ぶっ叩く
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 ラナと一緒に、ダンジョンを破壊してみた。
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大ダンジョン破壊から2ヶ月が過ぎてるが、今のところ平穏な日々が続いてる。
あれから2ヶ月間、プローブで他の大陸を徹底的に調査した。
調査したんだが、期待したような収穫は無かった。
魔物や動物は確認出来たが、文明を持ってる知的生命体の存在は確認出来ていない。
ゴブリンが獲物を火で焼いていたが、知的生命体とは認めないで良いだろう。
「 おはようリオ、ラナ 」
「 おはようママ 」
「 おはようございます、お母様 」
いつもと同じ朝、いつもと同じメンバーが集まって、いつもと同じ様に朝食を食べる。
「 で、シミュレーションの結果も同じと。 上手くいかないな 」
「 波乱様、失敗ですか? 」
朝食後にコーヒーを飲みながら、シミュレートの結果を確認する。
昨夜スタートしたシミュレートの結果が、リビングのモニタに表示されてる。
結果はネガティブ、失敗だ。
「 そう、また失敗だ 」
人工的に魔素融合反応を発生させるシミュレートが上手くいかない。
魔素の濃度が問題なのは明確なんだが、改善する方法を思いつかない。
通常空間で光束を越える方法が在れば何とかなるんだが、それは無理だろう。
「 リオ。 上手くいかない時も在るわ、続けていればいつか成功するわ 」
朝食の片づけを終わらせたマリアさん達が、リビングに入ってきた。
しばらくモニタを覗き込んでいたんだが、色々諦めたようだ。
「 それで、何を作ろうとしているの? 」 見ただけじゃ判らないよな。
「 相互確証破壊兵器だね 」
「 相互かくしょう? それば、どんな物なの? 」
「 戦争を遠ざけたいなって思ってね 」
「 あら素敵。 どんな風に使うのかしら? 」
「 どんな風って言っても、普通に色んなものを破壊するんだけどね。 ものすごく強力な武器だよ。 出来れば大陸の1/3とか1/4は壊したいね 」
マリアさん達の動きが止まった、ラナは変化無し。
でもあれだ、誤解してそうだなこれは。
「 あ~ママ? 戦争を無くすには、どうすればいいと思う? 」
「 ・・・・・・そうね。 武器を無くしたら、戦争しなくなるんじゃない? 」
「 お兄様! 私も武器を無くせば良いと思います! 」
マリアさんと、なぜかマルセラが答えてくれた。
俺とモニタの間に入り込みながら。
俺には遠隔操作の技術が在るから、モニタに触れなくても操作は出来るんで問題は無い。
「 マルセラもそう思うんだね 」
マルセラの頭を撫でる、コーヒーカップを持っていない方の手でだ。
コーヒーカップで殴るつもりは無い。
「 俺って、襲われることが多いし。 何とか、襲われない方法を考えてるんだよね 」
俺の戦闘力は低い、大人数で真面目に襲われたら敵わないだろう。
現実問題として、俺が襲われたら誰かが来てくれるまで耐えるしかない。
武器無しで何とかなるとは思えない。
「 お兄様を襲って来た奴なんか、私が鎌で切り刻んでやります! 」
マルセラは挫けない娘に育ってくれたようだ、兄として嬉しい。
薬草栽培用のクワで反撃か、嬉しいんだが問題はそれほど簡単じゃない。
「 ありがとうマルセラ。 でも、武器を無くすんだろ? 鎌や斧、シャベルやクワは武器に入るんじゃないかな? 」
「 入りますか? 」
マルセラはちょっと不服そうだ。
「 ナイフやフォークも武器になるよね。 食卓の椅子でも殴れるから、椅子も武器になるのかな? 」
「 では武器が無い時は、どうやってお兄様を護ればいいんでしょうか? 」
「 そうだな。 ラナはどう思う? 」
泣き出しそうなマルセラの背中を、ポンポンしているラナに訊いてみる。
妹に守られなくちゃいけない兄ってのも、泣きたくなる案件なんだが。
「 昔は、戦場を丸ごと焼き尽くしたり、竜巻で切り刻んだり、大規模な殲滅魔法が在りました。 魔素が減ってきて、少し前からそれらの魔法は使えなくなりましたが、それでも国同士の争いは無くなりません 」
「 ・・・・・・ 」
マルセラが下を向いて固まってしまった。
「 武器を1種類や2種類無くしても、魔法が使いにくくなっても国境は存在するだろ? だから俺は、武器や魔法を無くしても、戦争は無くならないって思うんだよ。 争いなんて素手でも出来るし 」 俺なら石を投げるけどな。
「 リオ? それと街を破壊する武器と、どう関係するの? 」
マリアさんはまだ心配そうだ。
「 武器は無くせない、素手でも争いたがる奴は居る。 だったら、争えなくなるまで武器を増やせばれば良いんじゃないかって思ってね 」
皆の顔を見渡してみる、判ってくれると良いんだが。
「 相互確証破壊兵器。 使ったら確実に相手を破壊できる兵器、でも自分も破壊される武器。 それをお互いに持つんだよ 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
