エイリアンはノーサンキュー
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしい。 最初に人口を調査して、次に魔素量の調査をしてみた。
|||||
簡易型プローブは5日間で製造を完了した、今はプローブを輸送する衛星の製造中だ。
最初の3日間は自分で改造してたんだが、ラナの一言で状況が変わった。
「 波乱様。 製造は魔道具に任せたらどうでしょう? 」
魔力の使いすぎで真っ青になってる俺に、ラナはそう言った。
「 ・・・・・・そうだな。 何で俺は、そうしなかったんだ? 」
改造後の魔道具も、魔道具製造魔道具でコピーは可能だ。
それは知ってる。
知ってるハズだったんだが、そうはしなかった。
ポッドに急行して、フルメディカルチェックを受けたが健康体だった。
AIの問診結果では記憶の混乱だとさ。
「 個人の記憶の移動が可能として、推測される問題点は? 」
こちらの世界の、この施設を作った5000年前の技術力でも記憶の移動は出来無かった。
それが出来れば死なずに済んで、機械の身体になれてたんだが。
『 脳の成長は個人差があり、およそ20才過ぎまで継続します。 記憶の正確な移動には、同じ大きさで同じ成長度の、同年代の脳が望ましいでしょう 』
俺の場合はかなり離れているんだが。
「 用意出来た脳が、充分発達していない場合はどうなる? 」
『 一部記憶の喪失、演算能力の低下や混乱、感情制御の不安定化、運動機能障害、 「 そこまでで良い 」 』
まっさらな脳に記憶を移動するとしても、問題は山ほど在るようだ。
そこに別の記憶が残っていたりしたら、更に問題があるんだと。
推測だそうだが。
頭が痛くなってきた。
未発達の、他人の記憶が残る脳に記憶を移動したんだから、そりゃ記憶の不整合も出るか。
「 お体は大丈夫ですか、波乱様? 」
「 ああ、身体は健康だ。 問題は記憶だな 」
「 記憶ですか? 」
ポッドに腰掛け、両手で頭を抱えてる俺の顔を、ラナが下から見上げてくる。
ラナについての記憶を思い出してみる。
「 元半エルフで、出身地はスリスター。 って言うか、気が付いたらスリスターに居た 」
コクコク頷いてるラナ、ここまでは合ってるらしい。
「 俺がコッチに来て閉じ込められたとき、最初にご飯を運んでくれた 」
合ってるらしい。
「 で・・・ 」
ラナに関する記憶は、忘れてることも合ったが間違いは無かったから一安心だ。
ラナにも質問してもらったが、問題無く答えられた。
前にも似たようなことやってるが問題無かったし、記憶の混乱は進行していないようだ。
脳内の記憶は一塊では記憶されない、脳内神経を通じて関連のある細胞が連続することで記憶を形成する、らしい。
俺が、『 ラナは 』 『 とても 』 『 信頼できる 』 と記憶を持っていても、『 信頼できる 』 の部分の細胞をマリオンが持っていなかったら、記憶は失われる。
仮にそこに細胞が在ったとしても、たまたま別の情報が記憶されていたら?
『 敵らしい 』 とか、『 疑わしい 』 とか 『 美味しい 』とかだったら?
「 ラナはとても美味しそう、か? 」 何のこっちゃ。
余計に頭が痛くなってきた。
頭を抱えている俺の視界が、肌色で一杯になった。
「 よろしければどうぞ 」
赤くなったラナが俺の前に腕を出してる。
「 食べないからな!? 」
そんな趣味は無い。
んでも、何故かラナがショックを受けてるから、今晩あたり一噛みしておこう。
「 ラナは俺の味方でいいんだよな? 」
「 はい 」
ラナが優しく抱きしめてくれた、この記憶もあってるらしい。
「 今度は、どこまでもご一緒します。 波乱様 」
ラナは温かい、俺はどんな記憶を失ったんだろうな。
|||||
「 それにしても、男の子の身体で良かった。 これが女の子の身体だったら最悪だ 」
「 そうなのですか? 」
「 だって、ほら。 自分の身体に、記憶では有るべきものが無かったり、無いはずの物が有るんだぞ? 」
「 そうですね・・・・・・在るはずの物が無い。 私も経験したことが在ります 」
「 経験した? それって、どういう事だ? 」
ラナは戦闘中に脚を失ったんだが、しばらくすると時々無いはずの足が痛んだんだと。
激痛で、夜中に目が覚めた事も在るんだそうだ。
「 幻肢痛か 」
「 はい、白川様もそう言っておられました 」
事故なんかで失った、もう無い腕や足が痛むことが在る幻肢痛。
外科的には対処できない痛みだそうだ。
対処できるのはペインクリニック、完全な対処療法だが痛みは何とかしてくれる。
「 もう今は、痛むことは在りませんけど 」
ラナはメイド服のスカートを持ち上げて、2本の脚を見せてくれた。
傷跡1つない綺麗な脚になってる。
「 痛みが無くなって良かった 」
ポッドから降りて、綺麗になったラナの脚に触れる。
「 脚を失っただけで痛みで飛び起きるんだな。 男に在るはずのない内臓がお腹の中で動いたら、最悪だな 」
想像するだけで、気持ち悪くなりそうだ。
「 本当に男の子の身体でよかったよ。 女の子の身体だったら、お腹の中にエイリアンでも居るんじゃないかって、自分でお腹を切り裂きたくなりそうだ 」
考えただけでゾッとるする。
「 エイリアンですね?! 白川様から聞いたことがあります! 」
白川さんは、この世界の体内に寄生する魔物を警戒してたんだと。
ラナの話では、今も昔もそんな魔物は居ないんで心配は要らないそうだが。
「 ライブラリに、似たような映画が在りました 」
「 お~。 んじゃ、今晩の映画鑑賞はそれを観よう 」
「 はい、波乱様 」
|||||
「 それで何の用ですかね? 」
今日も女王から、『 連絡が欲しい 』とマリアさんに伝言が在ったそうで。
俺の優雅で貴重な食後のひと時を、女王との話で浪費している。
さっさと終わらせて、エイリアンもどきを皆で観るんだ。
『 お2人に、3か月後に開催される五か国会議に参加頂きたくて、連絡しましたの 』
お2人? ってのは、俺とラナのことか。
『 波乱様には、魔素が減っていることの説明をお願いしたいと思いまして 』
ラナは起きてる時には出席してたみたい・・・・・・だな。
ちらっと見たら、小さく頷いてるし。
「 説明だけなら問題ない、出席しよう。 何とかしろって言われても無理だけどな 」
『 さすがにそこまでの無理は申しません。 出席して、説明して頂くだけで充分です 』
マライアがモニターの裏側で、早く通話を終わらせろってゼスチャーしてる。
ポテトチップが山盛りになったボウルを持ってる。
「 了解した。 詳細な日程が決まったら連絡して欲しい 」
『 ありがとうございます。 詳細については、後程書面にてお届けします。 それと、王城と施設の直通エレベーターを作って頂きたいのですが? 』
女王が、ニッコリ笑って無茶ブリしてきた。
通話終了しようとした手が止まっちまった。
誤字脱字の連絡、読後の感想などありましたら、よろしくお願いします。