19. 世界の鍵 八
「わっ! ライオンが元気になった!」
みんなで喜びの声をあげます。
「やっぱりお腹が空いてたんだよね! 私、合ってたでしょ?」
「そうだけど、ちょっと見て!」
ライオンの顔が真っ赤に染まりました。そして、平らだった顔が、風船のようにぷくっと膨らみます。
ぺしゃんこだった風船に一気に息を吹いたような膨れっぷりに、このまま爆発してしまうのではと、みんな慌ててさらに後ろに避難しました。
ぱんぱんになったライオンの顔の下から、にょきっと首が生えてきました。そこからさらに胴体と手足が生え、ライオンの体はどんどん大きくなっていきます。体はしなやかにうねり、毛が生えてきます。金属の面影はもうどこにもありません。
最後にぴしっと尻尾が生えました。ライオンはぶんぶんとたてがみを揺らすと、ガオーと大きな声で鳴きました。
低く唸る声が部屋中に鳴り響きます。
にいなとみいなは思わず耳を塞ぎました。ふっくんは祭壇の上の方へと飛び立ち、平助は宝箱の後ろに隠れました。
二人の目の前にいるのは、動物園にいるような本物のライオンです。ライオンはぐるぐると唸りながら、部屋を右往左往しています。ぶんぶんとたてがみを揺らしながら、顔を振っています。
檻の向こう側にいるライオンは動物園で見たことがありますが、ライオンと同じ部屋に入るのは、みいなもにいなも初めてです。ライオンの興奮している様子に、二人は固まって動けなくなってしまいました。
ライオンはしばらくすると落ち着ついたようです。前足で顔を洗い始めました。そのまま床に寝そべって、毛づくろいをします。でも、時々まだ口を大きく開けては、がぁっと息を吐いています。
「どうしよう。やっぱり辛かったのかな? それとも甘い物が嫌いだったのかな?」
にいなは小さい声で呟きました。
「ていうか、にいなが無理矢理お花を食べさせちゃったから、怒ってここまできたのかもよ」
みいなはいつものくせで、つい、にいなをからかってしまいます。
「そんなことないもん!」
にいなは大きな声を出しました。それに釣られたのか、ライオンが二人の方を見ました。
ライオンの大きな瞳に見つめられて、二人は縮こまりました。
ライオンは二人に狙いを定めたようです。ぐるぐると唸りながら、にいなとみいなの方に、一歩一歩近づいていきます。二人はゆっくりと後ずさりしました。
「ひいっ」
ついに壁に背中がついてしまいました。腰が抜けた 二人は、少しでもライオンから距離を取ろうと小さくなりました。
ライオンの顔はすぐ目の前です。
ふっくんと平助が何かを言っているような気がしますが、 二人の耳には何も入ってきません。
ライオンの口が大きく開きました。熱くて目がつんとするような痛い息が顔にかかって、みいなとみいなの目からは涙がぽろぽろと出てきます。
このままパクリと食べられてしまうかもしれない。でも目が痛くて涙が止まらない。
「痛い!」
突然右手に痛みが走って、みいなは手を押さえました。涙目でにみいなが右手を見ると、うっすらと赤い線ができています。猫ちゃんがみいなの手をひっかいたようです。
なんでこんな時に猫ちゃんはっ!
みいなはそう思って猫を見ました。猫はゆるんだみいなの手から世界の玉をゲットすると、じゃれながら部屋の反対側へ走っていきます。
その動きに釣られたように、ライオンは猫を追いかけていきます。
「猫ちゃん危ないよ!」
みいなは小さい声で猫に呼びかけました。ですが、猫はいい遊び相手ができたと思ったのか、ライオンと世界の玉の取り合いを始めました。大きな体のライオンにも怯まず、猫はライオンに立ち向かっていきます。
「大丈夫か、二人とも! ここは危ない、逃げるぞ!」
ふっくんは二人の前でううーん! と大きくなろうとしています。
「でもふっくん、世界が! 星の卵が!」
「それどころじゃないぞ。あんな大きなライオンに食われたら、骨も残らないぞ。さ、早くおいらの背中に乗るんだ。来た道を戻ろう」
かあーっ!
平助が鋭く鳴きました。
「大変ですぜえ! へっ、ヘビが! ヘビが落ちてきやすぜえ!」