「 戦争したがる奴って、自分は安全な場所に居ることが多いだろ? そんな奴が、自分が危ない状態で戦争をしたがるとは思えないんだよね 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
「 それに、戦争したら自分も確実に被害を受けるってなったら、市民も戦争に反対するんじゃないかって思うんだ 」
そんな兵器が無い状態でも戦争は無くならないのに、完成した後に平和のために兵器を無くせって言ってもな。
それで平和になるとは思えない、そんな兵器が無い昔から戦争してたんだし。
だったら、兵器を増やしたら少しは戦争を減らせるんじゃないかなってな、あくまでも推測だが。
「 まだ完成していないし、使うつもりも無いけどね。 主な使い道は脅しかな、『 俺達に手を出したら反撃するからな 』 ってね 」
「 だったら良いけど。 リオ、あまり変な物を作らないでね? 」
「 大丈夫。 みんなを傷付けるようなものは作らないから 」
そう言ってリビングを見回す。
ラナ、マリアさん達全員揃ってる、俺にとってのみんなはここに居る人物だ。
メイドさんズも忘れていない。
「 波乱様、そろそろ時間になります 」
「 そんな時間か 」 そろそろ出勤しないと。
「 いってきます、ママ 」
「 いってらっしゃい、リオ、ラナ 」
マリアさんとマルセラに見送られて出勤。
ラナとメイドさんズの護衛付き。
「 波乱様。 相互確証破壊兵器は、完成してもお使いにならないのですか? 」
「 使うよ 」
ラナの目を見て返事をする、即答だ。
「 みんなを傷付ける奴には使う。 自分から仕掛けるつもりは無いけどな、やられたらやり返す 」
俺の出来る方法でみんなを護る、コレは宣誓だ。
「 判りました、波乱様 」
記録では、ラナもかなりの修羅場を潜り抜けてきてる。
激戦じゃなくて修羅場、息子を人質に取られたことも在ったようだ。
俺は俺なりの方法でみんなを護る、ラナは笑顔だ、俺の決意が伝わったんだろう。
伝わったんだよな? ラナはサイコパスとかじゃないよな?
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出勤後のコントロールルームは、みんなが試験に向けて準備中。
指揮官席( 自称 )の回りには、幾つものモニタを起動している。
俺が注目してるのは、魔素反応モニタと光学モニタだ。
「 ターゲットを確認しろ 」
『 ターゲット、B大陸の280m級ダンジョン 』
「 周囲確認 」
「 ターゲット周辺に、知的生命体は確認出来ません 」
メイドさんズにも仕事を割り振った、何でも自分だけでやろうとしてもな。
1人でも出来るけど、俺が居なくなった時に備えておかないと。
魔道具製造魔道具の時みたいに、誰も使えなくなったりしたら大変だ。
『 攻撃衛星が所定の位置に着きました 』
AIが報告してきた。
衛星の軌道や姿勢制御は手動じゃ無理なんでAI任せ。
「 衛星に異常無し 」
メインモニタには、使用する攻撃衛星が映し出されてる。
他の衛星の光学器機によるリアルタイム画像だ
衛星には、電信柱のような物が6本並んでいる。
施設にはそれなりの兵器のデータがある。
その中には、素粒子レベルとかクオークレベルで物質を破壊できる物も在る。
でも使用出来ない。
魔素濃度が高いダンジョン深部でそれらを使用した場合、周囲の魔素を加速してコアに叩きつけ、融合反応が起こる可能性が在る。
立ち消えになる可能性が高いんだが、融合を起こす可能性は0ではない。
だから、それらの兵器は使用できない。
小ダンジョンを破壊したら、付近の小ダンジョンが少し成長した。
中ダンジョンを破壊したら、周囲の小中ダンジョンが成長した。
大ダンジョンを破壊したら付近の小中ダンジョンが崩壊して、その次に近いダンジョンが成長した。
魔素の流れを測定した結果、大ダンジョンは幾つかの中ダンジョンと繋がっていて、中ダンジョンは幾つかの小ダンジョンと繋がっていた。
魔素が極端に薄くなった状態で、それでも魔素を必要としたダンジョンは、周囲に魔素収集用のダンジョン網を構築したらしい。
小中ダンジョンに在るコアはダミーもしくはコピー品らしく、破壊しても本体の大ダンジョンに影響は無かった。
簡単な話だ、大ダンジョンだけ壊せば残りは自壊してくれる。
俺達が壊すのは大ダンジョンだけで良い、問題はその方法だ。
コアを壊すには最下層まで降りていってぶっ叩くか、もしくは物理的に壊すかしかない。
「 ちょっと待った。 隣の150m級にターゲットを変更 」
『 ターゲット変更、了解 』
魔素は全てを透過する、それを利用して魔素の濃度が高い場所を特定、その深度で区別してる。
他の大陸のダンジョンの階層なんて、判るハズもないし。
「 波乱様、準備完了しました 」
「 ありがとうラナ。 1号投下 」
『 投下します 』
もしくは、物理的に壊すしかない。
例えば、衛星軌道上から電信柱何かを落として壊すしかない。
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