元気が一番
初投稿となります、よろしくお願いします。 舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 城の中で見つけた地下施設で、捜索中に防護服と隔壁がある部屋を見つける。
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隔壁の向こうは気になるが、出来ることが無いんで撤収。
ユックリ階段を上ってるんだが、どうしてもあの隔壁が気になる。
正確には隔壁の向こうに在る”何か”なんだが。
「 隔壁はヤバイっすね 」
「 だな。 ”防護扉” じゃなくて ”隔壁”だからな 」
隔壁は、機械的強度も遮断する確実性も、防護扉とは段違いに上を行く。
”防護扉”はそのうち開けることを前提に、”隔壁”は分断する事だけを前提に設計されてるから。
それなりに、やばい物が保管されてると考えるべきだ。
んで、あの先に部屋が在ったとしても行き止まりで決定。
全部のロッカーに防護服が入ってたから、全員戻って来たって事だろう。
防護服が無いロッカーが在ったら、今もあの先に誰かが入っているか、取り残されてる事になる。
何百年か何千年も前に。
それこそ扉を開けたら何かが出てきそうだ。
何が出て来るのか怖いんで、考えない事にしよう。
「 ここは何かの保管施設なのかな 」
階段を上りつつお話、後ろの隔壁が気になるから気分を変える。
「 保管するだけだったら、植物プラントは要らなさそうですけど 」
確かに要らないよな、外から運び込めば済む。
長期の常時監視が必要だから、宿泊施設も植物プラントも在るんだろう。
なんだか、背中がムズムズしてきた。
んでも、振り返ったら負けの様な気がする。
「 あのポッドも要らないっすよね? 」
「 あの先で怪我した時の、緊急治療用って可能性は? 」
「 隔離施設のすぐ外に、治療するところを作りますか? 大規模な事故が起きた時は、安全な場所まで移動して治療しますよ。 その方が、病院への搬送も早いですし 」
「 そう言えば、上の倉庫に治療の魔道具も在ったよな。 あれ使えば治療は出来るんだよな、多分 」
「 出来るんじゃないっすかね。 治療の魔道具なんすから 」
「 ここには魔力が無いみたいですから、あの魔道具は使えないんじゃないですか? 」
「 あのポッドは ”調整のポッド”になってたな。 治療用じゃないんだよな 」
「 調整ってなんすか、調整って 」
「 判らん 」
まさかとは思うが、次元断層とか空間歪曲とかで身体構造がグチャグチャになるんで、治療の前に調整が必要だとか?
不味い、本格的に背中がムズムズしてきた。
やっぱり、隔壁は確実にロックしておくべきだったか。
ダメだ気になる、我慢できずに振り返る---
「 ラナ? 何してるの? 」
ラナが背中をグリグリしてた。
「 先ほどは、申し訳ありませんでした 」
警告メッセージを聞いて、俺を突き飛ばしたんだよな。
で、5mほど床の上を転がったんだが。
「 気にしなくて良いって言ったろ。 俺を守ろうとしてくれたんだから 」
ラナが謝ったのは、これで何回目だろう。 そんなに気にしなくても良いのに。
泣いてるみたいだし。
「 よっと 」
まだ背中をグリグリしてるラナを、その場でおんぶする。
泣いてる子をあやすにはスキンシップが一番だと、おじさんは思うのだ。
「「「 えっ! 」」」
ん、何でみんな驚いてるんだ?
ん? いや! これは違うぞ、わざとじゃない。
おんぶした時に、片手がラナのお尻にかかってるけど。
慌ててシッカリおんぶし直したが、皆のと口は丸のまま。
まてまて、おんぶはセクハラじゃないだろ。
ラナは嫌がって無いし、泣きやんで笑顔になったし、しがみ付いてるじゃん。
「 波乱さん 」
「 ん? 」
「 ラナちゃんをおんぶしても、大丈夫なんですか? 」
「 大丈夫 とは? 」 倫理的な問題?
