表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/192

世界平和

舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。

色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 ダンジョン破壊計画および魔素の地脈化計画が進行中。


|||||


計画が始動して6ヶ月が経過した、現在まで計画は順調に進捗中。

無魔素エリアの発生は極端に減少した。

代わりに増えたのが、魔物との戦闘によるケガと病気だ。


同じ惑星で同じ条件で発生したんだから、こちらが住み易くなればあっちも住み易いだろう。

そんなんでゴブリンなんかの魔物が増えて、戦闘になるケースが増えている。



「 君たちが理解すべきことは1つだ。 それは君たちの目の前にある 」


ディスタンドにある白川さんが祭られている神殿、その治療所の一室。

エルフ族、人族、獣人族が各5人ずつ、3チームで15人。

選抜され集まっているのは、医療に携わる覚悟と知識がある者。


「 事前に説明はしたが、ご遺体を解剖して死因を特定してもらう 」


俺は全員を前に強い口調で命令する。


「「「 ・・・・・・ 」」」


気持ちの良いものではないが必要な事だ。

俺は血を見るのも苦手だし、立ち会う必要は無いって言われてる。

本音じゃ参加したくはない。


でも発案者だからな、それなりに責任はあると思うんだよ。

こちらでは、遺体を解剖して死因を特定する、何てことは今までやっていなかったらしい。

治療できるのは外傷だけだから、やる必要も無かったんだが。


「 では、始めよう 」


御遺体の魂の安寧と休息を祈る、やり方は各種族バラバラだが問題では無いだろう。

エルフ族はエルフ族が、人族は人族が、もちろん獣人は獣人が担当する。

最初は。


御遺体は魔素欠乏症でお亡くなりになった人達で、ご遺族が居る場合は同意を得て検体頂いている。

彼ら彼女らはに死因を知らせていない。

だが、ここでの主たる目的は医者の養成ではない(・・・・)

