嫌われ者は何時でも1人
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
投稿が遅れてしまいました、ラストをどうするかまだ悩んでいます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 ダンジョン破壊計画は最終段階に入った、んだが。
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指令室で通信を受ける。
時々ノイズの乗るモニタには、俺が派遣した補給部隊の指揮官が映ってる。
「 了解した。 計画の継続は可能なのか? 」
『 現時点で中継拠点に帰り着いたのは、全体の20%程度です。 今も『 また来たぞ! 』 数人のグループで、断続的に撤退して来ています 』
「 増援の要請は? 」
『 要請は却下されたと聞いています。 一次攻撃に全力を注いでいましたので 』
『 また帰って来たぞ! ポーションの準備! 治療師は・・・・・・ 』
指揮官の後ろでは、帰還してきた負傷兵が運ばれてる。
軽傷も重傷もいるようだ、自分で歩いているものは少ない。
『 再アタックの日程は、まだ検討されていません。 損害が多過ぎですね 』
「 了解した。 詳細が判明したら、その時点で再度報告してくれ 」
『 判りました 』
暗くなったモニターを眺めつつ、コーヒーを飲む。
「 あの国は、180m級も破壊できないのか。 兵士たちの力量を見誤ったか? 」
「 波乱様。 魔素の濃度が上がって、ダンジョンが強化されたのでは? 」
「 その可能性も在るな。 シミュレートもやり直すか 」
指揮官席のモニタを起動して、再計算を実施する。
予想では10~20%の強化だった、最大でも216mの予測だったんだが。
「 波乱様。 増援はどうしましょう? 」
コーヒーを飲む、俺は持ち札をもう2枚切ってる。
第1小隊と第2小隊だ。
他にも補給部隊を攻略中のダンジョン全てに派遣してる。
5氏族やディスタンドにだけ、過度な負担をかけてる自覚はある。
「 あの国には投入できる戦力は残っていないだろう、隣接する国もな。 他から増援が必要だ 」
「 それでは、私が行ってきます 」
「 頼めるか? 」
「 お任せください。 最終ダンジョン破壊までには必ず戻ります 」
計画の日程は重要だ。
残りダンジョンが4か所の段階では、もう修正は効かない。
「 ラナなら苦労はしないか。 頼む 」
「 お任せを。 直ぐに終わらせて帰ってきます! 」
ラナの実績を見れば、大幅に強化されて180mが380mになっても破壊は容易だ。
ケガもしないだろう、油断さえしなければ。
「 それでは、私が帰ってくるまで、波乱様は施設から出ないで下さいね? 」
ラナがチョット不安そうだ。
敵対勢力を排除して来たんで、俺の命はそれなりに安全にはなった。
なったんだが、どこからか湧いてくるんだよな、目立ちすぎか?
「 判った。 ここで大人しくしているよ 」
現状で、ここより安全な場所は無いだろう。
それでラナが安心して遠征出来るなら、ゆっくり休んでおこう。
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俺とラナの強化服は特別製だ、特別と言っても他のと違って軽くなってるだけだ。
俺は身体が小さいからその分軽くなってる、その分装甲は他の強化服と比べて30%増しだ。
他のと同じ質量になるまで装甲を厚くすると、関節部分で装甲が干渉する。
関節で干渉すると可動範囲を狭くなるんで、まともに動けなくなる。
「 波乱様は、私がお運びしますので大丈夫です! 」
って、ラナ達は言ったけど、俺は自分で動きたいから却下した。
強化服は、装甲とパワーの強化を目的として設計してる。
重い物を持ち上げるのは簡単だ、魔素炉の出力分だけ持ち上げられる。
強化服の外骨格も、それに耐えられる設計になってる。
最大出力を得るためには、音声による指令が必要となるけど。
問題は速度だ。
装着者の動作に反応して動作するから、装着者の以上の駆動速度は実現不可能だ。
事前に登録しておいた動作なら、強化服の限界まで速度は上げられる。
上げられるけど身体を強制的に動かすから、装着者の肉体は強化服の中でバラバラになっちまう。
負傷しても自動で治療は可能。
負傷を治療するための魔道具も積載してるから、自動でポーションや薬剤も投与できる。
自動運転で身体がバラバラになっても、ポーションを投与すれば連続行動は可能だ。
肉体がバラバラになる激痛に、耐えることが出来るなら話は変わるけど。
少なくとも俺はやりたくない。
ラナはハイエルフで勇者だ。
ラナが本気で動いたら、早過ぎて誰の視界からも消えたように見える。
速さを阻害しない程度に装甲を薄くしたら、おれの強化服より軽くなった。
何か寂しいんで、追加の装備を付けといた。
翌朝、みんなでラナの出発をお見送りする。
サポート部隊は、ダンジョン内で待機してるからラナ1人で出発だ。
ラナの移動速度には、誰も付いていけないからお伴も無し。
「 それでは行って参ります! 」
「 気を付けてな 」 ラナをハグしてお見送り。
「 はい波乱様 」
ラナはメイドさんズを見渡す。
