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11. つららとドラゴン 三

「え、違うんだってば! 違うの。降りてきてって言ってるんだってば! そんなに光っちゃダメなんだってば!」

 にいなは一生懸命大きな声で言いましたが、ピシピシピシという音にかき消されて、声が天上まで届いたのかどうかはわかりません。


 すると、ズサッ! と大きな音を立てて、大きなつららが道の真ん中に突き刺さりました。

 それを合図に、大小さまざまなつららが勢いよく上から落ちてきます。


「わわわわわ!」

 にいなとみいなは急いで後退りました。

 つららが次々と突き刺さる音が、石の通路に鳴り響きます。

 二人はその様子を黙って眺めているしかありませんでした。

 つららの大雨なんてものがあったら、きっとこういう光景になるのかもしれません。


 やがて通路は、足の踏み場もないほどつららが突き刺さってしまいました。つららの上にまたつららが突き刺さり、二人の背丈を超えるほどの高さになっています。

 これでは道を歩くことはできません。よじ登ろうと思っても、つららの表面は、ギザギザになっていて、触ったら怪我をしそうです。


 つららの雪崩なだれのようになってしまった通路に、上でぷかぷかと浮かんでいた光の玉が降りてきました。

 ポワンポワンと光を増しながら降りてくる光の玉に合わせるように、つららもどんどん光っていきます。ところどころ白っぽかったつららは、どんどん透明になり、ツヤを増していきます。

 そして――


 つららがくねっと曲がったと思うと、ぱしゃんと水たまりに沈んでいきました。つららだったものが、水に変わってしまったのです。下の方はもう溶け始めていたのか、いつの間にか地面には水が溜まっています。


「わ! つららが溶けてるよ! どうしよう!」

「見て! 上から水が降ってくる!」

 にいなとみいなは同時に言いました。


 地面に刺さったつららは溶けていき、天井からは雨のように大粒の水が降ってきます。水はどんどんと量を増して、にいなとみいなの足元まで迫ってきました。通路はあっという間に水路になってしまいました。

 にいなは後ろに逃げようとしましたが、水の勢いに足を取られてしまいました。そのまま尻もちをついてお尻の後ろに手をつきました。そして、岸辺で波に引っ張られるように、あっという間に水に流されてしまいました。


 みいなは壁に手をついて、水に流されないように足で踏ん張りながら、にいなに手を伸ばそうとしました。ですが、間に合いません。


「にいな! なんで前の方に行っちゃうの!?」

 みいなは叫びながら、流されていくにいなと壁、そして水面を見て、ハッと気づきました。歩いている時にはわかりませんでしたが、この通路は前方に向かってわずかに下に傾いているのです。

 水は、そしてすべてのものは、上から下へ落ちる。重力というものです。

 だからにいなも、ウォータースライダーを滑るように、下に流れていってしまったのです。

 みいなが考えることができたのはそこまででした。みいなも足元を水の勢いにすくわれて、転んでしまいました。


「にいな!」

 掴まることができる石のでこぼこを手で探しながら、みいなは精一杯叫びました。前の方に、にいなの頭が見えます。

「みいな! 助けて!」

 にいなが叫びます。


「助けてって言われたって! どうすればいいの?」

 みいなは起き上がって、壁の石に爪を食い込ませながら水の勢いにあらがいました。


「光の玉にお願いして! きっとなんとかしてくれるから!」

 にいなは必死に返事をします。


「なんとかって……なんとかなんて、できないよ! だって光の玉は、にいなのお願いは聞くけど、私の言うことなんて聞いてくれないし!」


「そんなことない! みいなだってできる! お願い!助け――」

 にいなの頭がどんどんと見えなくなってしまいます。みいなのお腹はぎゅうっと痛くなりました。


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