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殴る勇者と斬る魔王  作者: 鳳梨
11/13

9話

ボチボチ書き進めております、はい

早くかっこいい魔王書きたいんだけどなぁ。


 一悶着したり手合わせしたりしょげたりと忙しくしながら足を動かし、地図でグラナートが示したマモン領の近くまで来たはずだ。

「なぁ、ほんとに合ってるのか?何のアクションもなければ街があるような気配もないんだけど」

 首をかしげながらも止まらないあたり、ウルラートも本気で疑っているわけではなさそうではあるが、さすがにここまで何もないとグラナートもちょっと不安になってきていた。

「移転したとの話は聞いていないからこのあたりで合っているはずだ」

「どうだか。やっぱり私たちを誘い出して野垂れ死にさせるつもりでは?」

 相変わらずピスティの態度は冷たい。

「そんな面倒なことなどするか。にしてもここまで気配がないのはやっぱりおかしいか」

 難しい顔でグラナートが唸る。

 今いる場所は森が近いとはいえ近いだけでほぼ平原のようなものだ、見通しも悪くはない。街があるのなら建物の一つや二つと言わず見えていいはずだ。

「休憩しながらもう一回地図見てみるか。とはいえ、森がこっちにあるんだから方向間違えてるとも考えにくいんだよなぁ」

 森を突っ切るところを迂回しているのだから、森沿いからは慣れなければそう迷うような場所でもない。

「何らかの結界で街を覆い隠していることも考えられるが、それなら余計に接触してくるはずだ。向こうは一応俺の顔は知っているのだし、判断が付かないということもないと思うが……ん?」

 グラナートが首をかしげて森のほうを見る。

「どうした?」

「いや……何か向こうで動いたような……気のせいか?」

 グラナートの言葉にまた戦闘かとうんざり半分で体を緊張させるウルラートとピスティが同じように森の方に目を凝らす。

「?何もいないんじゃないか?」

「そう、ですね…」

 首をかしげる二人の視界の中で何かが動いた。

「あ…え、なんか、いるにはいるけど…」

「ちょっと小さくて見えませんね…」

「だがこっちに来ているな…一人のようだが」

 目のいいグラナートはようやくきちんと形を捉えたらしく、口角を上げる。

「あぁ、なるほど。ウル、ピスティ、迎えだ」

「迎え?」

 首をかしげている間に、それは近づいてきているらしく、少しすると、何かがこっちに来てる?くらいは見えた二人がそれとグラナートを交互に見る。

「え、敵?逃げたほうが…?」

「迎えだと言っただろう。逃げても追っかけて来るぞ」

「普通に怖いんですが」

 二人が困惑している間に、どんどんとそれがはっきり見えてくる。

「……え、子ども?」

 人間の子供、に見えた。こんなところに、一人で長距離猛ダッシュかます人間の子供がいるとは思えないが。

「まおーーーーー!絶対森から来ると思って待ってたのにー」

 足音は軽いタタタタタッという感じなのに、勢いは完全にドドドドドドッという感じで近づいてきたその子どもは親し気にグラナートに声を張り上げる。

「……とてもスルーしたいな」

「そう言うなよ、魔王だろ、ちゃんと返事してやれよ」

 街中でなくてよかった……と安堵のため息をつくグラナート。そうこうしているうちに、その子どもはスピードを緩めて三人の前に止まった。

「見つかってよかったー、とりあえず街に行くよね?」

「いや、その前にお前誰だ?」

 グラナートの手を掴んで引っ張っていこうとする子供をウルラートが制して睨む。

「あ、ごめんなさい、つい魔王だけしか見てなかったー。初めまして!エキセタムって言います!よろしくね、勇者さん!」

 ニコニコと自己紹介をする子どもに、毒気を抜かれつつ、いやそうじゃない、とウルラートは気を取り直した。

「こんなところに子ども一人で出歩いたら危ないだろ、親は?」

 キョトンとするエキセタムにグラナートが苦笑いした。

「まだお前たちのことをあまり説明していなくてな、にしても世代交代中だったか」

「そだよ、まぁ僕たちの所は世代交代の適齢が早いからね。あ、魔王にも初めましてだった。初めましてって感じしないんだけどなぁ。初めまして!次代のアパリシアのエキセタムです!」