「 骨とか折れたりしていませんか? 」
「 ・・・・・・骨折はしてないな 」
「 さっきもそうでしたけど、何時もなら骨折してましたよね? 顔色もかなり良いですし 」
そうなんだよ、ここに入ってからは倦怠感がほぼ無い。
「 なんか、ここに入ってから調子が良いんだよ。 調子が良いって言うより、元に戻った感じかな 」
「 レベルが上がったりしてます? 」
「 レベル・・・・・・上がって無いな 」
一応ステータスを確認したけど、変化は無い。
「 何でだろね 」
「 鑑定でも判りませんね。 何が原因なんでしょう? 」
「 気持ちの問題なのかな。 ここには俺たち以外誰も居ないみたいだから、命を狙われないし。 ストレスフリーになったんじゃないかな 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
沈黙しないで何か言ってくれ、おじさんジョークなんだが。
「 元気になったんなら、良い事じゃないっすか! 」 そうだよな、元気が一番。
「 そうそう。 サラリーマンは体が資本だからな! 」
ラナをおぶったまま、階段を駆け上がる。
身体が軽い。
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上に着いたんでラナを下して---、しばらくそのままなのね。 OK。
「 波乱さん。 あれ 」 ”あれ”ってどれ。
白川さんが指差してたのは、コンソールの向こうに在る壁一面の金属プレート。
そこには、さっきまでは無かった表示が在った。
”起動準備完了”
「 さっきの”警告”か 」 やっちまったか。
「 起動って、何を起動するんすかね? 」
「 大丈夫なんですか? 最終兵器だったりしませんか? 」
何だよ、最終兵器って。
魔道具鑑定でも、鑑定でも、何が起動するのかは判らない。
ターミナルは、 ≪ 端末の魔道具 : 上接続 ≫ だって。
壁の金属プレートはモニターだな。
「 さて、どうするかなんだが 」
「 動かさない方が良いと思います 」
「 起動する物は、隔壁の先に在るんじゃないっすかね。 だったら、動かしても大丈夫じゃないっすか? 危なかったら、隔壁が壊れる前に止めれば良いんっすから 」
「 隔壁が在れば何が起こっても、逃げる時間位は稼げるか 」
「 危なくないですか? 」
「 その可能性は在るんだが・・・・・・、このままじゃ何も判らないままで終わりそうなんだよな 」
ここの施設は、隅々まで調べ終わった。
んで、結局何も判らないまま。
最終兵器でも何でも、”ハッキリしない何かが地下に在る” ってのは恐怖でしかない。
正体不明ってだけでも怖いしな。
「 ここに ”何か”が在るのは判った。 せめて、”何か” が ”何なのか” はハッキリさせたい 」
「「 ・・・・・・ 」」
「 起動してみよう。 で、不味い物だったら、永久に封印するって事で 」
「 その封印を、解こうとしてるんじゃ無いですよね? 」
「 それは判らん。 でも、そんなものが地下に在るのに、王家が何も知らないってのも不自然だろ 」
「 そうっすよね 」
「 危ない物なら、”封印を解くな”って言い伝えが残りますか 」
「 そうなるよな。 ただ、危なくない物なら使い続けてるはずだよな 」
3人でしばし相談、起動してみる事に決定。
不味かったら停止して、封印して、速攻で逃げる。
白川さんとリナ、メイドさん2人は1階まで退避。
治療の魔道具なんかをカート4台に積みこんで、エレベータ内で待機する。
エレベーターがなかなか来なくて、逃げ遅れるってのは避けたい。
ちなみに、予備の食料は置いていくことにした。
河原君は階段下で隔壁を監視、異常が在った時の連絡役。
俺は起動役。
部屋中央に在る椅子に座って、起動を試みる。
この椅子のプレートだけ、うっすら光ってたんで起動するのはここだろう。
ラナは膝の上に乗ってる、俺の癒し役。
ラナの希望なんで異論は認めない、ラナが。
白川さんの準備が整うまで待ちたいんだが、連絡手段が無い。
で、30分待ってから始めることにした。
腕時計のアラームが鳴る。
「 30分経った。 始めるか 」
「 はい、波乱様 」
「 いつでも良いっすよ! 」
階段下に移動した河原君の声が聞こえる。
肘掛に付いてる右側のプレートに魔力を流す、魔道具を動かす時と同じ感覚だ。
世の中は右利きが多いからな、こっち側だと思うんだ。
俺は左利きだが。
「 変化無しか 」
「 いつでも良いっすよ! 」
「 始めてるよ! まだ起動しない! 」
大声で連絡って何とも原始的だ。
簡単に起動しないなら色々試してみよう、次だ次。
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プレートの表示が消え、次の瞬間、さまざまな文字がモニターのあちこちを流れ始める。
起動できたみたいだな。
「 起動した! 隔壁に注視! 」
「 了解っす! 」
次に来る時はのど飴を持って来よう。
毎回大声で連絡してたら、喉が枯れそうだ。
「 隔壁異常なし! 」
「 了解! 」
やっぱりのど飴は必須だな。
流れる文字が減って来た、中央だけが残ってるけど。
【 防衛システム起動完了 】
最後に残った文字は予想と違った。
まだ最終兵器の方が良かったな、機動兵器とか、ICBMとか。
「 防衛システムか。 ”何” を ”何から” 防衛するんだ 」
起動はした。
したんだが、謎を解くために起動を決めたのに、謎が増えちまった。
「 起動完了した! 」
「 隔壁異常無いっす! 」
さて、どうしよう。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。




