終戦
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 5大国会議が始まるハズ、だったんだが。
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ふと思う。
コーヒーのお供には何が合うのだろうかと。
ケーキでも好いしクッキーも在りだ、塩味のクラッカーも相性が良さそうだ。
ドーナツも在りだがカロリーと油が気になる。
から揚げ弁当よりカロリーが高いコーヒーも在るらしい、それはコーヒーなのか?
コーヒーカップの向こうでは、ディスタンドとスリスターの出席者が、紅茶を飲んで一休み中。
処理が無事に終わってホッとしてる。
俺はコーヒーだ、ラナはコーヒー。 コーヒー?
「 会議は苦手なので、眠くならないように飲んでます 」 いつもジュースなのに。
魔力切れで倒れたイケメンだったエルフ、獣人族の会議出席者5人は隷属の首輪を装着済み。
獣人族に賛同した人族の代表者達3人にも装着済み。
河原君の子孫も奴隷の首輪を装着済み、河原君の子孫へ装着したのは白川さんの子孫だ。
「 私が責任を持って対処いたします 」
って言ってたけど、白川さんの子孫が悪いんじゃないと思う。
さっきまでは、防護服を着用した騎士達が動き回ってた。
隷属の首輪を付けたり、魔道具を取り上げたり、椅子に座らせたり。
今はメイドさん達がお茶の用意をしてくれてる。
防護服は魔素を通さない。
着用してれば魔素が濃い場所でも活動できるし、魔素が薄い場所でも活動できる。
さっきまでの会議室の魔素濃度だと、ラナだけじゃないかな、防護服を着ないでも動けるのは。
もう回路はオフにしてるから、魔素の濃度は大丈夫だ。
各国の情報を集め始めたのは3か月前だ、切っ掛けはラナの一言。
「 波乱様、各国の情報を集めましょう 」
『 5か国会議は4か月後 』 と女王は言っていたが、ラナが計算すると7日から10日ほど遅すぎるんだと。
「 元エージェントのカンです! 」 根拠はカンだそうで。
俺も世界の危機なのにノンビリしてるなとは感じたが、そんなもんかとも思ってた。
まともな交通機関なんてないしな。
んで、ラナが言うならって事で情報収集を開始した。
衛星の製造はAIにお任せで、他にやること無かったし。
この世界の照明は魔道具を用いてる、王都じゃ殆どが灯りの魔道具だ。
ろうそくやランプと比べて火事は起きないし、光源が揺れないから光量も安定してる。
でも、天井や壁の高い位置にある、灯りの魔道具を操作するのは大変だ。
城や屋敷なんかは、数が多いからスゲー大変だ。
面倒なんで、俺は灯りの魔道具を集中管理する方法を提案した、今から5000年ほど昔だ。
大丈夫、俺はまだ10才だが5000年前で計算は合ってる。
魔力が通る金属で魔道具を繋いで、灯りの魔道具を集中管理できるようにした。
俺が居なかった間も広がってたみたいで、今では街路灯なんかも集中管理してる。
照明ネットワークだな。
そのネットワークから、映像と音声を取得出来る魔道具を作った。
んで、ディスタンドとスリスターのエージェントを動員して他国の情報を集めた。
無線で連絡が取れる魔道具も大量に作った。
距離が在り過ぎるんで中継器を用意する必要があったが、ラナと潜ったダンジョンの魔石が在ったから何とかなった。
そしたら、出てくる出てくる。
5大国の内の3ヶ国を中心とした連合軍を結成し、まだ被害が少ないディスタンドとスリスターの土地を奪う計画が判明した。
計画には、獣人の国が2ヶ国と、人族の国が1ヶ国、後は小さな国8ヶ国ほどが参加してる。
会議と平行して、連合軍は軍を侵攻させてディスタンドの首都から2~3日の所にある大ダンジョンを占拠中。
大軍の補給には、ダンジョンが在った方が楽なんだと。
主に食料らしいが、レベルアップも出来るんで一石二鳥なんだと。
「 このような事をしてタダで済むと思うな! 」
「 これはどういう事ですか! 」
拘束はしていない、していないんでウルサイ。
喋らない様に命令も出来るんだが、会議室の映像はライブ配信中だし、好きに喋らせておく。
口は動かせるけど椅子からは立ち上がれないから、危険は無い、もう少し我慢する。
「 これは、とある筋から入手した情報なんだが 」
入手した情報をモニタに表示して奴らに見せる、元イケメンエルフは静かだ。
まぁ、御神体がぞろぞろ出て来るし、顔はボコボコだし、静かにもなるか。
誰が殴ったのか俺には見えなかったが、やったのはラナだろう。
微かに風を感じたし。
『 では、11か国の連合軍と言う事ですな! 』
『 いかにも。 軍勢は2万は超えるでしょうな 』
『 魔法が使えないエルフなぞ、この爪で引き裂いてやる 』
幾つもの画像を、幾つものモニタを開いて、会議室中に表示する。
署名がある密書何かの静止画も、別モニタで表示しておく。
コーヒーを飲みながら、出席者の奴らの顔色が変わっていくのを眺める。
獣人は顔色が判りにくい。
「 それで、現在の映像なんだが 」
モニタに、現在占拠されてる大ダンジョン付近の映像を映す。
野戦用天幕の中にズーム、キラキラな服に身を包んだ奴らに注目だ。
『 ここまで来れば、計画は成功した様なものですな 』