 未だわかっていない様子のウルラートとピスティにも、よろしくね、と元気にエキセタムと名乗った少年の指さしてグラナートは苦笑いしつつ衝撃の一言を告げた。

「マモン領の領主の後継者だそうだ」

 困惑した沈黙が下りる。

「え?」

「つまり、強欲の七魔、マモンの契約者ということだな。世代交代中という事だから、正確にはまだ契約者になりかけと言ったところか。当人の自我とマモンの記憶が今混在している状態なんだな」

 ん???とグラナートの説明に素直に首を傾げるウルラートに対し、寄りにもよって七魔と子供が契約させられそうになっている、と解釈したピスティが青くなった。

「マモンを響魔にする、ということですか、そんな、子供にそんなことを押し付けるなんて…!」

「押し付けているわけではない。そういうものなのだ、ピスティ。お前がどうこう口を出す事ではない」

 苦笑いで流す事の多いグラナートが珍しくピスティの言動を切って捨てる。それに不快そうにピスティはグラナートを睨んだ。

「ですが、こんな子供に七魔との契約だなんて……自分で響魔を契約する事を選べる年でもないのにそんなこと許されるはずありません」

「ピスティ。ここはお前たちが住む人間領ではない。人間が勝手に決めた年齢制限にアパリシアを当てはめてもどうにもならん」

 ピスティの非難を切って捨て受け流しとグラナートは話を打ち切った。

「エキセタム、街はどうだ?」

「ちゃんと案内するよ、お父さんやマモンからも言われてるからね。こっちだよ」

 グラナートがエキセタムの方を見て案内を促すと、エキセタムはニコニコとグラナートの手を引いた。

「魔王、来るのは初めてだもんね。うちはね、人間領がちょっと近いから街は隠してあるんだって。だから、案内人がいないと見つからないようにしてるんだ」

 先頭を歩く小さな背中を見ながら、3人はそれぞれの表情で歩いていく。

 グラナートは平常で平然としているが、ウルラートは困惑の残る警戒顔、ピスティは警戒しているが七魔やマモン、世代交代への嫌悪の方が強いようでとてもではないが好意的とは言えない状態である。

「お姉さん、何でそんな怖い顔してるの?疲れてる?魔王、ちゃんとお姉さんに休憩とかさせてあげてる?」

 グラナートの手を引きながら振り返り振り返る歩くエキセタムが魔王を見上げる。

「大丈夫ですよ、疲れているわけではないので…」

「そう?もう少しで街につくから、着いたらご飯食べてゆっくりしてね。ちゃんと宿も取ってあるから」

 かわいらしく小首をかしげるエキセタムに、ピスティは複雑な表情を見せる。

 この少年が、あどけなく純粋な子供だからこそ、守らなくてはならないと思うのに、その子供があろうことか七魔の契約者にさせられそうになっている。その事が、どうしても納得がいかない、生贄のようなものではないかとピスティは暗い表情でエキセタムを見るのだ。

(なんて言葉を掛けたらこの子はこの契約から逃れられるのだろうか、逃れようと思ってくれるのだろうか)

 そんなことを考えながら、前を行く子供の背中を見つめて歩く。ちらりと隣を歩くウルラートを見れば、彼もまた難しい顔をしていた。

(あとで、ウルラート様とも話して…この子にも話を聞いてみたい…魔王の言う事なんて信じられないし)

 とりあえずの結論を出し、代わり映えのしない道を代り映えなく歩く二人を追う様に歩いていく。

 周りは相変わらず開けており、ところどころに小さな森や林が点在するのが見える。開けてはいるが道らしい道はない。そんなところを歩いて歩いて、そしてエキセタムが足を止めた。

