7. 光を灯す 二
「まっかな太陽 さんさん光るよ
まんまるお月も きらきら灯るよ
風の子 それゆけ ぼくたちは
元気に光る 未来の希望」
にいなは震える声で歌いました。
目に涙が溜まって、鼻声になります。鼻水をすすりながら、にいなはなんとか一番を歌い終わりました。
でも、なにも起こりません。
「ねえ! みいなも一緒に歌ってよ」
にいなはみいなの手をぎゅっと握りました。
びっくりし過ぎて喉がぎゅっと締まってしまい、声が出なかったみいなは、にいなに手を強く握られて、声を取り戻しました。
「ええ、やだよ。イタタタ。そんなに強く握らないでよ。わかったから」
今度は、にいなとみいなの二人で歌います。
真っ暗だった空間が、ほんの少しだけ明るくなった気がします。
空気も、ほんの少しだけ暖かくなったような気がします。
「みいな、もっと大きい声で歌ってよ。きっと声が小さいとだめなんだよ」
にいなはみいなを励ますように言います。
「やだよ。私、校歌なんて大っ嫌い」
みいなは吐き捨てるように言いました。
『大っ嫌い』という言葉がこだまして、遠くまで弾んでいきました。
何度も自分の『大っ嫌い』という言葉を聞くうちに、みいなはどんどん、ささくれた気持ちになっていきます。
みいなは校歌が好きではありません。
学校も好きではありません。
学校なんて、大嫌い。
『髪の毛染めてるのは不良なんだよ』
『あのくるくるの髪の毛、パーマなんだって。やーい! くるくる! くるくる!』
そうやってみんな私のことをからかって。
ママは先生に相談しなさいって言うけど、先生だって私の髪の毛が嫌いなの、知ってるんだから。
クラスで目立つ割に積極性がないとか、勉強とかスポーツとかが特にできるわけでもないとか、子どもらしい活発さがないとか、そんな勝手なことばっかり言って。私のことなんて放っておいてよ。
学校なんて大っ嫌い!
学校のことを考えたら、みいなのお腹の底はムカムカと熱くなってきました。
暗くて寒くて狭い、こんなわけのわからないところで、学校のことを思い出して、校歌なんて歌わないといけないなんて!
「ね、もう一回歌おう」
にいながみいなを促します。
みいなはお腹の熱さを吐き出すように、ほとんど怒鳴り声に近い音量で、校歌を歌いました。
「まっかな太陽 さんさん光るよ」
――どうせ太陽の当たってる時間は、家にいたいインドア派ですけど。
「まんまるお月も きらきら灯るよ」
――月がまんまるの時なんて、満月の一日だけなんですけど。
「風の子 それゆけ ぼくたちは」
――子供が風の子なんて、今どき言う人いるの?
「元気に光る 未来の希望」
――元気に光らなかったら、未来に希望はないってことなの?
――どうせ私は闇属性ですけど!!!
みいなの大声に釣られるように、にいなも大きな声で歌います。
二人の歌声が、真っ暗な闇の中に響きました。周りがビリビリと小刻みに揺れます。
するとどうでしょう。
どこからともなく、きらきらと光の粒が舞い上がってきました。
やがてそれは、飛んで、跳ねて、くっついて、丸い玉になっていきます。
小さいものはビーズほどの大きさ。大きいものはテニスボールくらい。一番たくさんあるのは、ビー玉と同じくらいの大きさのものです。
蛍光灯のようなきつい光ではなくて、お月様のようなほんわりと優しい光です。
たくさんの光の玉はぷかぷかと宙に浮いて、暗闇を照らしました。




