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5. カラスの女王様 三

 そのカラスの一声で、辺りは静まり返りました。

 聞こえてくるのは、にいなとみいなの荒い息の音だけです。


「どうやって食べようかねぇ? やっぱり寒い時期は、鍋に入れて丸ごと煮ちまおうかねぇ。それとも、丸焼きがいいかねぇ。カカカ」

 カラスは、それはそれは嬉しそうにつぶやきました。


 こんな大きなカラスに捕まったら、逃げられないよ。

 怖い! ママ、パパ、助けて!


 にいなは怖くなって目をぎゅっとつぶりました。ですが、すぐそばに感じるみいなの体の温かさに勇気づけられて、目を開けます。


 ……ううん、怖くない。怖くないんだったら!


 にいなは勇気を振り絞って、大きな声を上げました。


「わっ、私たちなんて食べてもおいしくないよ! ごめんなさい。おばあさんのベッドをぐしゃぐしゃにしたのは、謝るから。私たちのことは許して」


「誰がおばあさんだいっ!? アタシはまだ、ピチピチの乙女おとめだよ!!」

 カラスの野太い声が、森の中に響きました。周りの空気がビリビリと震えます。


 ――ウッ、ワオォォォン

 慌てたような犬の遠吠えが響いてきます。


 どうやらカラスを怒らせてしまったようです。


 にいなは必死に頭を働かせました。

 おばさんとおばあさんというのは、とりあえず褒めればいいとテレビで言っていたような気がします。


「ねえ、おばあ――お姉さん。とてもきれいなきらきらの石をしているんですね。私もきらきらしたもの、大好き」


「ああ、これかい? これはね、全部アタシのもんだよ。手下に命令して、取ってこさせたんだ。これなんて素敵だろう? 本真珠のネックレスさ。目の悪いばあさんが、庭に置きっぱなしにしていたのを、手下に取ってこさせたんだ。いいだろう、このツヤ。この輝き。やっぱり真珠は、本真珠じゃないとねぇ。今はフェイクの物も多いからねぇ。これを見つけるのに、どれほど苦労したことか。やっぱり年寄りの方が、こういう良い物を持ってるんだよねぇ。若いカラスは安っちい偽物ばっかり集めてくるから、困ったもんだよ、まったく」


 にいなはカラスの言っていることはよく分かりませんでしたが、カラスがおばあさんから取ったということは分かりました。


「人のものを勝手に取っちゃいけないんだよ! そのおばあさん、きっと悲しんでるよ。返してあげて!」


「おや、おや、おや。お嬢ちゃんは青臭いことを言うんだねぇ。いいかい? お嬢ちゃん、よく聞きな。この世の光るものは、みんなアタシのもんだよ。カラスは光るものが大好きなんだ。私はここの女王様だからね。『うちの仲間に入れてほしけりゃ、光るものを持ってきな』って言えば、手下たちがどんどん光るものを持ってきてくれるのさ。まぁ、本当に欲しい光るものは、まだ手に入らないんだけどねぇ」


 そう言ってカラスの女王様はため息をつきました。


「まあ、そんなことはどうでもいいさ。アタシたちは腹が減ってるんだ。さっさとアタシたちに食われちまいな」


「悪いカラスに食べられるなんて、絶対にいや!」

 にいなはカラスの女王様をにらみつけました。


 今まで怖くてカラスの顔をきちんと見れませんでしたが、にいなはしっかりとカラスの女王様の顔を見たのです。

 そこで、にいなはカラスの額に光っている、赤いきらきらしたものに気づきました。


 あ! あれは! おでこについてるやつは!


「それ、私のきらきら石だよ! 返して!」


 カラスの女王様の額についていたのは、にいなのきらきら石の一つでした。ベランダに干していたら、いつの間にかなくなっていたものです。

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