『 いかにも! 国境の砦もココの守備隊も、我らを見ただけで逃げだしましたからな! 』
『 やはり父上の言ったとおりだ。 魔法の使えないエルフなど、恐れる事など無い 』
『 エルフの奴隷ですか、楽しみですな 』
軍の首脳陣が酒を飲みながら談笑してる、グラスの形状と色合いから判断して、多分ワインだろう。
奴らが来るのが判ってたから、こちらは遅滞行動だけして反撃はしていない。
侵攻軍の集結地点は判明してるんで、そこまでは進んで欲しいし。
まとめて処理すれば手間が省けるし。
「 会議をしつつ裏では攻めてきてる、証拠はこれで充分だろ? 」
それでだ。
「 これ、どうすんの? 」
モニタに映るダンジョンを占拠してる奴らを指し示す、最後通告だ。
「 俺達を捕らえてもムダだ! 直ぐに我が軍が駆けつけ、ディスタンドの王都は堕ちる! 」
「 判ったら、さっさとこの首輪を取るが良い。 今なら奴隷になるだけで、赦してやる 」
「 我が軍は2万5千を越えておる。 敵うはずがなかろう 」
今なら、奴隷になるだけで赦してくれるそうだ。
それでは解決にならないんだが。
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ターミナルを操作してAIに指示を出す。
後は待つだけだ。
「 波乱様。 随行員と護衛は全員捕えました 」
「 了解した 」
ラナが衛士からの報告を教えてくれる。
会議出席者以外の関係者は全て捕獲して、予定通り食堂で会議室の映像を見てるらしい。
3ヶ国の出席者達がウルサイ。
ターミナルの数値が残り30秒となった。
「 クレームはその位にしてくれるか? 」
そろそろ始まるんで、静かにしてモニタに注目してもらいたい。
少し判りにくいんで別のモニタも用意する、首脳陣のズームと侵攻軍の布陣が判るようにだ。
地上に広がる光、爆風で飛ばされる天幕、驚いてる侵攻軍の首脳達。
『 どうした!? 敵襲か!? 』
『 何だ! エルフどもの魔法か! 』
それでもグラスを離さないんだな、酒に対する執着恐るべし。
広がる光は8回続いた。
映像では首脳陣は全員燃えた、一瞬だったから痛みは無かっただろう。
侵攻軍がいた場所は一面赤く燃えた大地となっちまった、環境破壊だな。
後で植林しておこう。
「 ・・・・・・なんだ。 コレは 」
「 違法な侵入者を排除した、不良品の在庫処分も兼ねてる 」
ダンジョンバスターは、先端のライトアローの収束角を替えて色々試作した。
んで、試作品で貫通効果が少なかった物は死蔵してあった、もったいなかったし。
今回使用したのは、収束角度90度と100度と120度の残りから8発を使用した。
貫通効果は無いが、地表に対しては効果があったな。
「 各部隊に通達。 残敵が居たらコレを確保、王都まで連行し監禁しろ 」 居ないと思うけどな。
『『『 了解 』』』
「 まだ地面は熱いはずだ、火傷に注意してよろしく 」
『『『 了解 』』』
現地にはディスタンドとスリスターの観測員が待機してる。
もちろん、充分な距離をとってる。
軍の本隊は半日の距離を置いて布陣済み、到着までには地表は冷めてるだろう。
首脳達が、俺の息子が~、私の長男が~、跡継ぎが~、って言ってるけど俺は知らん。
ターミナルを操作、侵攻軍の主力3か国の首都を写す。
「 ・・・・・・何のつもりだ? 」
クマが何か言ってる。
クマの国の首都には王城は無く大きな屋敷だ。
「 何をするつもりだ! 」 クマが叫んでる。
叫ぶだけで立ち上がれないから、俺達には無害だ。
ウルサイけど。
1発目で屋敷が炎上して半壊した、至近弾ですらないんだが。
2発目で首都の半分位に火災が発生した、熱波で火が付いて爆風で燃え広がった。
「 脆すぎないか? 」
「 波乱様。 獣人族の建物は殆どが木造です 」 なるほど。
クマが吠えてる、妻と子供の敵討ちだとか、最後の1人になるまで徹底的に戦うとか。
『 こんな酷いことをやりやがって 』 って言われてもな、戦争だし。
先に手を出したのはそっちだし、エルフ族に対して同じことをやろうとしてただろう、と言いたい。
自分がやるのは良くて、自分がやられるのはダメなのか。
選民意識か? 身勝手か? それともジャイアニズムか?
この後、もう一つの獣人の国に3発、人族の国には5発を投下したところで、やっと降伏してくれた。
人族の国は最初から降伏するって言ってたけど、問い詰めたら嘘ついて誤魔化そうとしてたからオマケしておいた。
ディスタンド&スリスターVS連合国の戦いは、これで終戦だ。
いつ始まったのかは不明だが。
女王が戦後処理の話し合いを始めたんで席を立つ。
「 あれの始末をつけようと思って 」
イケメンだったエルフに向かって顎をクイッとやる。
全員の視線が俺に集中したんで、説明しておいた。
「 口を開くな! 」 ラナに怒られた。
怒られたのはイケメンだったエルフで俺じゃ無い。
何かを言おうとしてたんだろう。
会議室を出て、ラナに先導されて別室に向かう。
部屋には5氏族の代表と、マリアさんが待ってるはずだ。
こいつの処理が終われば、俺の心に一区切りつけられる。
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