現状確認と墓参り
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した、停滞場フィールドで寿命を延ばしていたらしい。
白川さんの予言では、俺とラナが世界をどうにかしなきゃいけないんだと。
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ディスタンドの施設に着いてから、俺がやり始めた事は2つ。
1つは現状確認。
俺は周りより約5000年遅れてるからな、先ずは情報収集だ。
国境線が変わったとか、国の名前が変わったとか、くっついた分裂したなんて細かいことは無視だ。
地理や歴史の勉強なんて、するつもりは無い。
記録では、俺がいなくなってから千数百年間は、魔道具の全盛期だったらしい。
次々に新しい魔道具が開発されて、魔物との戦いに、日常生活に活用されたんだと。
その間も、豊富になった魔素を利用した魔法の研究は続けられていたと。
魔法は更に研究が進み、どんどん大出力化したようだ。
んで魔道具は、魔素を供給する魔素源が追いつかなくなって徐々に衰退。
特に魔石タイプは、大きい魔石が取れなくなってきて早めに廃れたと。
やがて魔法全盛時代に突入する、魔法全盛時代は2000年を超えたが、こちらも徐々に衰退。
原因は魔素濃度の低下らしい。
魔道具期 → 中間期 → 魔法期 → 現在 で、約5000年経過したんだと。
「 こちらが、大会議室になります、5年毎に開催される5ヶ国会議で使用されます。 次が謁見の間で御座います 」
ラナと一緒にお城の見学会、建て直してからまだ1000年だそうだ。
ハイエルフらしく保守的なデザインなんだとか。
城の見学会をやってるのは、女王がまだ政務中で会えないんで、その暇つぶし。
「 ・・・・・・なるほど? 」
絵画や彫刻は某有名作家が作ったんだと、題材は英雄戦記が多いとか。
ラナや白川さん達が魔物と戦ったやつだな、俺の子供達も戦ったらしいんだが。
美術品の価値は俺には判らん。
「 女王様がお会いになるそうです 」
訳わからん彫刻の説明を受けてると、メイドさんが呼びに来た。
これで、美術品鑑賞会から脱出できる。
「 おじい様、お待たせしてしまいまして申し訳ございません。 政務が長引いてしまって 」
「 急に押しかけて悪いね 」
女王に案内された先はバルコニー、お茶をご馳走してくれるらしい、俺はコーヒーだが。
ラナは持ってた箱を床に置いてから俺の隣に座る、箱の中身は通信の魔道具だ。
「 それで、御用事とは何でしょう? 」
「 お願いされた魔道具が完成したんでね 」
持ってきたのはアリウムが創った通信の魔道具の改造版が4台、スマートフォンを4枚重ねた大きさになってる。
薄くなってるけど箱だ、アリウムの魔道具のデザインは基本的に箱だ。
通信の魔道具は、大きい魔石が取れなくなって使われなくなったんだと。
だから、小さな魔石でも稼働するように、魔道具改造の技術で出力を4倍にした。
その分通信可能時間が1/4になったけど、王城から王都内全域を余裕でカバーできる。
重要なのは、小さな魔石で稼働するようになったことだな。
「 これなら、安い魔石で充分ですね 」
とラナが言ってた。
上手くいったんで、俺とラナの連絡用の魔道具を作ってたんだが、女王に見つかった。
んで、『 私も欲しい 』 って言ってきた。
俺とラナが選んだのは腕時計タイプ、俺が最初に設計した物より小型で高性能になってた。
魔道具もそれなりに進歩してた。
通話距離は箱型より若干短いが、腕に付けるんで落とす心配が無い。
俺がしていた腕時計より一廻り大きいけど、魔石を半埋め込み式に格納することで、これでも薄くなってるんだと。
「 ありがとうございます、おじい様。 全部で4台? ですか? 」
「 必要ならまた作るから。 この1台だけは、俺とラナにも連絡できるようにしてある 」
「 それでは、これは私が使うこととします 」
俺とラナに連絡できる魔道具は、女王が使うらしい。
操作は簡単な楽々スマホ式で、画面の通話先をタップするだけ、ナンバー式ではない。
必要な魔石もゴブリンから出る魔石より少々大きいだけ、在庫はタンマリあるんだと。
「 それで、1つお願いがあるんだ 」
「 お願いですか? なんでしょう? 」
「 調査のための人手を貸して欲しいんだ 」
「 人手ですか・・・・・ 」
調べたいことが、色々あるんで手が足りない。
通信機能の向上も、人手不足解消の一環だったりする。
「 エルフではダメなのですか? 」
「 ん? 」
「 人では無くて、エルフではダメなのでしょうか? ハイエルフを派遣してもよいのですが? 」
「 ・・・・・・ラナ、これは? 」 女王を指差して聞いてみる。
「 表裏の無い、聡明な方です 」
「 アリウムの血が入ってるな、間違い無く 」 天然か? 養殖か?