技術の向上はもちろん期待しているが、それ以上の目的がある。


「 時間だ、右隣に移動しろ。 全てを記録するのを忘れるな 」


全員が、全種族の検死を実施する。

他種族の検死に忌避感を訴えるものがいる、気持ちはわかる。


御遺体をお見送りした後は、部屋を移って報告会。

タップリシャワーを浴びてから、消毒も忘れずに。

俺は偉そうな椅子に座って報告を受ける、誰が用意したのか俺は知らん


「 では、報告を 」


各チームは、指導官の助言を受けて簡易的な報告をする。

当たり前だが病変は報告されない、各チームの報告では死因は不明となる。


「 なるほど。 他に何か気が付いた事がある者はいるか? 」


「「「 ・・・・・・ 」」」


誰も何も気が付かないなら、全員を不合格にするつもりなんだがな。

詳細は最終報告書で見るか。


「 ・・・・・・よろしいでしょうか? 」


エルフ族の女性が手を挙げた。


「 なにかな? 」


「 3つの種族の御遺体なんですが、有意差が見受けられませんでした 」


「 死因に差が無いと言う事か? 」


「 そうではなく、いえそうなのですが。 ・・・・・・各器官に大きな差が見られませんでした。 体格等の個体差は在りましたが 」


良かった、正解だ。

だが、ここで甘やかしてはいけない。


「 君は各種族に、医学的な差が見られないと言いたいのか? 」


「 はい 」


「 なるほどな。 他には? 」


俺は参加者達を見渡す、威圧的に、威厳を持って。

10歳だからな、限界が在るのは理解してる。


「 よろしい。 ではその点も含めて、各自報告書を書き上げるように 」


俺は廊下に出て施設の司令所に向かう。


「 お疲れ様でした、波乱様 」


「 ラナもお疲れ様。 このまま指令所に行こうか、そろそろ攻撃時間のハズだからな 」


部屋の中からは、『 提出期限は明日だ、期限におくれないように 』 とかなんとか聞こえてくる。



B及びC大陸のダンジョンは優先して潰した、もうダンジョンは残っていない。

たまに発生しそうになってるけど、完全体になる前に潰してる。

残っているのは、この大陸にある5カ所のダンジョンだけだ。


「 ダンジョンから魔素の放出を確認しました 」

「 最深部からも魔素の放出を確認しました。 放出パターンは、崩壊時のそれに酷似しています 」


「 メインモニタへ 」


町や村から離れてれば、ここからの攻撃でダンジョンは潰せる。

ダンジョンだったものから、徐々に放出されていく魔素。

もう見慣れたパターンだな、異常は無い。


「 ダンジョンの崩壊を確認した。 攻撃態勢を解除、警戒態勢へ移行 」


司令所の空気が緩んだ。


「 以降の監視をAIに移管。 休憩だな 」


「「「 はい、波乱様 」」」


これで、破壊すべきダンジョンは残り4つだ。

残りは、直接ぶっ叩くしかない。


|||||


翌日の王城の会議室、俺とラナ、3人の指導官がミーティング中。


「 今回の受講者は、全員規定をクリアしていると考えます 」


3人の指導官の統一見解だそうだ、俺も同意見だ。


「 参加者の中には、魔物にポーションや治療の魔道具を使った者もいました。 その際の、効果の違いに疑問を持ったようで・・・ 」


魔物は歯を磨かない、手も洗わない。

ゴブリンやオークも、武器を煮沸したり、アルコール消毒したりはしない。

彼らの爪や牙、武器には、血や肉片が常温でそのまま付いてる状態だ。

つまり、醗酵して、腐って、天然の生物兵器になってる。


それらで出来た()は、ポーションでも治癒魔法でも治せる。

んでも、生物兵器に対してはポーションも治癒の魔法も無力だ。

毒を消すことは出来るが、生物兵器には無力だ。


受講者には針と糸、それと投薬での治療を教え込んでる。

ここの15人はそういう治療を体験して、成功させた者達だ。

施設にあるポッドを使えば、もっと高度な治療も可能だ。

でも、ポッドを使わないと出来ない治療じゃ、覚えても意味はない。


会議室に呼び込まれた受講者達、種族毎にまとまって座るのは何時もの事だ。

部屋に入って、勇者ラナを見て固まるのも何時もの事だ。


「 おめでとう。 君たちは最終ステージに進むことが決まった 」


隣で座ってるラナは、内容が医療関係なので静かだ。


「 これから、君たちにはある映像を見てもらう。 その後、自身の進む道を決めることになる 」


パネルを操作して室内を室内を暗くする。

会議室、その円卓の中央のモニタに大きな建造物が映し出される。

構造物の背景には真っ青な空、大気が汚れていない証拠だ。


「 これは過去の記録映像だ 」


モニタには笑う親子連れやカップル、子供達も映し出されてる。

よく見ると、人々と構造物の寸法の対比がおかしな事に気付くだろう。

構造物は高さが数キロ、縦も横も数十キロになる。


「 これは、失われたエルフの超古代文明!? 」


防衛施設を見捨ててディスタンドを建国した当時のエルフは、それなりの技術を使ってた。

5000年経過した現在では、”超古代文明” 扱いされている。

魔法が使えることに浮かれ、技術を放置した奴らの使ってた技術なんて、大したものでは無いんだが。


「 不正解だ。 この映像はそれより更に数千年前のものだ 」


受講者は例外なく驚く、その他の参加者はもう慣れてる。

俺とラナは知ってるから、驚く事じゃ無い。


「 君たちの言う、”超古代文明” の更に昔、惑星ソルには70億人の人類(・・)が住んでいた。 これは、その当時の映像だ 」


「「「 70億? 」」」


移動経路としての空中は、不安定で不経済だ。

