10. トイレとお宝の部屋 二
「ね。みいな。私、トイレに行きたい」
「ええ、今?」
「今じゃないよ。ずっと前からトイレに行きたいって言ってたでしょ。もう我慢できないよ。ね、その辺でしちゃってもいい?」
「だめだよ! こういうダンジョンにはモンスターがいるものなんだから。血とかに釣られて、オオカミの大群とかが来ちゃうこともあるんだから。変なのが集まってきちゃったら、どうするの?」
「でも私、どうしても! どうしても! トイレに行きたいの!」
にいなは眉間に皺を寄せて、拳を握りしめて大きな声で叫びました。
にいなの声は思いの外、よく響きました。
すると、それに反応するように、二人の間をふわふわと漂っていた光の玉が次々と光り始めました。ピカッ、ピカッ、ピカッと、光の玉は同じ間隔で光ります。まるで、クリスマスツリーのデコレーションのライトのようです。
やがて光る間隔はどんどん早くなり、パターンが複雑になってきます。強く光ったり、弱く光ったりするその様子は、光の玉同士がおしゃべりをしているみたいに見えます。
ほうぼうに散らばっていた光の玉は、ぎゅうっと二人のところに集まってきました。そして、ピカピカと光りながら、二人が立っている壁の左側に吸い込まれていきました。
何だろう? と思って二人が見ていると、今度は光の玉が入って行った壁の一部が、内側から光り始めました。
眩しい! と二人は目を閉じました。目を閉じていても、目の奥がチカチカします。しばらく待って、大きな光が去ったことを感じた二人は、うっすらと目を開きました。
二人は目をぱちくりさせながら、壁とお互いの顔を交互に見ました。
なんと、壁の光っていたところが扉になっているではないですか。
きらきらと光る扉は、内側から外側に向かってゆっくりと開きました。
二人は首を長くして、そうっと中を覗き込みました。
「ああ! 隠し部屋だ!」
みいなは感嘆の声を上げました。中からは光があふれ出てきます。
「うそ、嬉しい! どうしよう。お宝が眠っているかも! ね!」
みいなは目を輝かせてにいなを見ました。
「お宝じゃなくて、私はトイレに行きたいの!」
にいなは我慢ができなくなって、危ないかもしれないというのは考えずに、部屋の中に走って入りました。後ろからみいなの止める声が聞こえますが、そんなことは知ったこっちゃありません。
絶対にトイレに入るんだから!
意気込んで部屋の中に入って行ったにいなが見つけたのは、お家にあるのとおなじトイレでした。
「ええ、トイレだ! トイレだよ! みいな!」
にいなは嬉しくなってみいなに向かって叫びました。
「ええ。なんだ、トイレか。宝物はないの?」
みいなは残念そうな声で言いながら、にいなに続いて隠し部屋に入っていきました。
隠し部屋は狭い部屋でした。なので、あっという間にぐるりと中を見渡すことができました。もしかしたら、さらに奥に隠し部屋があるのかもしれない、そこにはお宝が眠っているのかもしれない、とどれだけ目をこらして見ても、あるのは洋式トイレと洗面所だけでした。




