表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ずきんとオオカミくんはハッピーエンドを果たしたい!  作者: 黒昼
1冊目『白雪姫』──Snow≠White──
18/22

No Re:flection 9

「どわっ!」


 目の前にあったぶっ倒す気満々だった棚も同時に消失し、瞭雅は床とも言い難い真っ白な地面にタックルする羽目になった。


「何やってんだ……お前さん」


「そうですよ、いきなり飛び出そうとするなんて! 貴方は馬鹿ですか、阿呆ですか、鳥頭ですか! 過去には干渉しない、そう約束したはずですよね」


「はは、悪い……」


 おそらく、ジンが部屋から出たためだろう。彼が見ていない間の過去も再現してくれるほど、《再演リヴァイバル》は都合のいい能力ではないようだ。


「でも、どうして干渉しちゃダメなんだ。上手くやればハンスさん、助けられたかもしれないだろ?」


 そう訴えると、赤ずきんにも思うところはあったのか、少し苦い表情を浮かべた。


「……ジンさん、貴方が再び戻ってくるのは何分後ですか」


「多分、五分とかそこらだな」


「わかりました。彼と内緒で話したいことがあるんですが、しばらく距離を取ってもいいでしょうか」


「えー、オレそーゆーのすっごく気になんだけど。……でも、まあいいぞ」


 ジンは初めこそ駄々をこねたが、赤ずきんの真剣な表情に気を遣ったのかあっさり引いた。


「ありがとうございます。ジンさんはそこを動かないでくださいね。元の場所に戻れなくなるので」


「うい」


 登場人物キャラクターであるジンに聞かせたくないということは、メタい話が絡んでくるのだろう。赤ずきんに連れられて銀世界の上を歩む。依然として足が地につかないふわふわとした感覚は拭えないが、恐怖を覚えることはなくなるほどには慣れたようだ。


「それで、どうしてなんだ」


 十分ジンと離れたところで、赤ずきんに尋ねた。


「『世界』の修正力が関係しています。前に言ったように、登場人物キャラクターは決められた脚本シナリオに沿う。これは、出来事にも同じことが言えるのです」


「ハンスさんが死ぬっていう出来事か……でも、俺らだけはそれを唯一変えられるんじゃなかったのか」


「はい、その通りです……が、重要な出来事(イベント)はすぐに修正されてしまうんですよ。ハンスさんが死ぬことは既に決定事項。『世界』に脚本シナリオの主導権がある限り、それは変わりません」


「主導権を奪えば、変えられるのか?」


 瞭雅の問いに赤ずきんが頷く。


「はい。もとよりあちらに帰る方法が、脚本シナリオの奪取なんですよ。私たちの行動で結末を変えることができれば、それが叶います。ですが、こんな風にちまちま過去を改変するだけでは、いたちごっこ。むしろ中途半端に未来が変わる分、危険しかありません。もしやるならば、一回の改変で脚本シナリオを奪えるほどの致命打を与えなければ」


「……ワンパンしなきゃなんない敵みたいだな」


 ターン制のゲームとかで時々ある、毎ターン全回復する面倒くさいやつ。基本の攻略はバフデバフを盛りまくってから敵を叩くのだが、ここではこういった調査がその代わりを果たしているのだろう。


「そうですよ。私たちの敵は『世界』で、それを撃破して私たちは世界を救うんです。壮大でワクワクするでしょう?」


「ワクワク……するか?」


 世界が敵だと言われても実感が湧かないのが、正直なところだ。


「とにかく、過去に干渉してはいけない理由、おわかりいただけたでしょうか? 正義感が強いのは結構ですが、もうあんな……」


「正義じゃねぇよ‼︎」


 ハッとした時には、既に煮え滾った想いは音となって吐き出されていた後だった。


「そう、ですか……」


「わ、悪い」


 いくら睨みを効かせても不動を崩さなかった赤ずきんは、初めて瞭雅に動揺を示した。すぐに笑顔で取り繕ったが、上手く笑えたかどうかわからない。


「……約束を破るのは褒められたものではありませんでしたが、動いた貴方が一番人として正しかったですよ」


 その言葉に、結果としてハンスを助けられない状況になって安堵していると正直に返したら、彼女はどんな顔をするだろうか。ハンスのことだけではない。ここに来た時、赤ずきんの殺人を止めるべく走ったが、間に合わなくて安心したんだ。


 『しょうがない』って言い訳できる逃げ道ができて、ほっとしたんだ。


 結局瞭雅が求めていたのは、人として正しい行動を起こしたという事実だけ。それを自覚している時点で、正義なんてものとはかけ離れているというのに。


 赤ずきんなりの慰めだったんだろうが、自分のドス黒く饐えた本性が抉られて、ただただ痛いだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