「ほう、なるほど……ここまでくればさすがに分かるものだな」

「もう少し前から分かってたでしょー。到着だよ!」

 エキセタムが、パンッと両手を打ち鳴らす。不自然なほどに辺りに響くその音に反応するように、ベールが外れていくように目の前に街が現れていく。

 一行がいるのは、その街の門の前だった。門の上からは、ギロリとガーゴイルがウルラートたちを一瞬睨んだが、エキセタムを認識すると視線を戻して門の石像と化す。

 街からはたくさんの気配と雑踏のにぎやかしが聞こえてくる。

「昔より規模が大きくなっているな、何よりだ」

「あたりまえだよ、魔王。なんてったって僕たち強欲が支配する街だよ。もっと大きく、もっと豊かに、そうやって大きくなっていくに決まってるじゃない」

 グラナートの感嘆にエキセタムが我がことのように誇らしげに胸を張った。

「とりあえず宿に案内するね。ちゃんと話は通してあるから。あ、ここの宿泊費とか食事代は魔王城に請求するから、手持ちからは払わなくていいよ。他だと方針違うだろうし、手持ちのお金は減らさない方がいいからね」

「うむ、その方がありがたいな。シェルムにもそう伝えておこう」

 こっちだよ、と軽い足取りでエキセタムがにこにこと先導する。まるで、自分の宝物を自慢するような、そんな様子だ。

「おや、アパリシアの坊ちゃん、旅人さんに案内かい?お父さんのお手伝いして偉いね」

「そうだよー。もうすぐ僕の街になるんだから案内くらいできなきゃね!」

「おう、エキセタム、調子はどうだ」

「バッチリだよ。マモンも馴染んでくれてるし!」

 次々と声を掛けてくる住人らしい魔族や人間に隔てなくえっへんと胸を張りながら宿までの道を突き進んでいく。魔族の住人たちはグラナートを見ると驚いたような顔をして一歩引いて道を開けていく。それを見た人間たちも、よくわからないままに道を開けた。

「さすがに魔族にはわかるか」

「分からなかったらまずいだろ、お前魔王だし。にしても、思ってたより……なんていうか、街だな」

「……こんなに魔族と人間が一緒に暮らしてるなんて…」

 朗らかに言葉を交わす人間と魔族の姿に、ピスティが信じられない、という顔をしている。響魔などではなく、個人対個人の会話であることは見ればすぐに分かった。

「いいでしょ。ここが、僕の街になるんだ。僕がもっと大きくして、僕が守っていく街なんだよ。はい、宿到着―」

 くるっとターンして、エキセタムが二人を振り返る。

「なんか僕とお話したそうだし、人間の二人は僕とお話しする?」

 聡い子だ、と感心せざるを得ない。エキセタムの提案にウルラートとピスティは文句もあるはずなく、その提案を受け入れる。

「エキセタム、少しマモンを借りてもいいか。我らは我らで話がしたい」

「いいよ。マモンも話があるみたい。父さんはもう世代交代中はずっと寝てるから、もうしばらくは話せないけど」

「構わん。あとまぁ話は聞いてるだろうが…」

「分かってるよ。僕はアパリシアだ、何も分からない子供じゃない」

 ならいい、とグラナートはさっさと踵を返した。

「おい、どこ行くんだよ」

「アパリシアの家だ。その方が話が早いからな。まだマモンの継承は終わっていないから、マモン本体と話をするなら父親の方を経由する必要がある。なに、積もる話が終わればすぐに戻る。ここでエキセタムが共にいて危険なことなどあるまいよ」

