緊張とお出迎え
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしいが、情報が足りないんで集める方法を探した。
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衛星管理所を探し始めて3日目、王都の北側の森にそれはあった。
地上部分がマルッと無くなってたが、それは想定内だ。
問題なのはエレベーターシャフトに詰まった土、100m下までギッシリ詰まってるんだよな。
「 ラナ、これ地魔法でどうにかならないか? 」
「 国中から地魔法使いを集めたら、2ヶ月ほどで何とかなると思います 」
「 2ヶ月か、それならゴーレムの方が早そうだな 」 と言う訳で施設に逆戻り。
掘削用のゴーレムと、垂直式の土砂搬送装置を設計したんだが、問題は動力源。
魔石タイプだと完全にパワー不足だ。
短時間なら動かせるが、魔石を交換してる時間の方が長いんで効率が悪すぎる。
魔素炉タイプならいけるんだが、ゴーレムは修理して返却済みだから手持ちに魔素炉はない。
魔星の欠片があれば、魔素炉は作れるんだが。
再起動できなくなるリスクがあるんで、施設にある魔星の欠片から新しく作る気にはなれない。
「 テシ山のゴーレムのやつを取りに行くか 」 面倒だけど。
ゴーレムのシミュレートを終わらせて、ソファーの上で体を伸ばす。
モニタ上に表示されてるのはシミュレートの結果、魔石だと15cm以上の大きさが必要なんだと。
2.5cmでも貴重なのに15cmって、いつ見つかるんだって話だ。
「 テシ山に行かれるのですね。 でしたら、マリア様のお迎えも出来ますね 」
「 マリアさんのお迎え? 」 なんのこっちゃ?
「 マリア様は、ディスタンドにお戻りになると訊いています 」
ベッドメイキングしていたラナが手を止めて、ソファまで来る。
AIに任せれば良いと思うんだが、毎日やってくれてる。
まぁ、毎日一緒に寝てるからなんだろうけど。
「 マリアさんが戻るってどういうこと? 」
「 波乱様を発見して保護した功績で、本家の一員として迎えられるそうです。 新しいお屋敷も、王都に用意されるとか 」
ラナはソファに座ると、俺を膝の上に乗せて抱きしめる。
「 マリア様が保護しなければ、波乱様は亡くなっていた可能性があります。 功績には褒美が必要です 」
マリアさんが貴族だってのは知ってた、5氏族の出身だってのも訊いた。
んでも、ディスタンドの貴族だとは思わなかった。
ディスタンドの貴族としてスリスターに駐在してる、駐在官みたいな立場だったらしい。
勇者の休息所を守るためだけに派遣された駐在官、凄いな勇者って。
「 そうだな。 んじゃ、タイミングを合わせてテシ山に行くとするか 」
「 はい、波乱様 」
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「 魔石の欠片の収納完了だ。 お疲れラナ 」
「 お疲れ様でした、波乱様 」
防護服改の上半身だけ脱ぐ、開放感が良い感じだ。
空調完備だから汗をかいても直ぐに乾くけど、汗は水だけで出来てるんじゃない。
塩やら何やらは残るから、長時間着てるとどうしてもな。
いっその事、液体で満たしちゃうって手も在る、緊急放出弁を付けとかないと溺れそうで怖いけど。
ラナも上半身だけ脱いでる、下着姿なんだが気にしてはいない。
ここにいるのは俺とメイドさん達だけだし、ラナは昔から俺の前では平気で脱いでたし。
テシ山のゴーレムから魔石の欠片を取り出して、専用ケースに格納した。
んでもって、更に大きなケースに入れて2重に保護した。
結構な量の魔素が残ってたんで、身体への影響を考慮した。
一応、防護服を改良したしモロモロ影響は無いと思う。
改良版の防護服の魔素の透過率を測定したが、測定限界を下回ってたし。
「 波乱様、ラナ様。 湯浴みの支度ができております 」
近づいてきたメイドさんが教えてくれた。
魔星の欠片の回収には、5氏族からもお手伝いに来てくれてる。
護衛兼お世話役なんで、俺は何もしなくても良いってのは楽だ。
ラナと一緒に風呂馬車に移動する。
俺達はゴーレムの在る所、鉱山の底まで下りてたけど本隊は地表で待機してもらった。
何が起きるか判らないし、全員で降りたり上ったりはムダだからな。
「 それと、あと1時間ほどでマリア様が到着されると、連絡が御座いました 」
「 スケジュール通りだな。 んじゃ、チャチャッとお風呂に入りますか 」
「 はい、波乱様 」
メイドさん達にお礼を言ってからお風呂に入る、仕事をしたメイドさんにお礼を言う貴族はいないらしい。
こういうところが、変人って言われる原因なんだと。
俺らしくて良いって、ラナは言ってくれるけど。
風呂上がりにアイスコーヒーを飲みながらノンビリ、マリアさん達はまだ到着してない。
魔道具のエアコンは熱交換タイプじゃないんで、外でローカルで使えるのも利点の1つ。
単なる、冷風機とも言えるんだが。
「 波乱様、到着されたようです 」
ラナが教えてくれたけど俺には判らん、姿は見えないし音も聞こえない。
んでも、ラナが言うことだから間違いないだろう、立ち上がってお出迎えする。
細長いカーペットみたいな物が地面に置いてあって、ここで止まるから端っこで待っててくれって。
カーペットの左右には、メイドさんからコスチュームチェンジした騎士が整列してる。
「 なんでこんなに警戒してるんだ? 」 マリアさんは要注意人物なのか?
「 波乱様、これは儀礼的なものです 」
「 儀礼的ね~ 」
3人に合うのは3か月ぶり? か、片道で3週間位かかったし。
やっと俺にも馬車が走って来るのが見えた、馬車を曳いてるのは俺が作りなおしたゴーレムの馬だ。
ゴーレムが曳いてるのも俺が作った馬車だな。
「「「 波乱様! 」」」
カーペットのペット端で待つ、メイドさん達が止めるけど無視だ。
家族に会うのに必要な儀礼ってなんなんだろうな。
馬車がスピードを落として、カーペットのところで止まった。
御者の1人が急いで降りてくるが、手で合図して止める。
扉を開けて馬車を覗き込む、中にはチョッピリ着飾った3人の驚いた顔があった。
「 久しぶり。 みんな元気してた? 」
飛びついて来たのはマリアさんとマライア、マルセラはいつもと一緒だ。
家族を迎える礼儀だったら、自分でエスコートするのが一番だって思うんだよ。
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メイドさんが用意してくれたテーブルで、歓談中。
チョッピリおしゃれして、林の中でお茶するのって斬新だと思う。
周りは誰も気にしてないけど。
「 そう言えばリオ、また襲われたんだって? 」
「 スリスターの時と同じだね。 魔道具師と、なんちゃら子爵だか男爵に襲われたよ。 大丈夫、撃退したし、最後はラナが助けてくれたし 」
「 お母様。 残党は全て処分しましたから、もう心配は要りません 」
最初は 『 伝説の勇者様! 』 って緊張して跪こうとしていた3人も、同じテーブルで会話が出来るようになった。
ラナも『 波乱様のお母様 』って緊張していたけど、こちらも落ち着いた。
魔星の欠片は回収したし、今夜はここに泊まって明日の朝、ディスタンドの王都に向かって出発だな。
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