8. ガラスの部屋 一
やがて光のダンスは落ち着きました。部屋は丸い形をしていて、いたるところに光が灯っています。
よく目をこらして見てみると、きらきらの正体はガラスだということがわかりました。
小さいもの、大きいもの、丸いもの、細長いもの。
様々なガラスがふわふわと宙に浮いています。するどく尖ったものは一つもありません。割れているものもありません。完成された美しいガラスたちが、部屋の中でゆったりと踊っているのです。
二人はきらきら光るガラスを見つめながら、夢見心地で部屋の中に入っていきました。
宙を舞うガラスの群れは、完全に止まることはなく、けれど激しい動きをするわけでもありません。
水族館でクラゲを見たことはありますか?
ゆったりと水の中を泳ぐクラゲは、のびのびとしていてとても美しいです。
ガラスたちも、まるで水族館にいるクラゲのように、ゆったりと部屋の中を泳いでいます。
「きれい!」
にいなは声を上げました。
「危ないよ」
みいなは今にもガラスに手を伸ばしそうなにいなを止めます。
「でも、見てよ、あれ。シャンデリアみたい」
にいなは高いところにある天井を指さしました。
天井は、普通のお家の三階ほどの高さにあります。その中心には、大きな丸い光が輝いています。そしてその周りを囲むように、何重にも大小様々なガラスが輪になって浮かんでいます。
ガラスがきらきらと光っているのは、この大きな丸い光を反射しているからでしょう。太陽のような丸い光は、ほんのりと温かい熱を放っています。
幻想的で、美しい光景です。
にいなは心が奪われたように、丸い光と光るガラスに見入っています。
ですが、みいなはにいなほど夢中にはなれませんでした。首の後ろが、チリチリとするような感じがするのです。
「ね、出ようよ、なんかちょっと怖いよ」
みいなはにいなの手を引っ張ります。
「ええ、もうちょっと。きれいだし、何かに似てない? うーん、そうだ! 灯籠流しみたいじゃない?」
にいなはガラスを指差しながら言います。
「灯籠流し? ああ」
みいなはにいなの言っていることがすぐにわかりました。二家族で旅行に行った時に、灯籠流しを見たことがあるのです。
きれいだと、ママもパパもにいな家族も言いましたが、みいなは少し怖いなと思ったのです。真っ暗な川に灯篭が流れていくのは、たしかにきれいではありました。でも、光が暗い川に吸い込まれていくのを見ているうちに、みいな自身も吸い込まれていきそうな気持ちになったのです。『もう行こうよ』と言い出せなかったみいなは、ずっとママの手をきつく握っていました。
部屋の白い壁にはガラスの影がたくさんできていて、長く伸びる影がゆっくりと流れていきます。その様子が、その時のことを思い起こさせたのです。
「ねえ、もう出ようってば!」
焦れたようにみいなは言いました。
「にゃあん」
猫の声がして、二人は声がした方を向きました。
「待って! あそこ、何か書いてある」
にいなが今度は部屋の中心を指さしました。