「 はい。 波乱様の血も、引き継いでおられます 」 頭痛が痛くなってきた。
何のことでしょうと首を傾げている女王、蹴飛ばしたらダメだろうか。
人手ではなく、エルフ手を貸して頂けることになった。
去り際に女王にグリグリはしておいたけどな、泣きながら笑ってたから不敬罪ではない。
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2つ目にやったことは墓参り、メイドさんズの墓参り。
子供達の墓は英雄の丘にまとめて祭られていて、今では観光名所なんだと。
スケジュールを調整して貸し切りにするから、チョット待って欲しいって言われた。
墓参りの当日、神殿の前に用意されてる馬車に乗り込む前に、ラナが訊いてきた。
「 波乱様、どちらの家から回りますか? 今日から順番に訪問すると連絡はしてありますが 」
「 近い順だな 」
爵位順とか家の格式順とか、俺には興味ない。
メイドさんズみんなに助けてもらった、全員に感謝しかない。
「 では、そのように 」
ニッコリ笑うラナと一緒に馬車に乗る。
どの家も大きな屋敷だった。
防衛戦で活躍して爵位をもらった長男や長女が、母親と一緒に暮らしたんだと。
メイドさんズが、子供と一緒に幸せに暮らしたと聞いて一安心。
どの屋敷でも魔道具がふんだんに使われていたんだが、やっぱり大きい魔石が不足気味なんだとか。
「 市場には滅多に流れないんで、入手するのが大変なんです 」
「 とりあえず、小さな魔石でも動くように改造しておくよ。 魔石の取り付け部分の改造は、魔道具師に依頼してくれるか 」
「 判りました、そのように 」
屋敷中の魔道具を出来る範囲で改造して、出力可変タイプにした。
動かない魔道具を飾っておくより、短時間でも動く方が良いからな。
何かで魔石が壊れても、小さな魔石だったらすぐに替わりが用意出来る。
ムダに明るかったり、ムダに早かったり、無駄が多い魔道具は全部出力可変式に改造しておいた。
小さな魔石でも問題無く稼働する、省エネは重要だ。
どの家でも歓迎してくれたんで、施設に戻ったのは6日目の昼近く。
各家で1泊したんで、王都内5泊6日の旅になっちまった。
エレベーターの扉が開き、施設内を歩く。
「 ラナ、ありがとうな。 一緒にいてくれて 」
「 波乱様? 」
「 ラナだって、子供と一緒に暮らしたかっただろ? 何か巻き込んじゃって、子供と離ればなれにさせちゃったな。 ごめん 」
「 いえいえ。 息子とは一緒に暮らせましたし、最後も見送れました 」
俺とラナの子供は、人族に近い寿命だったんだと。
チョビットだけ長生きだったらしいが、それでも150歳で老衰で亡くなったと。
「 波乱様に断り無く、子供を作ったのは私達です。 それに・・・・・・ 」
「 それに? 」
「 波乱様達を、こちらの世界の都合に巻き込んでしまったのは私達です。 波乱様が、お謝りになることではありません 」
「 そうだな。 ラナ達って言うか、防衛システムがやったことだな 」
「 ・・・・・・ 」
「 白川さんの予言もあるしな 」
無言で歩く。
過去に忘れ物があるのは、2人とも同じか。
「「「 お帰りなさいませ 」」」
居住区に着くと、5氏族のメイドさん達がお迎えしてくれる。
「 ラナ。 これからもよろしくな 」
「 はい、波乱様。 最後までお供します 」
それにしても、地下3階まで歩くのはそれなりに面倒だな。
階段はアレだけど、階層内の移動用としてカートでも作っておこうか。
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