ただいまって言ってよ。
ただいまって言ってよ。
なんでいつも言ってくれないの。
まぁいいけどさ。
いつもの要領で鞄を置き、
マスクを外し、石鹸で手を洗う。
コップに水をそそぎ3回うがいをする。
目の前の鏡には前よりも目元に皺がふえている。
疲れている証拠だ。
ねぇ、ただいまって言ってよ!
そう心で呟く。
でも返してくれないのはわかってる。
仕事着を脱ぎハンガーにかける。
できるだけシワがつかないように。
冷凍庫にある白米をレンジで解凍する。
そうか、貴方は先に食べたのね。
鞄からスマホを取り出す。
SNSを開く。
自分には全く関係のないような情報に感情を揺らがせる。
米が温まる。
タッパーにある昨晩のおかずを器に移しラップをかける。
電子レンジに入れる。
やかんで湯を沸かす。
インスタントの味噌汁の素を器に流し込む。
米を茶碗に移す。
火傷しないようにハンカチで包みながら。
テーブルにそっと乗せる。
味噌汁を作り、おかずをレンジから取り出す。
今日も一人の食事だ。
不貞腐れたってしょうがない。
人差し指と中指の間に箸を挟み、
手を合わせる。
あれから何日かめのいただきます。
多分、1400回くらいだろうか。
構ってくれないのならもういいよ。
スマホで動画サイトを漁り、活躍する同世代クリエイターに笑わしてもらう。
一つ一つのものを口に運び、噛み締め、喉へ通す。
笑う。
それをあときっと42回。
いやもっとかもしれない。
いくら笑っても。
美味しいっていっても。
貴方は応えてくれないよね。
でもいいの。
また2年いるって決めた。
食べたら書類整理しよう。
ありがとね。