19. 世界の鍵 六
「えっと、じゃあね。バケツサイズのプリンがある世界! ママたちに食べさせてあげるの!」
そう言ってにいなはみいなに世界の玉をパスしましたが、少し力が入り過ぎてしまったようです。みいなはそれを落としてしまいました。
「ごめんごめん」
みいなは急いで世界の玉をキャッチしようとしましたが、ぴょんぴょんとよく弾む世界の玉はなかなかつまりません。すばしっこい世界の玉を床に押し付けて、やっと捕まえたと思ったら、みいなのすぐ横に何かがごとんと落ちてきました。
何だろう?
みいなはそちらに顔を向けました。床に落ちていたのは、金色の金属の塊でした。みいなの顔より少し小さいくらいの大きさです。
なかなか重そうな金属の塊です。これがもし頭の上に当たっていたらと思うと、背筋がぞおっとします。
みいなは、どこから落ちてきたんだろうと思って上を見ました。そこは、ちょうどここに来るまでに通ってきた通り道の真上でした。部屋の中から見上げると、そこは小さな出窓のようになっています。
おかしいな。さっきあの道を通った時は、こんなのなかったはずなのに。狭い道だったから、こんなものがあったら、気付きそうなんだけどなあ。
みいなはじっと金属の塊を見ました。すると、それはかたりと動きました。みいながえっと二度見する間に、今度はカタカタカタと小刻みに動き始めます。
「ね、どうしたの?」
にいながみいなの隣にしゃがみ込んで聞いてきます。
「これ……」
みいなは揺れている塊を指差しました。
「揺れてるね。虫でも入ってるんじゃないの?」
にいなは言いました。
「え、やだ! なんでそんな怖いこと言うの!」
みいなは虫が大嫌いなのです。
「この窪んでるところに入ってるんじゃないかな」
虫のことが嫌いではないにいなは、金属の塊を掴むと、ひっくり返しました。
ずいぶん重かったので、両手でよいしょと持ち上げます。
がたんと音を立てて床に転がった塊は、ライオンの顔の形をしていました。
二人はまじまじとライオンの顔を見ました。見覚えがある気がします。ふっくんと平助も飛んできて、みんなでライオンの顔を囲みました。
「うーん、これさ、ダンジョンの入り口にあったドアノッカーみたいじゃない?」
にいなはまだ揺れている塊を足で突きながら言います。
「まさか!」
みいなはまだ虫がいないか心配で、周りをきょろきょろと見渡します。
「これって入り口にあったやつだよね、平助?」
「どうですかねえ。あっしは緊張していてそれどころじゃなかったでございやすから。お恥ずかしながら、ライオンの顔は怖くてちゃんとに見てなかったですぜえ」
「こんなところで何してるんだろうね? あ、もしかして、いい匂いがしたから味見しにきたのかな?」
にいなは鼻をくんくんさせました。美味しそうな匂いは、相変わらず部屋の中に溢れています。
「それはないよ。だってあのドアノッカーはちゃんとドアにくっついてたでしょう。これは外れてるし、それにドアノッカーだけじゃ動かないよ」
ないない、とみいなは首を振りました。
「他の部屋にあった、似たようなオブジェかもしれないぞ」
この遺跡にはお宝がたくさんあると思うんだぞ、とふっくんは言います。
ええ。そうかなあ。
にいなはライオンの顔を指先でちょこんと触ってみました。
この怖そうなぎょろっとした目も、大きく開いた口も、入り口のライオンそっくりなんだけどなあ。それに、こんこんって叩く輪っかもついてるし。
もう一度お花を食べさせてあげたら、笑ってくれるかな。あっ! また黒い玉が出てくるかもしれない。そしたら今度は私がもらおう。