大気の密度は低くてムラが多く流れも在る、静止状態を保持するだけでエネルギーが必要となる。

んでも、密度が低い場所を移動するから、移動速度を高く出来るという利点も在る。


地表を移動する場合、静止状態ならエネルギーは必要無い。

エアコンなんかの装備品は、どんな移動手段でも使うから考慮しない。


ソルでは、移動手段としての飛行機は使用していなかったらしい。

移動チューブが、建造物のあちらこちらから出ているのが見える。

太いチューブは、長距離移動用だろう。


「「「 ・・・・・・ 」」」


殆どの受講者達は、この映像で思考が停止する。

”大昔の方が技術が進んでいた” なんてことは信じられないらしい。

ロマンが足りないな。


「 ある日、後に魔星と呼ばれることになる彗星が現れた。 ソルは、魔星から放出される魔素の影響を受けることになる・・・ 」


モニタの映像は、次々と変わっていく。

過去に存在した人類の文明の証、そして魔素の及ぼす影響だ。


「 危機感を持った人類は、魔星を迎撃する計画を実行した。 計画は失敗、そして、魔星の欠片が地表に落下した 」


最初の映像に戻る。

構造物を襲う、熱波、衝撃波、そして暴風や震動。

モニタは、しばしノイズを映した後にブラックアウトする。


「 魔星の欠片の衝突により、ソルの人口は激減した。 また、魔素は人類にとって有毒だった・・・ 」


|||||


「 それでは、私達は人類の子孫と言うことなのですか? 」


静かな会議室に、エルフの女性の声が響く。


「 正解だ 」


モニタを再点灯。


「 進化論は理解しているな? これは人類の進化の最新地点、その推測になる 」


人類を頂点としたツリー、枝分かれした先に人族、エルフ族、獣人族、それとドワーフ族が表示される。


「 ドワーフ? ドワーフ族は昔から居たのですか? エルフより前に? それに巨人族? 」

「 ダークエルフも居たのか? 」


「 不正解だ。 ドワーフは居ない、ダークエルフも巨人も居ない。 全て人類だ 」


個体差は今より大きかったみたいだな、身長も肌の色も。


「 さて。 今まで君たちが使用してきた薬剤は、全て人類用に設計された物だ。 だから、人類には有効だ、人類にはね 」 


薬剤の総使用数は、まだのべ10数万回だから、安全性が完全に保証されてる訳じゃ無い。

個体差はあるだろうし、特異点もあるだろうし、そのへんは説明しておく。


「 では、魔物にとっては薬剤は毒になると? 」


「 半分不正解だ。 薬剤が効くのは人類の子孫、って事だ 」


薬剤が魔物には毒になる可能性は在る、在るんだが試すのはもったいないだろう。

ゴブリンやオーク退治は、殴った方が早い。




「 今回も騒ぎ出す奴は居なかったな 」


「 もう6回目ですからね。 知識も情報も、町に流れていますから 」


晴れて医師見習いになった者達が居なくなった会議室で、指導員の1人が話し出す。


「 今では手洗いとうがいは、市民の習慣になりつつあります。 それと、地動説も 」


みんなが信じていた天動説、そこに俺が地動説を提示した。

実際の映像付きで。

信じない奴がには、衛星軌道からの最大ズーム映像を見せた。

ダーッとズームすると、手を振ったり踊ったりしている自分が写るんだからな。

それでも信じなかった奴は、今までいない。


それでも信じられない奴はそこまでだ、面倒だから放置して俺は相手をしない。

俺は何もしない、何もしないけど施設を退去して国に帰ってもらう。



「 さすがに自動説はもういないか 」


「 居ても選別から除外しています、ご安心を 」 


自動説、『 世界は()分を中心に回っている! 』 と信じてる奴が唱える理論だ。

”何をしても許される”なんて事は、考えていない奴らだ。

自分が世界の中心だから、許してもらう必要すらないんだと。


自分は大声で騒ぐけど、周りが五月蠅かったら文句を言う。

自分はやっても良いんだが、他人がやるのは許せないんだと。

アホな貴族のお坊ちゃま、お嬢ちゃま達に多い傾向がある。


「 んじゃ、今日中に希望を確認しておいてくれるか 」


「「「 判りました 」」」


「 これで、第6回の医師研修会を終了する。 お疲れ様 」


「「「 ・・・・・・ 」」」


受講生だった15人はこれから1年間、自分とは異なる種族の国の治療院で、医師見習いとして治療に携わる。

1年間無事に治療活動に従事できれば、『 白川神殿 公認医師 』 となる。


公認医師には神殿から、治療器具と薬剤の支給が保証される。

現状では最新の機器と薬剤だ、殆どのケガと病気を治せる。

治せないような重病でも、施設のポッドを使えば治せるしな。


そんな医師には、盗賊でも悪徳貴族でも手を出さなくなる。

後ろ盾は神殿と勇者ラナだし。


他種族の国で従事したくない者はそれまで、あとは知らん。



ディスタンドで2か所、スリスターでは4か所で同じ研修会を実施してる。

毎月の卒業生は最大で1ヵ所15人、既に300人を超える卒業生を送り出してる。


魔素の濃度が徐々に上がって来てるから、ケガ人も病人も増える一方だ。

促成栽培過ぎるのは理解してるんだが、今は数を増やす事に主眼を置いてる。


それに、主たる目的は種族間の偏見をなくすことだ。

自分や、自分の大切な人の命を救ってくれた他種族の医師。

種族間の偏見をなくすのには、有効だと思ってる。


人口が減り過ぎてるのに、つまらない偏見で人類の子孫同士で戦争なんかするなって事だ。

重要だよな、世界平和。


ところで、ドワーフはどこいった?


誤字脱字の報告、読後の感想などお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