 振り返りもしないでそう答えるグラナートはすでに魔王の顔をしていた。その顔は今はまだ二人に見せたくはない顔で、振り返るわけにはいかないのだ。

 遠ざかっていくグラナートを心配そうにウルラートは、俺たちの身の安全を心配してるわけじゃないのに、と何とも言えない顔で見送る。

「何の話かは知らないけど、昔話とかじゃない?この街が出来たときにマモンと魔王は会ってるみたいだし。それより、宿の人困ってるから入るなら入ろうよ」

 そう促されて、エキセタムとウルラート、ピスティは宿の中に入っていく。

 エキセタムを見て心得たようにスタッフが寄ってきて言葉を交わし、ウルラートたちに一礼すると部屋へと先導していく。

 掃除の行き届いた、綺麗な宿だ。調度類も派手過ぎず周囲になじんで雰囲気もいい。人間領の王都の宿と比べても遜色ない、あるいはそれ以上かもしれないと思わせられる。

「お部屋はこちらになります。男性2名と女性1名との事でしたので、隣り合わせで二部屋準備させて頂きました」

 そのうちの一つの扉を開け、中へと案内される。

「……いいのか、こんないい部屋俺たちが使って…」

「もちろんだよ、ちゃんと料金は魔王城から取るし、問題ないね。休める所では休まないと」

 一通り説明したスタッフが退室して、二人用だという部屋に3人でテーブルを囲む。

「で、僕に何のお話がしたいの?特にそこのお姉さん」

 椅子によじ登って足をプラプラさせるエキセタムがピスティに話を振る。

「……ピスティです。お姉さんではありません。……エキセタム、マモンを継承すると言っていましたが…マモンがどんな存在か、あなたは知っているの?」

「僕が継承するんだよ?知らないわけないじゃない。七魔の一角、強欲のマモン。それが何?」

「とても、とても危険な存在なんです。あなたが思っている以上に」

 人間領で語られる神話を、マモンの危険性をピスティはエキセタムに聞かせる。

「あなたはまだ幼い。お父様や周りの大人からいいように聞いているかもしれませんが……」

「知ってるよ。あなたたちの所でマモンや他の七魔がどう言われてどう思われてるか。でもね、僕がマモンを欲しいんだ」

 まっすぐな目は、ピスティの話を聞いても揺らがなかった。

「僕が父さんに言ったんだ。マモンを頂戴って。悪魔とまで言われた最強の七魔の一角、僕はそれが、マモンが欲しいんだ」

 マモンが欲しいなど、その言葉こそ強欲の最たるものだとエキセタムは笑う。

「強欲の悪魔が支配するこの街は強欲の街。もっと大きく、もっと豊かに、もっと安心して暮らせるように。その場所を守る為に、僕はもっと力が欲しい。もっと強くならなくちゃいけない。もっと、もっともっともっと!」

 小さな少年の大きすぎる欲がピスティを圧倒する。

「じゃあ、お前が自分でマモンを望んだから継承するのか」

 ウルラートが口をはさむ。

「そうだよ。僕はもっと欲しいんだ。まだ満足なんてできない。もっと勉強してもっと強くなって、もっとこの街を楽しい街にしたいんだ」

 その熱に押されて、ピスティもウルラートも言葉を探して黙り込んだ。

「強欲って、夢を見るってことだと思うよ。だって、二人だってそうでしょ?」

 え、と固まる。特にピスティは衝撃を受けていた。それを気にせず、エキセタムは続けた。

「何かをしたいから、旅をしてるんでしょ?それも大きく見れば欲だよね?食べたいって思う事にだって食欲って名前が付くんだし。魔王討伐、なんてさ、すごい傲慢で強欲だよ。だって人間の都合で魔族の王を殺したいってことでしょ?ただでさえ一つの命を消したいなんて、それ以上の強欲ってあるの?ってくらいなのに、王様だよ?」

 言い返そうとして、言葉を探して、それでも何も言えなくて、ピスティは俯いた。

「僕は強欲だから、全部欲しい。自分の命もマモンもこの街の皆の命も楽しい街も。それが僕の強欲だよ。僕が勉強して、僕が考えた答えで僕はマモンが欲しいんだ。それを子供だから、危険だから、なんて薄っぺらいつまんないことで遮らないで」

 子供とは思えない穏やかで確固たるものを持った語り口のエキセタムが二人を見つめる。

「僕はマモンの記憶を見たよ。知ってるよ。そのうえで自分で決めたの」

「……そっか。なら、部外者の俺たちが言える事は無いな」

「ウルラート様!?」

 てっきり援護してくれると思っていたウルラートがあっさりと話を切り上げたのをピスティが信じられないという目で見た。

「ピスティ、街を見に行こう。エキセタム、案内してくれるよな?」

 ウルラートの突然の提案にピスティは混乱したように視線をさまよわせるが、エキセタムは満面の笑みで頷いた。

「僕の街だからね、どこだって案内できるよ!」



 ところ変わって、アパリシアの屋敷でのグラナートは、ベッドで横になったままのその屋敷の主と対面していた。

 屋敷の主、エキセタムの父親であるその男の固く閉じられた目と規則正しく繰り返される呼吸が、その男が眠っていることを思わせるが、なぜかその口だけが動いて言葉を発した。

