4. 雲のじゅうたん 一
ふっくんは大きく羽をはばたかせて、夜空をぐんぐんと上っていきます。
「わぁ!」
にいなとみいなは、驚きの声を上げました。公園のあかりや、家のあかり、街灯がどんどん小さくなっていきます。
うちはどこだろう?
にいなは身を乗り出して、自分の家を探そうとしました。
「ちょっと、にいな! そんなにきょろきょろ動かないでよ。落っこちちゃったらどうするの!」
みいなが後ろから慌てたように言います。
そうだった、とにいなは慌てて姿勢を正しました。そして、ふっくんの背中の羽をしっかりとつかみます。
――ビュゥゥゥゥー
冷たい風が顔に当たって、顔が痛いです。
にいなは張り切って先頭に座らなければよかったと思いました。
だって風のほとんどは、にいなに当たっています。後ろに座っているみいなは、にいなより絶対に暖かいに違いありません。
そうだというのに、みいなは「寒い」と文句を言います。
「みいな、私のほうが寒いんだからね。代わる?」
「こんなところで動けるわけないじゃん。ちょっと、立とうとするのやめてよ!」
みいなが慌ててにいなの肩を押し下げます。
しかたがないので、にいなはコートのフードを深く被りました。すぐに大きくなるから、と大きいサイズのコートを買ってもらったので、目元まですっぽりとフードをかぶることができます。
時々フードをかぶって『おばけが出たぞ〜』とおばけのふりをして遊んでいると、みいなママか、みいなに怒られます。『ちゃんとに前を見て歩きなさい!』と。
みいなのママはしゃきしゃきしていて、にいなのママはおっとりしています。
後ろでゴソゴソと、みいなもコートのフードを被っています。みいなが鼻水をすする音も聞こえてきます。
コートのポケットの中を探してみましたが、ティッシュもハンカチも持たないで出てきてしまったようです。
フードで頭が覆われたからか、少しだけ寒さが和らいだ気がしました。
でも、それも少しの間のことです。やっぱり、寒いものは寒いです。
「にいな、みいな、ちゃんとに掴まっているんだぞ。これから雲の上まで突き進むぞ!」
ふっくんが楽しそうに鳴きました。
次の瞬間です。
にいなの顔にヒヤッとするものが触れたかと思うと、全身が凍えるように寒くなりました。
目の前が真っ白で、真っ暗で、目を開けていることができません。
にいなは目をギュッと閉じて耐えました。
みいなはにいなの頭に顔を埋めています。
息がうまく吸えません。
やだ、やだ、怖い! 怖い!
思わず涙が出てきました。でも、流れ出た涙は目の周りで凍ってしまいます。このまま、目まで凍ってしまうのかもしれません。
スポンと何かが抜けたような感覚がしました。
息を吸うのが少し楽になって、にいなはおそるおそる目を開けました。
すると、目の前に広がっていたのは、白かったり、黒かったり、灰色だったりして、ぽこぽこしている、大きなじゅうたんのようなものでした。
「雲の上に突き抜けたぞ。大丈夫か? 二人とも」
ふっくんが楽しそうな声で、二人に声をかけてきます。
にいなは驚きすぎて、声を出すことができませんでした。なので、返事のかわりに首をこくこくと振りました。
「痛い!」
みいなが叫びました。
急に頭を縦に振ったので、みいなの鼻に、にいなの頭のてっぺんが当たってしまったようです。
「ごめん!」
にいなは謝りました。
「痛い、なんなの、もう。家に帰りたい。こんなところいたくないよぉ」
みいなが泣きそうな声で言うので、にいなは困ってしまいました。
「みいな、大丈夫だよ。もうちょっとで着くよ。ね? ふっくん」
にいなはみいなの手を繋いで、なぐさめます。




