タイムリミット
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 他にも色々調べたいんだが、女王が何か頼んでくるし。
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「 久しぶりねリオ! 元気だった! 」
「 ボチボチでんな 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
笑ってくれるのはラナだけだ。
暗い雰囲気を明るくしようとしたんだがな、どうやらハズしたようだ。
「 元気だったよ、クロエさんも元気そうで何より。 村は順調なんだってね 」
「 ええ、順調よ。 村の人口も1000人を超えたわ 」
黒エルフの村に行ってたクロエさんが、久しぶりに帰ってきた。
移民が増えてて忙しんだと。
「 そうそう。 頼まれてたものを持って来たわよ 」
そう言うと、馬車に積んであった袋を下す。
「 ありがとう、わざわざ悪いね 」
荷物を受け取るのは女王の連れて来た騎士、袋の中身を箱へ移す。
時間も時間だし、そろそろ始めるとしよう。
「 それでは第4回の試験を開始します 」
俺はクロエさんが運んできてくれ物が入った箱のフタを閉め、パイプを繋ぐ。
箱の外には、ディジタル式の心拍計だけが置いてある。
時刻は深夜、場所は神殿の裏、状況だけ見ると怪しげな実験だ。
1回目はスライムで、2回目はゴブリンで、3回目は死刑囚の人族で実験した。
4回目もゴブリンなんだが、2回目とは実験を見守るメンバーが違ってる。
俺とラナの他に、白川さんの子孫、5氏族の長、それと女王と宰相とその護衛が4人。
他には国のお偉いさんも来てる。
河原君の子孫にも連絡したんだが欠席だ、理由は知らん。
深夜の神殿は静かだ、見回りの神官の足音を除けば、音は無い。
試験開始後5分で、心拍計が0を指し示し続けるようになった。
「 では、確認を 」
俺が言うと女王が顎をクイッとやった、無言でだ。
「 ・・・・・・ 」
護衛の騎士らしき4人が箱から3匹のゴブリンを出し、体内の魔石を探し始めた。
ほどなく見つかった魔石は洗浄され、女王の元に差し出された。
「 ・・・・・・ 」
差し出された魔石を確認した女王は、お伴と一緒にこの場を立ち去っていく。
懐中魔石灯の光が、段々と遠ざかっていく。
その後、参加者は順番に魔石を確認してから、各々立ち去っていく。
「 では、波乱様、ラナ様。 皆様お帰りになられましたので、我々もこれにて失礼します 」
「 お疲れさま 」
騎士達も立ち去ったんで、俺達は後片付けだ。
俺達は装置関係を、ゴブリンの死骸はクロエさんと一緒に来た人達にお任せする。
死骸は、近くのダンジョンに捨ててくる予定だ。
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投下した簡易型プローブの作動率は91%、急造品にしては充分だろう。
一応、最後の1台の信号が止まるまで測定を継続した。
取得したデータで、シミュレートは初めてたけど。
で、女王に結果を報告した。
「 20~24ですか。 以前のお話では20~30でしたから、それほど変わりは在りませんのね 」
モニターに表示された、シミュレートの結果を見た女王がのたまった。
「 数字はそんなもんですが、ココを 」
そう言って、グラフの単位を指差す。
「 月ですか?? 以前は年だったハズですよね!? 」
「 そうですね 」 やっと気が付いたか。
「 なぜ!? なぜこんな事になったんですの!? 」
「 最初の結果は、ここを中心に測定した数値を用いてました。 今回は、ソル全体でシミュレートしましたから 」
最初の予測では、魔素が無くなるのは最短でも20年だったんだが。
プローブで集めたデータを解析したら、最短で20ヶ月という結果になった。
魔素の動きは鈍い、恒星や惑星の引力にもあまり影響を受けない。
急に動かそうとしても動きそうに無いし、その手段が判らない。
ディスタンドの王都には防衛施設が存在して、長年魔素を収集し続けている。
そのお陰で、王都周辺には一定量の魔素の流れが出来上がっていたんで、助かってるけど。
「 ここには防衛施設が存在します。 アレが周辺の魔素の流れを調整していますので、他国に比べて良い数値になったと考えられます 」
流石にこの場面で、魔素を集めてますとは言わない。
んでも、惑星全体で見れば数値は最悪だ、直ぐに行動に出ないと間に合わないな。
他の国は、きっと酷い事になってる。
残り時間は最短で20ヶ月だ。
寿命が長いんで、人族より気長なハイエルフから見ればスゲー短く感じるだろう。
「 それと、直通のエレベーターは設置しておきました、あと会議室の改造も終わりましたんで 」
女王ご希望の水平方向にも動くエレベータは、お城の女王の衣装部屋から神殿まで通しておいた。
夜中に多脚ゴーレムにやらせたんで、誰にも気付かれてはいないだろう、地下を通ってるし。
さすがに地下500mに在る施設に直通は無理だったが、そこは我慢してもらう。
ラナと一緒に席を立つ、女王はまだ固まってるけど放置でいいだろ。
サッサと帰って、今日もみんなで映画でも観ることに 『 波乱様! 』 なんじゃ?