「このような形で申し訳ないけどご容赦願いたいな」

 男の外見と声に不釣り合いな、子供のような話し方だ。

「構わん。世代交代中だ、タイミングが悪くてこちらが申し訳ないくらいだが火急でな」

 その状態でも平然と会話を続けるグラナート。

「君から訪ねてくるとは珍しい。視察と言うわけでもあるまいし、どうしたの」

 声音だけでも胡乱げな様子が伝わるほど感情が込められた言葉は、ピクリとも動かない表情とあまりにも対照的で違和感を感じさせる。

「お前たちに協力を要請しに来た」

「協力?君が?僕に?」

「正確には、お前“たち”に、だ」

 沈黙が下りる。

「あの剣の気配がするな。それと一緒に君がここに、僕らを訪ねてくる。まるで、あの時の再来のようだね」

 苦々しさが混じるその声に応じるように、眠っている男の表情がゆがんだ。

「そうならないように、願っている」

 あくまでグラナートは淡々と返す。男の表情が穏やかに眠っている表情に戻った。

「願うだけでどうにでもなるのならいいんだけど。君がそう考える根拠を示してよ」

「根拠と言う根拠はない。だが、早めに協力体制を築かねばいざと言う時に間に合わない。強いてあげる根拠は、人間を強襲する人間以外の存在、羽ばたく音、そして青い炎だ」

 青い炎、に声は沈黙した。息をのむような気配はあるが、それは男の変化としては見られなかった。

「青い炎、か。それは確かに疑いの目は向くね。でも、どんな炎か君が見たわけではないだろう?」

「だから確たる証拠はないと言っているんだ。だが、はっきりする頃にはもう遅いかもしれん」

「あれの再来と疑いたくはないなぁ」

「マモン。それは俺も同じだ。だが、俺は疑ってかからねばならん」

 声、マモンを遮りそうな勢いでグラナートは吐き捨てた。淡々としていた様子が嘘のように一転して表情を苦々しい様に、哀しい様にゆがませる。

「グエラ。それは君が魔王だから?それとも…」

「魔王だからだ」

 今度こそ、その先を言わせまいとするかのようにグラナートが言い切った。

「それにマモン、俺はグエラではない。今はグラナートだ」

 強さを抑えて穏やかに訂正するが、間違えるなと圧を掛けるグラナートに、マモンはため息をついた。

「グラナートでもグエラでもどっちでもいいけどさ、君を魔王に祭り上げたのは間違いだったとだけは思わせてくれるなよ」

 子供のような声音なのに、相手を怯えさせるような威圧感がマモンの言葉に乗せられる。魔王すら、一瞬気圧すほどの威圧感は、室内を重く満たした。

「………そのつもりだ」

「ならいいよ」

 ふっと、初めから何もなかったかのように威圧感が消える。

「僕が手を貸すのは構わない。当然対価は貰うけど。でもね、僕はこの人間たちが気に入ってるんだ。できれば喰いたくはないんだよね」

「対価は高くつきそうだな」

「当然だよ。僕はマモンなんだから。あ、でも勘違いしないでね。強欲なんて在り方を納得したわけじゃないよ。ちゃんと、そこは忘れてない」

 マモンの言葉に満足したように頷いて、グラナートは話したかったことは終わりだと切り上げて、旧友との邂逅を温めるように世間話に興じる。

 魔王城での出来事や勇者の剣に選ばれた勇者と契約した事。そういったことをただ穏やかに話すのだった。

ラストやコンセプト決まってて方向性は決まってるはずなのに入れたいシーンや設定が後から生えてきて困ってます(笑)

あと、クリスマスまでにとあるキャラの登場にこぎつけたら、クリスマス番外あげたいんですよね、去年台本として書いたやつを小説に直したやつ

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