ラナの強化服は青色が濃くしてある、本人の希望だ。
「 あなた達は、24日間必ず波乱様を御守りすること。 頼みましたよ? 」
目的のダンジョンまでは往復で20日、攻略に2日、休憩に2日だ。
ラナは休憩は必要ないって言ったけど、ブラックは俺が許さん。
「「「 はい、ラナ様 」」」
「 施設から出ないから心配いらない。 しばらくは、ノンビリしてるさ 」
強化服を着たラナが、名残惜しそうにゆっくり走っていく。
途中で姿が見えなくなったのは、本気モードで走り始めたからだろう。
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ラナが出発して3日目の深夜02:00。
施設の自室で寝ていた俺は、イエローアラートで起こされた。
俺は室内灯を点けてから、モニタでアラートの詳細を確認する。
「 ソル全体で魔素流の異常を確認か。 計画の前倒しを推奨ね 」
AIの計算では計画を35日早めるべきだと。
原因は不明だと。
現在残ってるのはダンジョンは4つ、第1小隊はダンジョン内で行動中で破壊まで2日。
第2小隊は移動中、目標のダンジョン到着まであと10日だ。
ラナも移動中、目標のダンジョン到着まであと7日だ。
目覚まし用のコーヒーが出来た、目覚まし用だからミルクも砂糖も少な目。
ダンジョン攻略中の第1小隊に異常なし。
チョッピリ魔物が増えたらしいが、予定通り完了できるそうだ。
ラナも第2小隊も移動中だが異常なし。
最後に破壊する予定のダンジョンは420m級。
ソルに存在していたダンジョンでは、1番大深度のダンジョンだ
ラナと、帰還した第1小隊で攻略する予定だったんだが。
予定を早めるとなると誰の帰還も間に合わない。
ラナが引き返して来れば間に合うが、それでは失敗した180m級の破壊が出来ない。
計画では180m級の破壊が先だ、引き返しては意味が無い。
俺が180m急に行っても、計画の日程までにダンジョンに到着できないし。
つまり、180m級はラナが、420m級には俺が行くしかない。
「 ラストダンジョンには、俺が先行してダイブする。 ラナもそっちが終わり次第合流してくれ 」
他の小隊は間に合わないだろう、って言うのはラナに伝えてある。
次までには高速な移動手段を用意しておこう、次が在ればだが。
「 判りました。 判りましたが、大丈夫なのですか? 」
モニタの向こうのラナは寝起きのはずなんだが。
しっかりメイド服を着てるのは、何故なのか。
「 他に手は無いし、ここで失敗すればすべてが無駄になる。 ついでにヒト種は全滅だ 」
420m級を最後にしたのは理由がある。
最大のダンジョンは最大の魔素収集力があるから、魔素を加速させやすい。
魔素の流れの制御には、好都合だった。
「 補給部隊は、50階層と70階層で待機中で問題は起きていない。 70階層で待機中の部隊は、可能なら75階まで移動してもらう 」
「 ・・・・・・ 」
「 補給部隊にはリレイヤー、通信中継器を余分に持たせてある。 通信には問題無いだろう 」
魔素を用いた通信には垂直偏波と水平偏波を併用し、更にディジタル化してある。
よほどのことが無い限り通信が途絶することは無い、と思う。
最大のダンジョンを最後に持ってくるリスク、増加した魔素濃度で強化される危険性。
モロモロ考慮しても、最後にする以外の選択肢は無かった。
「 破壊が無理だと判断したら、小さな隙間に隠れてラナを待ってるよ。 お迎えはよろしくな 」
「 ・・・・・・判りました。 決して無理しないで下さい 」
「 無理はしない 」 する気は全く無い。
「 危なくなったら、脱出装置を使ってくださいね? 生きてさえいれば傷は治せますから 」
「 判った。 躊躇しないで使うと誓うよ 」
2人とも納得しないまま通信は終了、俺は出発の準備を始める。
俺専用の強化服、魔素炉はフルチャージ済みだ、使ってないし。
大ダンジョンまでの道中は護衛なし、強化服の長距離走行に馬では付いてこられない。
筋肉を構成する筋繊維は動かすだけで傷つく。
力を入れれば入れるだけ傷が酷くなるそうで、ようは筋肉痛だ。
強化服で長距離走行するときは力を入れずに、最低限の力で増幅率は最大に。
そうすれば、わずかな力だけで高速走行できる。
走るって言うより、連続ジャンプになっちゃうけどな。
「 メイドさんズは施設の維持をよろしく。 お肌が荒れるから徹夜は無しで 」
「「「 ・・・・・・ 」」」 誰もクスッとも笑わないな。
施設の留守番はメイドさんズにお任せだ。
5人には2交代で非常事態に備えてもらう、3交代だとワンオペになっちゃうから。
「 んじゃ、行ってくる 」
「「「 行ってらっしゃいませ。 目的を果たされて、無事の御帰還をお祈りしております 」」」
どんなに準備しても、どれだけシミュレートしても上手くいかない。
原因不明で計画が破たんしそうになる。
時刻は04:00、ラナとは1時間近く話していたことになる。
まだ暗い神殿の裏手から、俺は1人で出発する。
前回は何時でもラナ側に居てくれたけど、今日は1人だ。
この世界は俺のことが嫌いらしい。
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