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1.みいなとにいな 一

 きらきらするもの。


 お星様。

 お月様。

 プールの水。

 ビーズのネックレス。

 にいなとみいなの髪の毛。

 ママの瞳。


 きらきら石。


 ◆◇◆◇


  にいなはきらきら石を空にかざしました。

 きらきら石はいつもきれいだけど、こうやって朝日に当てると、石はさらにきらきらと光ります。


 きらきら石を見上げるにいなの息は白く、きらきら石をつまみ上げる指先はかじかんでいます。


 きらきら石を目の近くに持ってきて覗くと、世界が輝いて見えるのが、にいなは好きでした。


「もう、またそんな不用品を学校に持ってきて。先生に怒られるよ!」

 従姉妹のお姉ちゃんのみいなが注意をします。

 みいなはにいなの一つ歳上で、お隣に住んでいます。

 だから、毎朝一緒に学校に行くのです。


「だって、こんなにきれいな石を家に置いといたら、取られちゃうかもしれないし」

 にいなは口をとんがらせて言います。


「誰が取るのよ、そんなガラクタ」

 みいなはきらきら石を見て笑いました。

「ガラクタじゃないもん!」

 にいなはムキになって言い返しました。


 このきらきら石は、ほんとうは石ではありません。ほんのりと青色をしていて、そら豆のような形をしている平べったいもの。これは、シーガラスと呼ばれるものです。元は大きなガラスだったものが、海の波にもまれる間に小さくなって、角が取れて今の形になったのです。

 今年の夏に、ママとパパとみいなの家族といっしょに海に遊びに行った時に、パパがそう教えてくれました。


 海岸にはきれいな貝殻や、ツルツルの石もありましたが、にいなのお気に入りはこのシーガラスでした。 


 どこから来たんだろう?

 元は何だったんだろう?


 お酒が入ったガラス瓶だったんじゃないかとパパは言います。


 高貴なお姫様が使う宝石箱だったんじゃないかしらとママは言います。


 にいなは、豪華客船のシャンデリアだったらいいなと思っています。


 みいなはどう思う? と聞いても、「どうでもいい」と言われてしまいます。


 海岸には、いろいろな色のシーガラスがたくさんうち上げられていました。


 ピンク色の

 赤色の

 緑色の

 オレンジ色の

 青色の


 きらきら石


 にいなはうれしくなって、きらきら石を何個も拾って帰ってきました。部屋に広げていたら、ママに洗っておきなさいと言われたので、洗面所で洗いました。そして、早く乾くようにベランダに干しておきました。


 夏はじりじりと陽射しが照りつけます。きらきら石はあっという間に乾きました。でもきらきら石が光るのがあまりにもきれいだったので、にいなは次の日の朝までベランダに置いておきました。

 するとどうでしょう。いつのまにか、数が少なくなっていたのです。


 ママもパパも知らないと言います。

「でも、もっといっぱいあったもん!」と言い張るにいなのことを、ママとパパは笑います。

「きっとカラスが持って行っちゃったのよ。カラスは光るものが好きだから」


 にいなは残ったきらきら石をジャムが入っていたガラスのビンに入れて、部屋に置いておきました。

 そして時々中身を取り出しては、ベランダに広げます。お日様の光をたくさん浴びると、きらきら石がもっと光るような気がしたからです。


 シーガラスに光を蓄える力はないよとパパは言います。

 でもベランダでお日様の光を当てた後のきらきら石は、部屋に持って帰ってビンに詰めておいても、しばらくの間きらきらと光っています。


 ママとパパは変わらないと言うけど、従姉妹のみいなも光っていると言います。


 きらきら石には、きっと不思議な力があるに違いありません。


 ですが、ベランダに干す度に、きらきら石はどんどん少なくなるのです。十個あったきらきら石は、季節が冬に変わる頃にはついに残りの一つとなってしまいました。


 この石だけは絶対に守る。

 そう心に誓って、にいなはいつもその石を持ち運ぶようにしました。


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