11. つららとドラゴン 二
にいなは天井に生えている太い針のようなものと、地面に突き刺さったものを交互に見ました。
「あ! みいな、これ私、知ってる! つららって言うんだよ。氷が固まるとこういう形になるの。前におばあちゃんちに行った時に、屋根にいっぱい生えてたんだ。雪が一回溶けて、屋根から落ちながら固まると、ああいう形になるんだって」
にいなは知っていることを話せることが嬉しくて、自慢げにみいなに言いました。
「うん、それは知ってる。知ってるんだけど……これ、どうしよう?」
みいなは天井から目を離さずに呟きました。
鋭い物の正体がつららだとわかったからといって、先に進む助けにはなりません。
「あのね、おばあちゃんはね、つららが屋根にあると危ないから気をつけなさいって言っててね。おじさんがね、ほうきでパキパキって割って、落っことしてたよ」
にいなはほうきを振り回す仕草をします。
「でも私たちには落とせないでしょ」
あんなに高いところにあるのです。二人が背伸びをしても、肩車をしても、絶対に届きません。もし届いたとしても、あんなに太いつららを手で折ることなんて絶対にできません。
「あとね、おばあちゃんがね、つららは春先のちょっと溶けてきたくらいが一番危ないから、気をつけなさいって言ってたよ」
――ビシビシビシ
――ビシビシビシ
――ビシビシビシ
つららから音が聞こえてきます。
ぽとっと水滴が一粒落ちてきて、石だたみの地面にシミを作りました。
「もしかして……もしかして、このビシビシっていう音、氷が溶けてきてる音じゃないの?」
天井と地面を見ながら、みいなは呟きました。
大きいつららがそれに返事をするように、ビシッと大きな音を出しました。
「なんで溶けちゃうんだろうね? こんなに寒いのに。 って、あ! わかった! 光の玉だ!」
にいなは叫びました。
みいなは「何言ってんの?」という顔をしてにいなを見ました。
「ほら、この光の玉、ちょっと触ってみて。ほんのりあったかいの。だからだよ」
にいなはそう言って、近くを浮いていた光の玉をつかんで手のひらに閉じ込めました。
ふわふわと宙を浮いていた光の玉は、にいなの手の中にそっと収まりました。
光の玉は、にいなの手のひらでほわんほわんと光っています。
「ホタルみたいだね。ね、みいな」
にいなは嬉しそうに手を閉じたり、開いたりします。
そうなの? とみいなも光の玉を捕まえようとします。ですが、光の玉はみいなの手を避けるように、ふわっと流れていってしまいます。何度か捕まえ損ねてムッとしたみいなは、逃げられないように素早く光の玉を掴みました。ですが指の間から光の玉はすり抜けていってしまいました。
自分で捕まえるのを諦めたみいなは、にいなの手の中で光っている光の玉をツンと突きました。光の玉はポワンと跳ねました。指先だけほんの少しだけ温かくなります。冬にホットココアをふーふーする時の湯気みたいです。
「本当だ。あったかいね。そうか、このおかげで私たちここで凍えなくて済んだんだね。このダンジョンに入ってきた時、すごく寒かったもんね」
二人ですごいねと言い合います。
天井の方では、ビシビシビシッと続けて音が鳴っています。
「あ、そうだ。上の方の光の玉たちをどうにかしないと。おーい。みんな! 降りてきて! もういいよ、大丈夫だから」
にいなは口に手を添えて叫びました。
そのにいなの声に反応するように、光の玉たちは今までよりもっと光り輝きました。




