4. 雲のじゅうたん 二
「まだまだ着かないぞ。この雲のじゅうたんのずっとずっと向こうに、カラスの里はあるんだ。そこまで飛んで行かないといけないからな!」
「ほら! ずっとずっとって、遠いんでしょう? 私、もう嫌だぁ」
みいながイヤイヤするように、首を横に振ります。
「そんなこと言っても……」
にいなだって寒いです。後ろにいるみいなより、ずっともっと、にいなの方が寒いに違いないんです。
「なんでこんなに寒いの?」
にいなも泣きそうになってきました。
「そりゃ、空の上は地面より寒いんだぞ。当たり前じゃないか」
ふっくんが、なんてことないように言います。
「そうなの?」
にいなはびっくりして、ふっくんに聞きました。
「そうだぞ。地面から上に行けば行くほど、空気は冷たくなるんだぞ。宇宙はここよりもっと、ずーっと寒いんだからな。ここはまだマシな方なんだぞ。それに空気が冷たくならなければ、雲だってできないんだぞ。地面の近くに雲はないだろう? 雲は、冷たい空の上だから、雲の形になれるんだぞ」
「すごい! ふっくん、物知りね」
にいなは寒かったことも忘れて、ふっくんを褒めました。
「おいらは世界で一番物知りで賢いフクロウになるんだからな。こんなの朝飯前だぞ!」
ふっくんは羽を大きく羽ばたかせて胸を張りました。
「そんなのどうでもいいよ。私はね、寒いところは好きじゃないし、雲の上になんて用はないし」
みいなは寒いので、口をなるべく動かさないようにしながら、ふてくされます。
「えー、でもきれいだよ、雲のじゅうたん」
「きれいだけど」
空を見上げた時に見える雲もきれいですが、雲の上から見下ろす雲もなかなかきれいなものです。
「なあ、みいなとにいなは、あのカラスを追いかけて、どうするんだ?」
ふっくんが聞きました。
「あのカラスね、私のきらきら石と水晶を持っていっちゃったの! 大切なものだから、返してって言うの」
にいなはこぶしを握りしめました。
「でも逃げられちゃったんでしょ? 返してって言って、返してくれるの?」
みいなは眉をしかめました。
「返してもらうもん!」
にいなはムキになって言います。
「無理でしょ」
すかさず、みいなが言いました。
「返してくれなかったら……返してくれなかったら、えっと、けんかする!」
にいなはこぶしをぶんぶんと振り回しました。大げさに振り回したので、ぐらっと体のバランスを崩してしまいました。
二人とも、ふっくんからすべり落ちそうになります。
「ちょっと! にいなはけんかなんてしたことないんだから、無理なことはしないでよ!」
みいなが両方の太ももで体を支えて、ふんばりました。慌ててにいなの体を引っ張り上げて、元の位置に戻します。
「けんかしたことあるもん! みいなにだって、勝てるんだから!」
「勝てないよ。私のほうが一歳お姉さんで、体も大きいんだから」
「勝てる!」
「勝てない!」
「まあまあ、二人とも。けんかはやめるんだぞ。あのカラスはきっと、カラスの里をしきっている、ギャングカラスの仲間だと思うんだぞ。そうなったら、ちょっとやっかいだぞ」
ふっくんはうーんと考えるように言いました。
「「なんで?」」
二人の声が揃いました。
「カラスの里のギャングカラスは、ずる賢くて、凶暴なんだ。おいらも何回か、けんかしたことあるぞ」
ふっくんはその時のことを思い出したのか、体をぶるっと震わせます。
「ふっくんより賢いの?」
みいなは、ふっくんは世界一賢いフクロウじゃないのかもしれない、と思いながら聞きました。
「もちろん、おいらのほうが賢いぞ! でもギャングカラスは、ひきょうな手をたくさん使ってくるんだ。不意打ちをしたり、仲間をおとりに使ったり、大勢で襲ってきたり。二人とも、騙されないように気をつけるんだぞ」




