6. ライオンのドアノッカーと夜色の花 一
二人は慌ててカラスの後について行きます。
小走りに暗闇の中を抜ける間中ずっと、ビー玉のような無数の目が、いつまでもにいなとみいなの背中を見つめているようでした。
ふかふかのカラスのベッドから出て、暗い下り坂を降ります。ぐるりとカーブを曲ったその先には、大きな岩がありました。
アスレチックジムと同じくらい大きな岩です。岩の上側には木がびっしりと生えています。
カーカーカーというカラスたちの鳴き声が上から聞こえます。女王様のベッドはこの上にあるのでしょう。
興奮したカラスの鳴き声に、にいなは体を震わせました。
さっきまで、二人はあの中心にいたのです。思い出すと、どんどん怖くなってきました。
ほんとうに、食べられなくてよかった。
にいなが胸を撫で下ろしていると、カラスの平助が岩がせり上がったところに止って、「ここが入り口でございやす」と言いました。
先ほどの低い声とは違って、高い声です。それに、なんだか聞き覚えがある気がします。
平助の声に、にいなは『あっ!』と口を開けました。
この話し方。この声!
「あっ! あなた! 私のきらきら石と水晶を持って行ったカラスでしょう! ひどい! なんでこんな意地悪をするの?」
にいなは平助を指さしました。
それまで偉そうに振る舞っていた平助は、おいおいと泣き始めました。
「申し訳ねぇ。堪忍してくだせぇ、お嬢さん。あっしは、はぐれカラスなんです。どこに行ってもつまはじきにされて、友達も家族もいねぇんだ。でも、女王様が俺を拾ってくれた。だからあっしは、悪いことだと知っていながら、お嬢さんのきらきら石だけじゃなくて、水晶も、とっちまったんだ。すまねぇ、すまねぇ」
平助の苦しそうな声に、にいなの胸は痛みました。やっぱり、このカラスがにいなを騙そうとしているとは思えません。
「仲間はずれにされるのは悲しいけど! だからといって、人のものを取っていいわけがないでしょ! 悪い人とつるむと、自分も悪くなるってパパが言ってたよ!」
初めて平助の言い訳を聞いたみいなは、声を上げて怒りました。みいなは曲がったことが嫌いなのです。
「みいな、もういいよ。カラスさんだって大変だったんだよ。平助だっけ? 私はにいなで、こっちは従姉妹のみいな。道案内よろしくね」
「にいな、なんでそんなにすぐに許しちゃうの? ダメなものはダメってちゃんとに言わないとダメでしょ。そんなんだから、学校でもみんなにいじめられるんだよ」
みいなは今度はにいなに怒ります。
「みいなだって仲間外れにされてるでしょ!」
痛いところを突かれたにいなは、言い返しました。
「私は……私は一人でいるのが好きだからいいの!」
みいなはムキになって言います。
「にいなさん、みいなさん、けんかはやめておくんなせぇ。あっしがなんとか隙を見て、きらきら石を取り戻しますから。ね、お願いだ」
平助が二人を見ながら、おろおろします。
「そうだよ。けんかしてもしょうがないよ。平助も取り戻してくれるって言ってるし。平助、ここはどこなの?」
にいなは平助に聞きました。
「にいなはまたそうやって! もう知らない! 好きにすれば?」
みいなはふてくされて、腕を組んでそっぽを向きました。
「ここは……古い遺跡でございやす」
平助は少し声を震わせながら答えました。
「ねえ、遺跡ってなに?」
にいなはみいなに聞きますが、みいなは、「知らない、そんなの自分で考えれば?」と答えてくれません。
「遺跡っていうのは……ああ、なんて言ったらいいんですかねぇ? ずっと昔に人が住んでいたか、宝物を隠していた場所……でしょうかねぇ。あっしも詳しいことはよくわからねぇです」




