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7. 光を灯す 五

 猫はじっと二人を見つめると、前足で顔を洗いました。そして、すくっと立ち上がって、あくびをしながら伸びをします。

『うーん』という声が聞こえてきそうなほど、猫は気持ちよさそうに伸びをします。


 それを見ていた二人も、肩の力が抜けました。

 猫には人をリラックスさせる効果があるのです。

 猫好きの人は、みんな知っています。


 猫は二人の方にお尻を向けて、ピンとしっぽを立てます。そして、二人を振り向くと、まるで『ついてきて』と言わんばかりに、「にゃあ」と鳴きました。


「行く?」

「行くしかないんじゃない? 一本道だし」


「平助はどこに行っちゃったんだろう? って! あ! そういえば、ふっくんのこと忘れてた!」

「ほんとだ! ふっくん、大丈夫かな? どっかで怪我してたり……」


 カラスの女王様に脅されて、それからすぐに扉のなぞなぞに取りかかった二人は、ここまで連れてきてくれた親切なフクロウのことを、すっかり忘れていたのです。


 しまった! という顔で二人はお互いの顔を見ます。


「あんなに高いところから落ちたら……ふっくん……」

 にいなは泣きそうになります。みいなが『怪我』と言ったので、怪我をしているふっくんを想像してしまったのです。


「だっ大丈夫だよ! ふっくんには大きな羽があるでしょう? きっと飛べているはずだから、助かってるよ!」

 にいなを励ますように、みいなは言います。でも、みいなもふっくんが心配で涙目になります。

 いくらふっくんが力持ちでも、みいなとにいなの二人を運んで遠くまで飛ぶのは大変だったんじゃないかと思ったのです。


 疲れて、気を失っていたら、どうしよう……


 みいなはぎゅっと拳を握り締めました。

 にいなも不安げな顔でみいなを見上げます。


「にゃあぁ」

 猫が『だぁいじょうぶよぉ』と言わんばかりにフニャッと鳴きました。


 猫がほんとうにそう伝えたかったのかどうかは、わかりません。でも、猫の鳴き声には、気持ちを落ち着かせる効果があるのです。

 猫好きの人は、みんな知っています。


 二人は気持ちを切り替えて、前に進むことにしました。

 ふっくんを助けるのは、この遺跡を無事に脱出した後にしよう、と決めたのです。

 そして、平助は、きっとこの先で会えるはずだと信じることにしました。


 猫に連れられて、二人はクネクネした道を小走りに進んでいきます。やがて突き当たりにたどりにつきました。

 そこにあったのは、木の扉でした。

 猫は扉の前に座ると、もう一度、「にゃあ」と鳴きました。


「扉だね」

「扉だね」


 木の扉は、濃い茶色でとても頑丈そうです。板チョコのように長方形にでこぼこがあって、これはまた頑丈そうな金属の取っ手がついています。


 ぴしっと閉じた扉の先には何があるのか、見えもしないし、何の音も聞こえません。


「どうする?」

 にいなはみいなを見ながら聞きました。


「どうするって……入るしかないんじゃないかな。この先は行き止まりだし」

 みいなは扉をそっと指先で触りました。

 ビリビリしたりは、しないようです。でも、取っ手に触るのはちょっと嫌だなと、みいなは思いました。


「それもそうだね」

 そう言うやいなや、にいなはあっさりと頑丈な取っ手を両手で掴んで、足を踏ん張ってえいっと扉を開けました。


 これに焦ったのはみいなです。

「にいな! ちょっと待ってよ! そんなにすぐに開けちゃだめだって!」


「なんでよ。みいなが開けろって言ったんじゃん」

 扉は最初は重くて開けるのが大変でしたが、途中からまるで何かに押されるように、ふわっと軽くなりました。


 扉を全開にすると、二人は思わず目をつぶりました。

 部屋の中は、溢れんばかりの光で満ちていたのです。


 ――きらきらきら

 ――きらきらきら


 今まで二人についてきてくれた光の玉より、もっと多くの光です。夕焼けのような暖かいオレンジ色の光です。目が明るさに慣れてしまえば、光はとても優しい色をしていました。


 光はシャボン玉のように上へ上へと舞い上がります。そして、桜の花びらのようにひらひらとゆっくりと落ちていきます。

 その光景はまるで、星が降ってくるようでした。


「わぁ!」

 二人は歓喜の声を上げました。


 オレンジ色の光は、二人の方にも近づいて来ました。二人について来てくれた光の玉が、二人をすり抜けて部屋の中へ入っていきます。光の玉は、楽しそうにオレンジ色の光と混ざり合っていきます。


 まるで、久しぶりに会えたお友達との再会を喜んでいるようでした。


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