表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/137

9. 迷路と落とし穴 四

 二人は立ち止まって考えました。

 この猫ちゃんは、今まで二人のことを助けてくれました。猫ちゃん自身が二人を危険な目にあわせたことは、一度もありません。

 きっと、この道が一番まともで、他の道はもっと危険なのかもしれない、と二人は思いました。

 それに、他の道へ行ってしまったら、猫ちゃんと離れることになってしまいます。この迷路のような道を二人だけで進むのは怖いです。


 でも、じゃあ、どうしよう。


 二人は途方に暮れました。


 みいなはゆっくりと一歩を踏み出しました。落とし穴の近くまで行って、穴をじっと見つめます。


 ぽっかりと口を開ける穴は、まるでみいなたちのことを食べてしまいそうです。みいなはゴクリとつばを飲みました。


 私がお姉ちゃんなんだから、私がしっかりしないと。

 みいなは深呼吸しました。目をぎゅっとつぶって、ほっぺたを手でぱしんと叩きます。


「いい? にいな。よく聞いて。この道を進もう。私が先にジャンプする。あっちに着いたら、にいなのことをちゃんとに捕まえるから。にいなもジャンプしてくるんだよ。分かった?」

 みいなは真剣な顔でにいなに言いました。


「でも、そんな! こんな大きい穴、私、飛び越えられないよ」

 にいなは、いやいやをするように首を振ります。


「そんなことない。にいなはいつも外で遊んでいるでしょう。これは……そうだな。学校のアスレチックジムと同じだよ。ほら、階段の五番目から、手すり棒の所にジャンプするところがあるでしょう? あれと同じ。勢いをつけてジャンプすれば、大丈夫。にいななら、絶対にできるから」


 みいなは励ますようにそう言いましたが、本当に自信がないのは自分の方です。みいなは体育の授業以外、お外で遊ぶことはほとんどありません。

 みいなは本当は、学校のアスレチックジムでだって、遊んだことはありません。だから、跳べるかどうかなんて、わかりません。でもこれ以上怖くなる前に、早く跳んでしまおうと思いました。


 底なし穴がぽっかりと開いている、ということを思えば思うほど、頭が下に、下にと下がってきます。


 どうしよう私、ここで飛べなかったら……

 ここで死んじゃったら……

 ママ! パパ!


「にゃんにゃんにゃん!」


 向こう側にいる猫がその場でジャンプしながら、二人に何かを語りかけています。


 何だろう?


 二人は首を傾けました。


 うーんとうなって、にいなは「あ! わかった」と明るい声で言いました。


「あのね、パパが言ってたんだけどね、大きくジャンプするときは、下を向いちゃいけないんだって。そうすると頭が下がって、体が下向きになっちゃうから、大きく跳べないんだって。だからまっすぐ前を見てね、跳べるぞ! って思って、ええい! って跳ぶんだって。大丈夫。みいな、私も一緒に行くよ。せーの! でジャンプしよう」

 顔を輝かせてにいなは言います。


「でも……二人で一緒にジャンプして、失敗しちゃったら……」

 不安な気持ちと、ほっとした気持ちが混ざりながら、みいなはにいなと穴を交互に見ます。


「大丈夫だよ。あの猫ちゃんが、ぴょんぴょん跳んでたところがあるでしょう? あのくらいの高さのところを見てね、思いっきり足を蹴るの。そしたら行ける。大丈夫」

 にいなは先ほど猫が跳んでいたところを指差します。


 にいなの前向きな言葉に、みいなもそうかなと思うようになりました。

 だってにいなはよく外で遊んでいるのです。にいなが言うんだから大丈夫。


 二人は一緒に跳ぶことにしました。

 少し遠くから助走をつけて、ジャンプするのです。


「行くよ。せーので走り出して、ジャンプだからね! わかった?」

 にいなは50m走をする時のように、よーいドン! の走り出すポーズを取りました。


「わかった」

 みいなもそれに続きます。下を見ないように、猫ちゃんのいるところを見つめます。


「行くよ! せーの!」

 二人は勢いをつけて走り出しました。

 落とし穴ギリギリのところで足を蹴って、ジャンプ!

 二人は高く跳びました。


 それに合わせるように、光の玉が二人の足元にぎゅっと集まってきました。光の玉はスケートボードのような形になって、二人の足を勢いよく前へと滑らせます。

 ふわっと風を切るように二人は飛び上がり、そのまま穴を飛び越えて地面に着地しました。


 はじめににいなが着地しました。それから一歩遅れて、みいながつまづきそうになりながら、地面に降り立ちました。前のめりになった勢いのまま、前に数歩飛び跳ねます。


「わわ!」

 みいなは何とか体勢を整えると、ほっと胸を撫で下ろしました。

 にいなが心配そうにみいなを見ます。みいなは大丈夫と頷いて、にこっと笑いました。


「やった!」

 二人は手を取り合って喜びました。


 猫はしっぽをピンと立てて、二人の足にじゃれついてきました。

 光の玉も嬉しそうに二人の周りを舞っています。


 二人はほっぺたを赤くしながら、笑顔で歩き出しました。

 今ならどんな難しそうなことでも乗り越えられる気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