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鐘音で嗤う  作者: 海華
シルキー編
2/4

鐘音で嗤う(シルキー編)


昼飯時だけあって、食堂は人が多かったがデビットと上手いこと手分けして席を確保する。

いただきますと手を合わせて生姜焼きを一口食べた瞬間、デビットは妙なことを言い出した。


「そういやカイン、ちょっとパンツ貸してくれねえか」


「…………?」


吹き出さなかったことを褒めていただきたい。

両隣に座っていた見知らぬ兵士と魔法兵は見事に吹き出していた。

冷静を保ち、咀嚼して飲み込んでからにっこりと笑う。


「お前と下着を貸し合う仲になったつもりはないが。と、言うか体格差的に私のパンツは履けないだろう?」


「あー!お前ヒョロいもんな!あ、じゃあシャツとかズボンも無理かー。じゃあ金貸してくれ」


「まずそんな状態になった事情を話せ」


何故服もパンツも金もない状況になったのか。

こいつならちゃんと返すだろうから貸すのは構わないが……すごく、何が起きたのか気になる。


「俺さ、最近出来た第4兵士寮に入ったんだけどさー」


「確か古い洋館を改築した寮だっけか」


「そそ。実はそこに妖精が出てなあ。初めは上手いことやってたんだけど、どうも怒らせたらしくって寮生全員荷物持たずに追い出された!」



なんということだろう。

明るく言われたけれど、想像以上に酷かった。

いや、うん。パンツ貸す以前の状況だ。


「それって上はなんとかしてくれないのか」


「妖精を払う魔法使いを呼んでくれるらしいんだけどさあ。相手はシルキーで、どうも寮がテリトリーらしくて難航してるらしいぜ。曰く付き物件を寮にしたのが原因だから外泊の経費は後で請求すれば払ってくれるらしいが………請求が面倒臭いから、お前に借りようかと」


「友達に借りるのはいいが、それでも後でちゃんと請求しろよ」


そう言いながらデビットに手刀を落としたのは、デビットより歳上の兵士だった。


ちょうどデビットの横が空いたので彼はデビットの横に食事を持って腰を下ろした。


しかし家付き妖精(シルキー)か。

主人を気に入ればメイドのように炊事洗濯掃除をしてくれるが、気に入らなければ追い出す。

家を縄張りとする妖精だ。便利でその実付き合いにくい


「わかってますよー、先輩」


「と言うか服ならともかく下着まで借りるなよ。なんだよお前ら……出来てる「出来てないです」」


先輩が不穏な発言をするのでズバッと切り捨てる。

男らしい容姿のデビットに対して

白銀の髪に、水色の瞳の私は中性寄りの美貌だ。


デビットの距離感0の扱いのおかげで学生時代からおホモだちだとさんざんからかわれてきた。

からかわれ慣れてる故に、反論は手馴れたもので。

今回も高速で戯言を叩き返した。


「ダメっすよ先輩。カインは昔から散々男に言い寄られてるからその手の話題は禁句っすよ」


「ああ…あんた、ミリィちゃんより綺麗」


今度は私と食堂の看板娘を比較しようとした先輩は容赦なく背後に回ってきたミリィちゃんとやらにトレイで殴られた。

食堂にバコン!!と言ういい音が響いてどっと笑いが溢れる。


「サイテーですよ!」


「あっはっはっは!酷ぇ男だよなあミリィちゃん」


「……いやでも、そっちの兄ちゃん確かに綺麗…」


「そういうことは!思っても私の前で言わないでください!」


ぷりぷり怒りながら屈強な兵士をポカポカと殴る少女はとても可愛い。

けど、無駄に硬い筋肉を殴って彼女の方がダメージを受けたみたいだ。


ふむ、と考えて手招きをしてミリィちゃんとやらを呼ぶと彼女は嫌そうにしながらも傍に来てくれた。


「……なんですか?」


「頂き物ですがこれをどうぞ。硬いものを殴って手が痛いでしょう?」


そう言って今朝、自職場の先輩に貰った精霊の霊薬を渡す。

霊薬はピンキリだが、この薬はそこまで効果が強くない分高くない。

貰い物だがこの程度ならプレゼントに良いだろう。


ーーーーあまり持ち歩きたくもないし。


ただ処分をしたかっただけなのだけれども。

ミリィちゃんは顔を真っ赤に染めてトレイで顔を隠しながらモジモジしだした。


「あ…あの、ありがとう、ございます…」


「なんだよー、ミリィちゃん。俺にはそんな態度とったことねえだろ!所詮顔か!顔なのか!?」


「仕方ないでしょ!こんな綺麗な人に貰ったら照れるわよ!!」


屈強な兵士と互角に口論をし合うのに、私に対してしおらしくなる彼女がとても可愛くて。

ふっと笑ってからすっかり冷めてしまった生姜焼きに手をつけ直した。

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