命は掛けない
初投稿となりますので、よろしくお願いします。 舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 魔道具を改造出来る、技術を手に入れる。 120年後の予想を聞いて軽く絶望。 転移の魔法陣の魔力の出元を探索中に、エレベーターを見つける。
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「 室長。 調べたら、どうやら王座の後ろ辺りではないかと。 」
うん、知ってる。 王座の後ろの壁に在るね。
「 宰相。 王座の後ろの壁を調べたいんだが。 」
「 波乱様。 さすがに王座を調べる事は・・・・・・。 」
「 王座じゃ無くて、後ろの壁だよ。 何も無かったらこの命を差し出すから、それを対価に許可してくれ。 」
在るのは判ってるから、命は差し出さない。
おじさんは、負ける勝負はしないのだよ。
「 しかしですな、王座は--- 」
無視だ無視。 そこに在るのは判ってるんだ。
階段を上がり、王座の後ろに回る。 重要なのは王座の後ろの壁、椅子に興味は無い。
装飾の布を捲ると、美しく装飾された壁が姿を現す。
見事で高価な装飾なんだろうが、興味は無い。 芸術で腹は膨れん。
再度遠隔操作でサーチすると、魔道具はこの壁の20cmほど後ろに在る。
縦300cm☓横500cm☓奥行き400cm。
かなりの大きさだが、エレベータだからこの位は必要か。
工具を壁をめり込ませると、後ろから悲鳴が聞こえてくる。
五月蠅いな。
工具をこじると、ゴッソリ壁が剥がれる。
何度か繰り返すと、装飾された壁の裏にはレンガの壁が在った。
レンガを崩すんで、手前の壁は少し広めに削っておこう。
悲鳴が大きくなってるけど、知らん。
「 ラナ。 ホコリを吸い込まない様に、注意してね。 」
「 はい、波乱様。 」
盗掘防止策として、壁や塗料に有毒物質が入ってる可能性が在るからな。
ラナの身長は、とうとう俺の肩を少し超えた。
どこまで伸びるんだろ。
装飾された壁を充分剥がしたら、レンガの隙間に工具を突っ込み、削っていく。
ハンマーで叩き割りたいが、後ろの魔道具に影響が出そうなんでやらない。
地味だが、1つ1つレンガを取り出すしか無い。
聞き覚えのある声のが聞こえるな---、女王様か。 お邪魔してます。
んでも、静かにしてくれないかな、気が散るんだよな甲高い声って。
「 ラナ、後ろが五月蠅いけど、気にしなくて良いからね。 ここに何かが在るのは、間違いないから。 」
「 はい。 波乱様。 」
わき目も振らずに削ってる、ラナの信頼が嬉しい。
2人でレンガを外していくと、後ろからまた別の壁が見えてきた。
「 波乱様、また別の壁が! 」
「 金属の様な、セラミックの様な素材。 試練の間の扉と似てるな」
表面を触ってみても、材質がさっぱり判らない。
「 そうなんですか? 」
ラナも居ただろ、って、素材までは気にしないか。
そんな物を気にするのは、技術屋だけだな。
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ブロックを6個ほど取り払い、女王を手招き。
「 これが、何なのか判りますか? 」
「 これは? 壁の後ろにまた壁ですか? 」
涙を拭け、涙を。
化粧がグズグズだぞ、侍女は何してるんだ。
そもそも、ハイエルフって肌が綺麗なんだから、薄化粧で充分だと思うんだよ。
「 見た事の無い壁ですね、波乱様はこれが何かご存じなのですか? 」
はい知ってます---、なんて言える訳無い。
何なのかは判るけど、素材に関しては判らないしな。
「 この壁は、試練の間の扉に似ています。 何なのかは、これから調べてみないと。 」
女王様から、調査の許可を頂いておこう。
この国は、女系が継承権持ってるらしいから、女王様が国のトップだ。
王様は飾りらしいから、ドクターは大変だろうな。
「 試練の間の扉・・・・・・・。 古の技術です。 」
「 そうなのですね。 しかし、何故ここに在るのでしょうか? 」
調査の許可をくれ、許可を。
そうか、侍女はここまで登っちゃ駄目なのか。
崩れた化粧を、何とかしてあげたいんだが。
「 判りません。 これに関しては、先代の女王から何も聞いておりません。 」
お。 女王様の顔つきに戻ったな、顔がアレだけど。
それにしても書物による記録以外に、口伝が在るのか。
それじゃ、王家保有の書庫にも記録が無いはずだ。
「 波乱様。 この件について、調査の全てをお任せします。 調査の結果が出るまで、しばしこの間は使用禁止と致しましょう。 」
「 賜りました。 」
手を胸に当て、頭を下げる。
ん?
みんな驚いてるけど、おじさんならこれ位は出来るんだが。
身に付けた教養と牙は、隠してこそ意味が在る。
人生を掛けた勝負時、それが勝敗を分けるとおじさんは思うんだ。
それにしても、みんな失礼だな。 そろそろ、口を閉じろ。
ああそうか、腕時計を見るともう夕食時だった。
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「 今日は、面白い物を見つけたよ。 」
夕食を食べながら、白川さんと河原君に報告だ。
「 聞いたっすよ。 謁見の間の壁を、ブチ抜いたんすよね? 」
もう情報が回ってるのか、早いな。
「 合ってるのは、謁見の間だけだぞ。 そうじゃなくて、王座の後ろの壁に、変な壁を見つけたんだよ。 古代の技術で造られた壁をね」
「 私も聞きましたよ。 何でも、女王様がダッシュしてたって目撃談が。 それで、壁だけですか? 」
「 今日確認出来たのは、壁だけだね。 明日から本格的に調査するから、何か判ったら知らせるよ。 」
報連相は大切だ、情報の共有にも、コミュニケーションにも。
それにしても女王様のダッシュか。 あの歳で、あのドレスでダッシュ、見てみたい。
頼んだら、見せてくれないかな。
「 王座の真後ろの壁の、一部分だけが金属製の壁なんだよ。 変だと思わないか? 」
「 王座の後ろって言ったら、地下への階段で決まりっすよ! 」
だろ~。
「 そんな、ベタな事やるんですかね? 」
でも、在るんだから。
言わないけど。
「 城の構造上、壁の後ろに部屋は無いってさ。 小さな宝物庫か階段か。 どっちにしても、面白そうだろ。 」
答えは知ってる。
「 女王様に調査の全権を任されたから、好きなだけ調べられる。 お宝が出たら、分け前も期待出来そうだな。 」
「 女王様の許可が無くても、充分好き勝手してると思うのですが。 」
ホントにやりたい放題なら、王城ごと王族を吹き飛ばすけどな。
その後ユックリ調べるさ、”何か”は地下に在るんだから。
「 波乱様、お肉をもう1口。 」
「 ラナ、もう食べられないんだが・・・・・・、頂きます。 」
気付かれた点など、読後の感想をお待ちしています。




