6. ライオンのドアノッカーと夜色の花 二
「宝物! この中に宝物が隠されているの?」
にいなは目をきらめかせました。
「ね、きらきらしたものも、あるかもしれないよ!」
にいなはみいなの腕を引っ張りました。でも、はねのけられてしまいました。
「ええ、それはもう、きらきらとしたものがたーくさん中に隠されていると言われているんですぜぇ。女王様のベッドの下から、光が漏れていたのに気づきやしたか? あれ、この中に封じ込められている、極上のきらきらとしたものからこぼれ出た光なんでございやす。女王様は、どうしてもあれを手に入れたいんです。だから、あそこに巣を作ったんですぜぇ」
「そうなんだ。でもそんなに欲しいなら自分で取りに行けばいいのに。ね、どこから入るの?」
「そこに扉があるでございやす」
平助は羽をパタパタさせて、岩の一点を指し示しました。
「扉?」
にいなはそちらに目を向けました。
ただの大きな岩だと思っていたそこには、よく見ると扉がありました。
お城の入り口にあるような、大きな扉です。岩と同じ素材でできているので、言われなければ見逃してしまいそうですが、岩と扉の間にうっすらと隙間ができています。
そうっと近づいたにいなとみいなは、固く閉ざされた扉の前であっと目を開きました。
扉の真ん中の、ちょうど二人の手が届く高さのところに、怖い顔をしたライオンの顔が浮き出ているのです。
小玉スイカと同じくらいの大きさのライオンの顔は、鈍い金色をしています。目の前の獲物を噛みちぎろうとするかのように、目はギラギラしています。長いタテガミは後ろになびいていて、今にも扉からすり抜けてきそうな勢いです。
そしてその口には、大きな輪っかが付いていました。
「なに、これ?」
にいなはみいなに聞きました。
「これは、えっとね、多分ドアノッカーって言うんだよ」
みいながライオンをしげしげと見つめながら答えました。
「なに、それ?」
にいなは首を傾げました。
「ライオンの口に輪っかが付いているでしょう。これを持ってコンコンと扉をノックすると、中の人に『来ましたよ』と合図することができるんだよ。この前パパと見た映画に出てきた」
みいなは手でコンコンと叩く仕草をしました。
「ふーん」
にいなはわかったような、わからないような返事をしました。
みいなは、よくみいなのパパと古い映画を見ています。
にいなにはわからなくて、つまらないものです。
馬車とか、鎧を着た人とか、ドレスを着た人とか、王様とか、お姫様が出てくるお話です。でも、出てくる人がみんなしかめっ面をして、難しい話をずっとしているから、にいなは見ていると眠くなってしまうのです。
もっと魔法使いとか、ドラゴンとかが出てくる話がいいのに。
にいながそう言うと、みいなは「そういうやつはゲームでやるからいい」と言います。
「じゃあこれを叩けば中に入れてくれるの?」
――グルグルグル
にいなが金色の輪っかを触ろうとすると、ライオンが低く唸りました。
「わぁ! このライオン、怒ってるよ!」
にいなは慌てて手を引っ込めました。
「そうなんですぜぇ。あっしたちも、なんとか中に入れないか試したことがあるんですけど、このライオンが通してくれないんですぜぇ」
平助は困ったように言います。でも、扉には近寄ってきません。
「でも、中に入るにはここを通るしかないんだよね?」
「入り口はここにしかないですぜぇ」
にいなとみいなは目を見合わせると、頷きました。
そして、「グルグルグル」と唸るライオンの輪っかを、おっかなびっくり手に取って、軽くコンコンと叩いてみました。




