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8. ガラスの部屋 五

「待って! わかった。私、これ返すから! ごめんなさい! 許して」

 みいなは暴れるように震える一輪挿しを床に置きました。


 ブルブルと震える一輪挿しは、天井の中心にある光の輪に向かって、ロケットのように飛び上がりました。


 ――ぼふん!


 一輪挿しはあっという間に丸い光に飲み込まれてしまいました。光の輪がめきめきと音を立てながら、一まわり大きくなります。そして、周りを浮かんでいるひび割れたガラスを飲み込みながら、丸い光は徐々に大きくなっていきます。

 その間にも、空中を浮かぶガラスはどんどん割れていきます。


 二人は恐怖で身をすくめました。ガラスが割れていないのは、もう二人のすぐ近くにあるものだけです。


 どうしよう。もうダメだ。


 二人は目をつぶりました。


「にやぁぁん」

 猫は二本足で立つと、前足で扉をカリカリと掻きました。よく見ると、ほんの少しだけ扉に隙間ができています。



「あ、これ横に引くやつだ」

 みいなは猫が開けたわずかな隙間に指を突っ込んで、戸を引き開けました。

 ガラッという音がして、戸はすんなりと開きました。二人は駆け足で引き戸をすり抜けます。


 ガッシャーン!


 後ろを振り向くと、巨大化した丸い光が床に叩きつけられているところでした。丸い光は、平べったく広がって、床に散らばったガラスの破片をさらに飲み込んでいきます。光のオレンジ色がどんどん濃くなっていきます。


 やがて、光の真ん中がぽこりと盛り上がりました。盛り上がった部分はどんどん上に伸びていきます。そこから目と口のようなものが出てきました。

 二人と目が合うと、それは口を大きく開けて、「シャー!」と鋭く鳴きました。

 口から覗くのは細長い舌です。チロチロと真っ赤な舌を出しながら、それは鎌首を上げます。


 二人は息を飲みました。


「へっへっ、ヘビ!」


 オレンジ色に黒色のまだら模様のヘビです。トグロを巻いたヘビは、二人に狙いを定めたようです。二人から目を離さずに、ゆっくりとうねりながら、二人の元にやってきます。


「わわ! こっちまで来ちゃうよ!」

 にいなはその場で足踏みをしました。


「早く閉めなきゃ!」

 にいなは戸を押し戻そうとしますが、ガラスの破片がどんどん部屋の中からあふれ出てきて、閉めることができません。


「みいなも手伝ってよ! 早く!」

 にいなは叫びました。


「そんなことより逃げようよ!」

 みいなはにいなを、戸から引き剥がそうとします。


「でもヘビが追いかけてきたらどうするの!」

 にいなは顔を真っ赤にさせて戸を押しながら言います。


「ええ! どうするって……」

 みいなは部屋の外を振り返りました。

 後ろには、この部屋に入ってくる前と同じ、狭くて暗い道が続いています。光が差し込まない先には、何があるか分かりません。そんな道で、ヘビから逃げ切れる自信はありません。


 みいなは急いでにいなの後ろに立つと、目いっぱい戸を押しました。


 ――キキ、キキ


 少しずつ戸が閉まっていきます。パリパリとガラスの破片が戸に押しつぶされる音がします。


「その調子。あとちょっと!」

 みいなが励まします。


 ――シュッ、シュッ


 ヘビが近づいてくる音もどんどん近くなってきます。


 二人は精一杯の力を込めて、戸を押しました。ですが、大きいガラスの破片が戸に挟まって、これ以上閉めることができません。


「ええい!」

 みいなはそのガラスの破片を、思い切り部屋の中に蹴り飛ばしました。

 ヘビの顔はすぐそこにあります。真っ赤な舌がみいなの鼻先をかすめそうになりました。大きく口を開けたヘビが飛び上がったその時。


 ――バタン!


 にいなが最後の一押しで戸を閉めました。


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