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(二)-15
すぐに店に入った。三〇秒も走っていないと思う。でもあっという間に濡れてしまった。
体を拭きたいのでいますぐ化粧室へ行きたかったけど、その前に店内を見回して《《すう》》の姿を探した。店のカウンター席だけでなく、テーブル席も一つ一つ目で追って確認したけど、見当たらない。
腕時計を見た。水しぶきを拭いて時間を確かめると、時刻はすでに一九時半だった。合コン開始時刻だ。きっと《《すう》》はもう会場に向かってしまったのだろう。
私は「遅れるかもしれないからそのときは先に行って」と予め《《すう》》に言ってあった。それに彼女も「今日の相手はきっと本命になる気がする」って言ってたから、チャンスを逃すわけなんかない。私を置いて先に行ったんだと思う。
だから、私は会場に直接行くことにした。
(続く)