは叫びました。
みいなは相棒のドラゴンをカティヤと名付けています。カティアは火竜や土竜のように胴体が太い竜ではありません。竜の中ではほっそりしている方で、この通路でも通り抜けられるくらいの余裕があります。
みいなは足元の水をかき分けて、自分より何倍も大きなドラゴンに走り寄りました。




