2. 罠を仕掛ける 一
にいなが考えた、カラスを完全完ぺきに捕まえる計画に必要なものは次のとおりです。
セロハンテープ
たこ糸
きらきら光る腕輪(今年の夏に、花火大会に行った時に縁日で買ってもらったもの。ぱきっと折ると光り出すもので、一晩中光ることをにいなは知っています。)
それから、おばあちゃんの水晶
まず、たこ糸を二十センチくらいに切ります。そして、水晶にたこ糸を巻きつけます。細長い水晶は、たこ糸で縛るだけだと滑ってしまうので、その上からセロハンテープを貼ります。
もう片方のたこ糸の端には、光る腕輪を結びつけます。
これが、カラスをおびき出す餌の部分です。
腕輪にもう一本、たこ糸を結びつけます。今度は長めに切って、にいなの部屋の窓のカーテンレールの上に引っかけます。にいなの背丈だと届かないので、学習机の椅子を窓の下に動かして、その上に立って作業をします。
そして、窓を少しだけ開けて、水晶と腕輪の餌を外に垂らします。
外から見れば、腕輪と水晶が窓の外で揺れているのが目に入るはずです。にいなの部屋は二階だから、カラスが空の上のほうを飛んでいても、目立つでしょう。
長いほうのたこ糸の端は、にいなの手首に巻きつけるつもりです。
にいなは試しに椅子に座って、たこ糸の端を握ってみました。
真冬に窓を開けると、ヒューヒューと冷たい隙間風が部屋の中に入ってきます。でも、これもしょうがないのです。本当なら、ベランダに水晶を置いて、カーテンの裏に隠れてカラスが来るのを待ちたいところです。でも、二階のベランダは、ママとパパの寝室にあります。夜中に起きてカーテンの裏に隠れていたら、ママにまた怒られてしまいます。
なので、仕方がないのでにいなは自分の部屋に罠を仕掛けることにしました。
たこ糸を手に持ったまま、にいなはそーっと窓の外を見てみました。
すっかり日の暮れた街は、とても静かです。近所のお家には明かりが灯っています。大きな窓ガラスに掛けられた薄いカーテンには人影ができていて、何やら忙しそうに動き回っています。
夜ご飯のいい匂いがしてきました。
お肉の焼ける匂い、お醤油の匂い、揚げ物の匂い。
にいなのお腹がくぅと鳴きました。にいなのお家も、そろそろご飯の時間です。
ママが呼びに来て、罠を見られてしまったら困ります。一度片付けておかなければいけません。
にいなはたこ糸を何度か引っ張ってみました。カーテンレールにたこ糸が擦れる音がします。外にぶら下げた腕輪と水晶は落ちることなく、ぶらぶらと揺れています。
にいなは満足げに笑うと、罠を引き上げました。
椅子から降りると、何かがかたんとずれ落ちた音がしました。
そう。もう一つ、じゅうようなアイテムがあるのです。それは、虫取り網です。
カラスが水晶をつついたら、にいなの手首に巻き付けたたこ糸がピンと張るはずです。そこで、すかさず窓を開けて、虫取り網でカラスを捕まえるのです。
にいなの部屋の向かいの窓は、みいなの部屋の窓です。もし大変なことになったら、みいなに助けてもらおう。
二人がかりなら、きっとカラスも捕まえられるはずです。
これがにいなが今日頭をふり絞って考えた、完全完ぺきな計画です。
にいなは罠を机の引き出しの中に隠すと、ご飯を食べて、お風呂に入って、歯磨きをして、ママとパパにおやすみなさいをしました。