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004)インターミッション(1)

「襲われたのは設計課の社員だけど。緒野(おの)さんに、それ以上のことは言えないわよ」

秋河(あきかわ)さんは厳しい顔を見せた。


「分かってます」

心の中では、何回も言わなくてもいいのにと文句を言いながら、できる後輩キャラを務めようと、私は表情を引き締めた。


「被害者の身近な人物の中に、襲う動機を持った者がいないか推理すると言うことは、つまり、設計課の中から仮定の容疑者を見付けるということです」

私は言いながら立ち上がって、ホワイトボードへ設計課の人達の名前を書いていった。


雪下(ゆきした)課長、家永(いえなが)課長代理、夏原(なつはら)主任、月元(つきもと)主任、菱山(ひしやま)さん、田乃崎(たのさき)君、真名部(まなべ)君、伊津(いづ)さん、高見(たかみ)さん、笹木(ささき)さん。


「あの。私がこんなことを言ってたなんて、秋河さんも他言無用でお願いします」

Dr.ディアスを真似してボードを使ってみたけど、ふと我に返ると不安になった。


「大丈夫よ。ここだけの話にするわ。あくまでも、緒野さんが話しやすくなるための手段だから」

秋河さんも私の隣りに立って、一緒にボードを眺めた。


「高見さんは一年以上出社してないから除外しましょう。あの日も結局、出社できなかったって聞いたわ。笹木さんって誰?ああ、最近入った派遣の子ね。この子も除外していいんじゃないかしら」


秋河さんは赤いマーカーで、二人の名前に打ち消し線を引いた。


「残りの人達の中で、緒野さんにとって分かりやすい人は誰?」

「田乃崎君ですね」

私は田乃崎君の名前の横へ丸印を付けた。


よく愚痴は言うけれど、誰かをひどく憎んだり強く嫌ったり、他人に対してのそういった情熱を、田之崎君から感じたことなんてない。多分だけど、その逆で誰かを猛烈に好きになることも無いんだろうと思う。


私がDr.ディアスをお気に入りの理由は、容姿もだけど、プロファイルを通じて人を分析する能力に長けているから。


私自身、幼少期の頃から他人を分析するのが癖で、分析するために、他人へ興味を向けるのは普通のことだった。


皆もそんなもんだろうと思って成長したけれど、他の人はそれほど他人に関心が無いと知ってからは、あからさまに興味を示すのは止めた。


うっかり生い立ちなんかを深堀りしたら、同性には警戒されるし、異性の場合には自分に気があると勘違いされる。


田乃崎君にも誤解されるところだったと、これまでの田乃崎君の言動を思い浮かべながら思い返していた。


人や出来事に対して執着を持てない人もいる。

ストーカーにはなりそうもないから安全だけど、こんな人を好きになったら、それはそれで辛いなと、女子目線では考えたこともあった。


「田乃崎君には特に嫌っている人や、恨んでいる人はいないと思います。設計課の他の方々は、雪下さんのやり方に馴染めないからと苦労してるみたいですが、田乃崎君は平気そうですし」

そこまで言って、はっと口を閉じた。


課長の雪下さんが部下から信頼されてないことを、私の口から明かしてしまった。

さすがに、調子に乗り過ぎではないだろうか。


「雪下さんにも困ったものよね。営業課や工事課からも不平不満は聞いてるわ」

係長があっさりと言い退けたから、私はほっと胸を撫で下ろした。


〔005 へ続く〕

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