ダンジョンは壊すもの
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 魔素が減少を止めるため、ディスタンドは全てのダンジョンを破壊することにしたんだが。
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微振動が続くダンジョンを出ると、久しぶりの太陽とご対面だ。
外で待機していたメイドさんズが、駆け寄ってくる。
騎士達も近づいて来るけど、そっちはどうでもいい。
「 お疲れ様でした。 お食事とお風呂の準備が整っていますが、どちらを先に致しますか? 」
「 おお、あんがと。 測定開始の連絡は? 」
「 ダンジョンが揺れ始めましたので、破壊成功と判断して各所に連絡しておきました 」
最初に俺の前に辿り着いたのは、マライア姉さんだ。
俺がダンジョンに入るのを、マルセラと2人で最後まで止めようとしていたしな。
心配してくれたんだが、今はとても良い笑顔だ。
5国会議の開催は4か月後だと、女王が言っていた。
世界の危機なのに、随分ノンビリしていると思ったんだが。
お隣のスリスターまで片道15日、これは整備された街道とゴーレム馬車があって、初めて実現可能な数値だ。
その先の国になると、スリスターから更に30日とか掛かるんだと。
往復で60日、ディスタンドからだと90日になる。
急ぎの連絡便でこんなもんだから、王が乗った馬車ではもっと遅いと。
その間、何もしないでジッと待ってるのは時間の無駄だ。
俺はダンジョンを破壊した時の、魔素の流れを検証することにした。
小、中、大ダンジョンを各1箇所破壊して、魔素の流れとその影響を調べる。
小中ダンジョンは確認済み、今回は大ダンジョンの破壊だ。
「 ありがとう。 じゃあ先に風呂かな。 ラナもそれで良い? 」
「 はい波乱様。 ですがその前に 」
「 そうだな、先に脱がないと 」
専用馬車まで歩いて移動、ラックに背中からもたれ掛かる。
ラナがラックを操作して擬体を固定する。
「 波乱様、始めます 」
「 頼む 」 歯を食いしばる、それなりに痛いんだ。
擬体から解放された俺は、ラナに支えられて地面に足を下す。
身に付けていたインナーには、あちらこちらに血が滲んでいる。
「 上から、頬1、顎1、両肩2、右ひじ外側2、左ひじ外側3・・・ 」
ラナが俺の様子を読み上げる。
メイドさんズが、あらかじめ用意しておいた用紙に出血と傷のレベルを記入していく。
調整用の資料にするためだ。
「 波乱様、ポーションです 」
「 ありがと、ラナ 」
記録が終わったんで、ポーションを飲む。
全身から痛みが引いていく。
「 今回一番酷かったのは、両足の爪でした。 3箇所で爪が剥がれていました 」
「 上手くいかないな 」
傷は完全に治ったがポーションはまだ残っている、チビチビ飲みながら擬体を確認する。
「 もう少し改造が必要か 」
俺はラナの脚を研究した。
5000才を越えてもしっとりスベスベで、それでいてモッチリ。
研究の成果が出れば、全女性が殺到する化粧品が完成するだろう。
では無く。
着目したのは、ラナが使っていた義足だ。
軽くて頑丈で思うままに操れる、脚の指まで動かせる。
勇者のスピードとパワーで壊れないんだから、たいした物だ。
「 義足はポッドにお願いして付けました。 使い方は施設のAIが教えてくれましたので、チョット訓練したら使える様になりました 」
ラナはハイエルフになった、 『 チョット 』 が何年なのかは聞かないことにした。
資料を漁って作り上げたのが全身儀体だ、全身タイツではない。
都市鉱山の建築物で使用されていた素材で作ってある、厳密には金属ではないらしい。
全身を覆ってもモニタが在るんで視界は良好だ、防護服と同じで全周見えるし、簡易AIのサポートも在る。
ラナと違って俺の魔力はごく一般的な数値だ、全身儀体を長時間動かせない。
だからゴーレムを1台潰して、魔素炉を取り付けた。
それで何とか動作可能になったんで、動作をサポートする形式で試験運用を始めた。
実戦投入は、今回が初めてだ。
装甲は充分だし、火力も上がった。
問題は動作速度だ、どうしてもワンテンポ遅れる。
身体の寸法ピッタリに作っても、筋肉や脂肪には弾力性がある。
身体を動かす → 筋肉や脂肪が凹む → 儀体が反応する、でディレイ(遅れ)が発生する。
日常生活には全く問題無いんだが、戦闘だからな。
儀体のサイズをミチミチに作って、押し込むようにして着れば多少マシにはなる。
んでも、儀体を着ていない感覚で目標を蹴ると、ワンテンポ遅れるんで目標と違った所に蹴りが当たる。
もしくは空振りだ。
しかたが無いんで、俺のスキルで改造してみた。
入力が在ったら、最初の50msの間だけ動作速度を上げる改造だ。
動き始めが遅れる分だけ、動作速度を速める感じだな。
それで思い知った、筋肉の反応速度以上で儀体を動かすと、骨も筋肉も逝ってしまわれる。
動作速度2倍なんてとてもじゃないが無理だ、色々試したが通常は1.05倍で固定。
それでも儀体の内側と擦れるから血が滲むし、マメもできる。
「 波乱様。 やはり素早さは、お捨てになるのが良いと思います 」
ラナは最初から反対だったんだよな、俺の安全性が上がるんで装甲が厚くなるのは大賛成だったけど。
儀体の内側に緩衝材を付ければ、擦り傷は無くなるし耐衝撃性能も向上する。
魔物に殴られても、骨は折れなくなるだろう。
「 そうだよな~ 」
急な動きでは固く、ユックリした動きには柔らかくなる素材は在る。
ベッドや枕に使われてるアレなんかもそうだし。
んでも、それだと外部からの衝撃でも固くなるんで、とてもじゃないが使えない。
「 他の方法を考えてみるか 」 要検討だ。
レベルも上がったしな、次はきっと面白くなる。
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「 大ダンジョンの100階層を、7日間で攻略・・・・・・ 」
クロエさん達は、まだ現実を受け入れられない様だ。
せっかく太陽がお出迎えしてくれてるのに。
「 お~い、クロエさ~ん。 お風呂沸いてるって 」
「 リオ・・・・・・ 」 クロエさん目が逝ってるな。
今回のダンジョン破壊には、クロエさんとクロエさんの旧パーティーにも参加してもらった。
クロエさん達の主な任務は俺の護衛、戦闘はラナが担当するからな。
総勢7人でダンジョンに挑んだ。
んで、何週間も掛かるって言ってたから、物資輸送用に1人で引っ張れる小形の4輪台車も用意した。
荷物を背負って移動するのはムダだ、会敵してから荷物を下ろしていたら間に合わない。
運べる量も少ないし、疲れるし。
専用のポーターを用意しても同じだ。
人数が増えて見つかりやすくなるし、護衛対象は増えるし、隊列が伸びて護衛が難しくなるし。
「 こりゃ当分ダメかな 」
「 波乱様、急なレベルアップの影響も在るでしょう。 しばらくソッとしておいた方がよろしいかと 」
「 だな。 んじゃ風呂に行きますか 」
護衛チームと言うか、調査隊と言うか。
とにかく俺とラナの周りでは、魔素の調査とダンジョン崩壊に備えるので、大忙しだ。
俺達はノンビリ風呂に入ることにする、1週間もダンジョンに籠っていたんだし文句は言わせない。
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