防衛施設の全容
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した。 白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなくちゃならないらしいが、先ずは墓参り。
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5氏族のお宅訪問中に、壊れた魔道具の修理依頼があった。
女当主に連れられてやって来た、広い邸宅にある大きな倉庫、その片隅に眠っていた壊れた魔道具。
「 ゴーレムか 」
「 はい。 馬の代わりに、馬車を曳いていたと記録が残っています 」
かなり昔に壊れたらしい、修理しようとしたんだが出来なかったんだと。
「 アリウムなら修理出来たと思うんだが 」
「 アリウム様でも修理できなかった、と聞いております 」
目立つ外傷は無い、可動部もシッカリ手入れされている。
アリウムでも修理できなかったとすると、内部の故障で間違いないだろう。
魔素炉に関する情報は、ロックして誰にも開示しなかったからな。
魔道具の発展に貢献して、廃嫡を撤回されて女王になったアリウム。
彼女のアイディアは凄かったんだよな、使えない魔道具も多かったけど。
「 そうなんだ。 とすると、魔素炉周りが壊れたか 」
調べようとしたんだが、魔素炉には魔素が残っていなかった、モニタが動かないんで故障箇所も調べられん。
故障してるから自力で移動ができないし、こいつを運べる大型の荷馬車も無い。
仕方がないんで、魔素炉のコアになっている魔星の欠片だけ取り出して持って帰ることにした。
魔素を失った魔星の欠片は、普通に石だな。
施設に帰った翌日から新たなゴーレム作りに着手、新型の設計だ。
用途は馬の代わりに馬車を曳くこと、最新の技術を盛り込んだ馬車も一緒にプレゼントする予定。
「 出力は20倍以上に出来るから、半分に割ってゴーレムを2体作るとして。 防御と攻撃機能も付けて、馬車にも防御機能は付けたいな。 通信機能も在った方が良いだろうし・・・・・・ 」
出力に余裕があるから色々試せる、ゴーレムは馬タイプにして正面突破用の防御力と機動力を持たせたい。
馬車は、軽装甲車両タイプを目指す。
基本設計は、守りつつ走って逃げる方向で。
物理的な装甲を付け過ぎると、重すぎて地面にめり込んじまう。
車輪の幅は広くして接地圧は下げるけど、車輪が地面にめり込んで走れない 『 装甲車 』 じゃ意味は無い。
装甲はそこそこにして空間装甲も採用する、HEAT弾対策だ。
魔法の攻撃がどんなもんなのか判らないんで、両方に備えておくことにする。
あと、魔道具改造で出力を可変できるようにした、ライトシールドの改良版は必須だ。
チャフとSマインの投射装置も付けておこう。
攻撃用のタレットは今回は諦める、どう見ても重量オーバーだ。
気が付くと、ラナがニコニコして俺を見てた。
「 どうしたラナ? 」
「 楽しそうですね、波乱様 」
「 楽しいな、俺は物を創るのが好きだから。 今回は時間も在るし、思いっきりやれる 」
『 重量が10gオーバーだ~ 』 とか、『 あと5mm足りない~ 』 とかで悩むこともない。
ここじゃ自分で全部決められる、予算の制限もないしな。
そうだ、魔石交換タイプのライトシールド改良版も追加で装備して、100倍のシールド張ってやる。
4輪を独立懸架にして、ゴム製のノーパンクタイヤじゃなくて特殊素材を採用する、幅も広げて接地圧を下げよう。
4本スポークで、高速回転時の空力も考慮しよう、それと・・・。
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魔星の迎撃は成功した。
成功したんだが、地上からの光学式の観測だけで、不安定な魔星の軌道を計算できるとは思えない。
改めて考えると、自分で自分がバカすぎて寒気がした。
胃の内側が見たいから胃カメラを作る、腸の内側が見たいから大腸カメラを作る。
かなり無茶苦茶だが気持ちは判る、有効なのも認める。
んじゃ、魔星の様子が見たかったらどうするか、なんだが。
「 あると思ったよ 」
指令室のメインモニターに、迎撃システムの全容が表示された。
システムには地上からの監視施設が3か所、衛星管理所が2か所が含まれている。
こちらの世界の文明は地球より進歩してたから、無いほうが不思議なくらいだ。
ソルからの脱出も考えていたはずなんだが、恒星間宇宙船は無いようだ。
全てのリソースを、転移魔法陣につぎ込んだんだろうな。
指令室の椅子には、飲み物用のホルダーを取り付けた。
施設で使ってるのは電気じゃなくて魔素回路だ、コーヒーを零しても壊れない。
壊れないけど、拭き取らないとベタベタはする。
「 波乱様、これは!? 」
ラナが俺の後ろから聞いてくる、正確には斜め後方で上方だ。
俺がここに来てからラナが俺から離れることはない、今も俺を膝の上に抱きかかえてる。
「 これが防衛システムの全容だ。 ここは、システム全体をコントロールする場所だった、ってことだな 」
コーヒーを飲む。
この部屋のオペレータ用の椅子が多かったのは、システム全体を管理するためだったと。
それなら納得だ。
「 各施設のステータスを表示しろ 」
『 全施設オフラインです。 ステータスを表示できません 』
「 何千年もメンテナンスしてないんだから、そりゃ無理だよな 」
地上監視所は光学式の監視所だ、衛星管理所は衛星からのデータを監視していたと。
衛星の打ち上げもやっていたのか? その割には敷地が狭いんだが。
「 波乱様。 『 えいせい 』 とは、何なのでしょう? 」
「 ソルの周りを回ってる、小さな星みたいなもんだな 」
「 小さな星ですか? 」
ラナはイマイチ理解出来ていないみたいだが。
ソルの静止軌道上に12機の衛星を配備して、魔星なんかの監視をしていたらしい。
「 衛星監視システムの詳細を表示しろ 」
『 表示します 』
パネルに、衛星による監視計画が表示される。
衛星に搭載されたセンサーで魔星を監視していたらしい。
「 打ち上げは・・・・・・、打ち上げじゃ無いな、転移か。 これは使えるな。 場所は・・・・・・どこだ? 」
衛星の軌道へに投入は、転移の魔法陣を使うらしい。
衛星軌道上まで転移して、衛星のスラスターを使って所定の軌道に投入するんだと。
で、衛星管理所の設置場所には、見た事の無い山脈が在る、場所はどこだ。
「 ここは、南西の海の上になるのでは? 」
「 海の上の山脈? 」
ラナが施設の一つを指さす、王都を基準にするとそっちになるらしい。
数千年前の施設が、何も変わらないで海の上にあるとは思えないんだが。
「 現在の地図と重ねて表示しろ 」
『 表示します。 現在の地形は、光学観測可能な範囲のみとなります 』
「 ・・・・・・見当たりませんね 」
「 無いね。 地殻変動で海に沈んだな、これは 」
コーヒーを飲む、豆の種類は判らないけどコーヒーだ。
そのうち、コーヒーのデータを弄って、自分好みに味を変えてみよう。
衛星管理所の在るべき場所には何もない、海と波は在るけどな。
観測施設は後回しで良いだろう、先に何とかしたいのは衛星管理所の方だ。
白川さんの予言では、世界に何かが起きてるらしい。
一口に世界っていっても、かなり広いんだよ。
使えるものは使わないとな。
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