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11. つららとドラゴン 一

 みいなはトイレと宝物の扉をすり抜けて、後ろ手に扉を閉めました。すると、扉は跡形もなく消えて、なくなってしまいました。


「ほら! 言ったでしょ。やっぱり扉を閉めちゃ、ダメなんだよ」

 扉の前でみいなを待っていたにいなは、腕を腰に当てて、得意げに言いました。


「はいはい。それにしてもここ、どうしようか?」

 みいなは道の先を見ました。


 トイレから出ても、相変わらず目の前には道が一本あるだけです。

 トイレに行っている間に、何かが変わっていないかなあと二人は心の中で期待していたのですが、そういうわけにはいかなかったようです。


 遠くから猫ちゃんが、じっとこちらを見ています。「にゃあ」とは鳴かないので、きっと二人が猫のところまで来るのを待つつもりなのでしょう。


「うーん、えっと、さっきなんか考えてたんだけどな」

 トイレの扉が現れる前に、にいなは何かを思い付いたような気がしました。でも、トイレに入ったら、すっぽりと頭から抜け落ちてしまったようです。

 にいなはうんうんと考えながら、コートのポケットに手を入れました。

 指先にかつんと何か硬くて冷たいものが当たりました。にいなはそれを取り出してみました。

 手の平に転がったのは、金色のボタンでした。


 そうだ。家を出る前にコートを着て、その時にボタンが一つ取れちゃったんだった。


 にいなはボタンを指でつつきました。

 家にいた頃が、ずっと昔のことのように思えます。もう何十年も、このダンジョンで暮らしていたような気持ちです。


 おうちのことを考えれば、おうちが恋しくなります。

 ママ。 パパ。


 にいなは上の空のまま、「私これちょっと投げてみるね」と言って、ボタンをポーンと道の真ん中に投げました。みいなが止める暇もありませんでした。

 その瞬間、天井から何かがすごい速さで落ちてきました。


 ズサッという音を立てて、天井から落ちてきた『何か』は、地面に突き刺さりました。ちょうど、にいながボタンを投げた場所です。


 二人は思わず息をのみました。


 地面に深々と刺さっていたのは、にいなの腕の長さほどの細長い透明なものです。よく見ると、ボタンが粉々になって地面に散っていました。


「ね、何あれ? 針の大きいやつ?」

 にいなはみいなのコートの袖を引っ張りました。


「わかんないよ。でもあれが刺さったら……」

 みいなは怖くてその先が言えませんでした。


「うーん、天井が暗くて、上がよく見えないんだよね。ね、光の玉さん。上の方まで照らしてくれない?」

 にいなが光の玉に話しかけると、『よしきた!』とばかりに、光の玉はぐんぐんと上に登って行きます。サービスで光の大きさも増してくれているようです。おかげで、天井がよく見えるようになりました。


 光が届いたその先に見えたのは、天井にびっしりと生えている、とがったものでした。小さいもの、大きいもの、いろいろあります。そのすべてが、天井から地面に向かって、ナイフのような鋭い先を下に向けています。


 二人は今度こそ、驚いて声が出なくなりました。


 ――ビシビシビシ


 時々尖ったものから音がします。


 光の玉に照らし出された、透明なもの。まるで、にいながママからもらった水晶のようです。光を反射してきらきらと光るそれは、たいそう美しいのですが。


「にゃー」

 遠くから猫が鳴きました。

 それが「大丈夫だよ」なのか、それとも「気をつけてね」なのかは、二人にはわかりません。


 ただ、これが落ちてきて、体に当たったら、おしまいだということはわかります。


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