「 私達は助かるのでしょうか!? 国民はどうなるのですか!? 」
「 どうなるんだろうな? 」 俺にも判らん。
判らないから、帰って映画でも観よう。
「 波乱様は、私達を救う為に神が遣わされたのでは無いのですか? 」
「 神ね~、会ったことが無いから判らないな 」
俺の脚にしがみつくのは止めてくれ、手を離せ。
「 もし会ったら、よろしく伝えておいてくれます? 」 手を離せ、俺は神には係わりたくない。
「 違うのですか!? では誰が波乱様を、神は我々を・・・・・・ 」
あ、女王が倒れた。
ちょうど良いから帰ろう。
夕方、復活した女王から連絡が入った。
魔素が無くなったらどうなるのかって、質問してきた。
俺も知らないんで、スライムを使って試験することにした。
施設にある魔素収集装置は動かせないんで、スライムを連れてくるしかなかったんだが。
王都の人目の多い神殿に、スライムを堂々と連れくるのは不味いんだと。
んで、深夜に神殿の裏で、コッソリ試験することになった。
スライムは崩れ去って液体化し、その魔石は透明で魔石に在るはずの魔素が無い状態だった。
1回目の試験の結果だ。
ちなみに、この世界で俺が初めて見たスライムは、トンガリが無い丸っこい奴だった。
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第4回試験の翌朝、何時より遅い朝飯を食べてると俺宛に郵便屋さんが来た。
郵政省が無いんで、正確には郵便屋さんではない。
緊急の連絡だったんで、封緘を開けて最初の数行を呼んでから懐に入れる。
「 リオ? 読まなくて大丈夫なの? 」
スープのお替りを運んできてくれた、マリアさんが訊いてきた。
「 ゴルドさんからだよ。 運び込まれる病人 」が増えてるんだって 」
「 そうなのね。 ねぇリオ、何とかならない? 」
「 今は手の打ちようが無いね。 病人じゃないから、薬で何とかなるとも思えないし 」
マリアさんはポーションで何とかしたいんだろうけど、無理だ。
正確には、運び込まれた時点で亡くなってるんだから。
「 そうなのね・・・・・・ 」
マリアさんは優しいな。
「 出来るだけの事はしてみるつもりだよ、ただ 『 リオ! 』 」
マリアさんに抱きしめられた、お替りのスープがこぼれそうだ。
「 やれることはやってみるよ、どうなるか判らないけど。 でも、成功しても、失敗しても血は流れるだろうけど 」
「 そうなの? 」
「 たぶんね・・・・・・ 」
スープのお替りを受け取る、朝はシッカリ食べないとな。
女王に呼ばれてるから、食後は城に行かなくちゃならないし。
「 その件で女王に呼ばれてる。 そこで、何か良い案が出るのを期待してるんだけどね 」
それ位は期待していいだろ?
スープを飲む、マリアの料理は口に合う。
最近は、ラナがマリアさんに料理を習い始めたらしい。
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