3. フクロウと冒険 四
「おいらの目は、夜でもよく見えるんだぞ。それよりお嬢ちゃんたち、こんな夜中に、こんなにさびしいところで何をやってるんだ? よい子は家に帰って寝るんだぞ」
「フクロウさんだって起きてるじゃない!」
変なフクロウにお説教されて、ムッとしたみいなは言い返しました。
「おいらは夜行性の鳥だから、夜のほうが元気なんだぞ」
「わあ、そうなんだ。すごいね」
にいなは、フクロウの頭をそっと撫でてみました。
フクロウはおとなしく、にいなに撫でられています。
ふわふわした毛は、先のほうは冷たいけど、体に近いところは暖かいです。
「にいな! 野鳥に触っちゃいけませんってママが言ってたって、さっき言ったでしょ! バイキンを持ってるんだってば!」
みいなはにいなの手を引っ張りました。
「おいらはさっき水浴びしてきたばっかりさ。それから眠いのを我慢して、太陽の光をたっぷり浴びてきたんだぞ。だからおいら、ピカピカだぞ」
にいなは近所の猫によくするように、フクロウを抱き上げました。
フクロウは、ほんのりおひさまのにおいがします。
「フクロウさん、ずっしりと重いね。猫はもっと軽いんだよ」
「おいらのお腹の中には栄養がたっぷり入ってるからな。いっぱい食べないと、冬はお腹が空いちゃうんだぞ」
フクロウはえへんと胸を張りました。
「ねえ、フクロウさん。ここら辺で、きらきらした石をくわえたカラスを見なかった? 私たち、そのカラスを探してるの。私の大切な水晶を持って行っちゃったんだ」
「見たぞ。泣きながら飛んでるから、なんだこいつはって思ったんだ」
「どっちに行ったか教えてもらってもいい? 私たち今から追いかけるから」
「行ったのはあっちの方角だけど、お嬢ちゃんたちの足じゃ追いつかないぞ。鳥は飛ぶのが早いからな」
「そんな……」
にいなはしょんぼりと肩を落としました。
「よし! おいらが背中に乗せて、連れて行ってやる!」
「嬉しいけど、フクロウさんの体には私たちは乗れないよ。フクロウさん、私より小さいし」
「そんなことないぞ、見てろ」
フクロウはにいなの腕の中から飛び立ちました。
そして、にいなとみいなの間に着地します。
「うぅぅぅ、うーん!」
フクロウはうなりながら、パタパタパタと羽を広げます。
するとどうでしょう。
どんどんフクロウの体は大きくなっていきます。
やがて大型犬よりももっと大きくなったころ、フクロウは静かになりました。
「これでどうだ! おいらは世界で一番たくましくて賢いフクロウになるんだ。これくらい朝飯前だぞ!」
はぁはぁと息を切らしながら、フクロウは胸を張ります。
「すごい! フクロウさん!」
二人は目を輝かせました。
フクロウのことを怪しく思っていたみいなも、これはすごいと思いました。
みいなは、魔法とか魔術が出てくるゲームが大好きなのです。
「本当に乗せてもらっていいの? あ、私はにいなで、こっちは従姉妹のみいなといいます」
にいなはお行儀よくあいさつしました。
「おいらはフクロウのふっくんだ! よろしくな!」
ありがとうとお礼を言って、にいなはさっそく、ふっくんの背中に座ってみました。
羽がふわふわで少し心もとない気がしますが、首元の羽に掴まらせてもらえば、なんとかなりそうです。
「みいな、行こう! ふっくんが乗せてくれるって」
にいなが手招きしますが、みいなはその場で首を横に振ります。
「危ないよ。そんなの途中で落ちちゃったら、どうするの? ぜったいに助からないよ」
「おいらは風を読む天才だから、途中で落としたりなんてしないぞ! みいな、早く乗らないと夜が明けちゃうぞ。夜が明けたら、おいらは眠る時間だからな。そしたら本当に落ちちゃうぞ」
にいなとふっくんに急かされて、みいなはしぶしぶ、ふっくんの背中に乗りました。
前に乗るのは怖いから、にいなの後ろに乗って、後ろからにいなのお腹をギュッと締め付けます。
「みいな! ちょっと手を緩めてよ。おなかが苦しいよ」
「だって落ちたら嫌じゃん。私のほうが後ろにいるんだから、落ちるのは私が先なんだからね!」
「あはは! そんな心配はいらないぞ。さあ、冒険の始まりだ! みいな、にいな、行くぞ!」
「おおー!」というにいなの張り切った声と、みいなのぼそっとした声を合図に、二人を乗せたフクロウは勢い良く空に羽ばたきました。




