19. 世界の鍵 七
にいなはお花を探しますが、残念ながら部屋にお花は活けてありません。でも食いしん坊なライオンなら、他の物を食べるかも。そう思ったにいなは、木の机の上にある調味料を物色します。辛いものが好きか、甘いものが好きか分からなかったので、両方とも持っていくことにしました。
ええと、甘いのは、はちみつがいいかな。辛いのは……この『ハバネロ』って書いてあるやつにしようかな。
にいなはハバネロというものを初めて見ましたが、ラベルには火のマークがたくさん付いていたので、きっと辛いのだろうと思いました。
にいなはライオンにはちみつとハバネロを見せました。
「ライオンさん、どっちが食べたい?」
ライオンはさっきより大きく揺れ始めました。
「ええ、やめときなよ」
みいなは止めました。
「でもみいな、このライオンは、もしかしたら入り口からわざわざ来てくれたのかもしれないよ? 私たちの世界がきっとすごく美味しそうだったんだよ。でも、これはあげられないでしょう?」
せっかく苦労して作った世界です。今ライオンにあげてしまったら、全部食べられてしまうかもしれません。
「そうだけど……うーん、じゃあしょうがないね。どっちが食べたいかな?」
「お二人さん、ほんとうにあげるんですか? あっしの仲間が入り口のライオンに変な花を食べさせて、丸呑みされちまった話、覚えてますか?」
平助は一歩、二歩、後ずさりしました。
「そうだけど。でもここまで来て、お腹が空きすぎて力尽きちゃったのかもしれないよ。お腹空いてるのはかわいそうだよ」
「それもそうだね。私たちも食べられちゃったら大変だよね」
にいなとみいなは同時に言いました。
「なんでよ、かわいそうじゃん!」
「そっちこそなんでよ、危ないことはしちゃだめって私ずっと言ってるよね!?」
にいなとみいなはお互いの顔をにらみます。
「まあまあ、二人とも。けんかはやめるんだぞ。このタイミングでこれが現れたのには、なにか意味があるんだと思うんだぞ。こいつになにか食べさせてあげるっていうのは、いい考えだと思うんだぞ。だって、入り口のライオンの口にお花を入れたら、扉が開いたんだろう?」
ほら、とにいなはみいなを得意げに見ました。
みいなは悔しそうな顔をしています。
「でも二人とも、気をつけるんだぞ。平助の仲間が丸呑みにされちゃったんなら、あんまり近寄ったら危ないってことだぞ」
ほら、と今度はみいながにいなを得意げに見ます。
にいなはほっぺたをぷくっと膨らませました。
「じゃあ、ぱっと口に入れて、さっと避難する!」
それでいいでしょ? とにいなはみんなを見ます。
話し合いの結果、にいながはちみつをライオンの口に流し込み、みいながハバネロをライオンの口に放り込むことにしました。スプーンはないので、つぼから直にライオンの口に入れるつもりです。
「いい? せーの、でやるからね? 入れたら、すぐに逃げるからね! せーの!」
みいなの掛け声で、二人は一気にライオンの口にはちみつとハバネロを入れました。
勢い余ってライオンの鼻や目にもかかってしまいましたが、つぼの中身を空っぽにすると、二人はダッシュでライオンから離れました。
平助とふっくんも一斉に飛び立ちます。
はちみつとハバネロまみれになったライオンの顔は、金色からどんどん濃い色になっていきます。ライオンはむしゃむしゃと口を動かしながら、はちみつとハバネロを食べています。真っ赤なハバネロがライオンの口から覗きました。
ライオンは、口を動かしながら、目をぱちぱちさせました。はちみつとハバネロが目にくっついているのです。べろんと長い舌を出して、ライオンははちみつとハバネロを舐め取りました。




