嫌われし者
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した、停滞場フィールドで寿命を延ばしていたらしい。 防衛施設で一泊。
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ラナ・波乱、それがラナのフルネーム。
現在のディスタンドには、白川さんと河原君が導入を進言した戸籍システムが存在している。
人頭税を廃止し、戸籍がある場合は治療費をほぼ無料にする施策で、戸籍登録を推進して成功したんだと。
白川さんの治癒の力と、治療の魔道具が在ったから成功したみたいなもんだが、とにかく戸籍システムがある。
んで、ラナの子供の父親なんだが、戸籍上は俺、生物学上も俺。
つまり、俺とラナは結婚していたことになってる、戸籍上ラナは俺と結婚して子供を産んで、夫が死亡して現在未亡人。
メイドさんズの5人が生んだ子供の父親も俺、戸籍上の父親も俺、全員 ”波乱” の姓を名乗っているんだと。
俺は知らないうちにハーレムを作っていたらしい。
んでも、4800年前の話で、全く実感が無いんでリアクションの取りようがない、
謝るラナに気にするなって言っておいた。
翌日、食堂でラナとクロエさんと3人で朝食を食べてると女王様がやって来た、侍女もいる。
「 では、あなたが波乱様の生まれ変わりなのですね? 」
「 どうでしょうか。 記憶は持っていますが、本人かと問われてもどうお答えして良いのか、判りかねますね 」
元の身体のDNAは、これっぽっちも持って無いしな。
本人なのか別人なのか、詳細は神様か倫理委員会にでも聞いてくれ、俺は知らん。
「 直ぐに全員揃うでしょう。 そのままお待ち頂けますか? 」
白川さんの子孫と河原君の子孫、それと5氏族を呼びつけたんだと。
『 頂けますか? 』 って言ってるけど実質的には命令のつもりだろう。
まだ朝飯食べてるし、いちいち逆らうのも面倒だし、少しくらいなら待ってもいい。
この後、クロエさんの旅の準備もしなくちゃいけないんで手短にお願いしたい。
「 これで、全員揃いましたね 」
女王様が食堂を見渡しながら話し始めた。
施設の食堂は、数十人が食事をすることを想定した設計になってるんで結構広い。
今、食堂には3つのグループが存在してる。
一つは白を基調とした神官服を着た女性と、それを縮小コピーした様な女の子の2人組。
もう一つは、くたびれたおっさんと金色の全身鎧を着た青年の2人組、目立ってるのは金色鎧の奴、偉そうな態度なのも金色の鎧の奴。
最後はメイド服の団体さん、俺とラナの後ろに5氏族の10人が並んでる。
「 始めましょう 」
「 はい、女王様 」
神官服の女性が銀色の立方体を俺に手渡した、一辺が10cmほどのメタリックな箱だ。
「 これは? 」
「 映像記録の魔道具です、キューブと呼ばれています。 この中には、初代聖女様が遺したお言葉が記録されている、と言い伝えられています 」
箱だ、箱をひっくり返しても箱だ、スイッチも何もついていない。
魔道具らしいからとりあえず魔力を流してるが、ぼんやり光るだけで変化無し。
「 見なさい。 やはり偽物で決まりですね! 」
金色の兄ちゃんが何か言ってるけど無視だ。
魔道具らしいから、ちょっと潜ってみるか。
「 ラナ 」 ダイブの準備だ、ステータスを表示する。
「 はい、波乱様 」
ラナが椅子から立ち上がって俺の後ろに回り込む、倒れても支えられる位置にスタンバイしてくれる。
この身体は健康体だ、レベルも上げた、MPは充分ある。
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手に持ったキューブにダイブする。
目に映る物から色が無くなり、真っ白な背景に浮かんでくる魔法陣。
魔法陣は少しずつ崩れ、見慣れた図形と文字のフローへと変換される。
スタートから始まって魔力パターンの入力待ちループ、魔力が入力されたら記録されてる魔力パターンとマッチング。
記録されてる魔力パターンは誰のだ? 判らないな。
魔力パターンが合致したら今度は音声入力待ちのループだ、キーワードは・・・・・・なるほど、白川さんらしい。
魔力パターンとキーワードが合致したら、記録されてるメッセージを再生すると、2重のロックが掛かってるのか。
記録されてる魔力が誰のかは判らない、さっき魔力を流してみたがロックが外れる感じが無かった。
となると俺のじゃない、面倒だからフローを変更しておくとしよう。
スタートから魔力パターンのループへ伸びてる線を分岐して、音声入力のフローまで引っ張ってバイパスする。
こうしておけば音声入力だけでもロックが外れる。
ステータスを確認するが魔力まだまだ余裕がある、ついでに記録映像を見ておくことにする。
記録を再生すると、白川さん? らしいばあちゃんがソファに座ってる。
背景を見ると、どうやら施設の中で記録されたようだ。
『 波乱さん、お久しぶりですね。 あなたが戻ってくるのは判っていましたが、何だか不思議な気分です 』
白川さんも随分老けたな、完全におばあちゃんじゃないか。
ああ、記録データの中にチョット細工がしてあるな。
『 この記録は、私の子孫に大切に保管するように言ってあります。 あなたが戻ってきたら、確実に手元に届けるようにと。 ・・・・・・波乱さん、先ずはお詫びをさせて下さい 』
白川さんはソファから立ち上がり、ユックリ、そして深く頭を下げる。
『 この世界を救う選択は、あなたの命を奪う決定でもありました。 あの決定は私と河原君のワガママでした、本当にごめんなさい 』
そう言えば訊こうと思って忘れてた、白川さんは気が付いていたのか。
『 私も河原君も、こちらで家庭を持つことが出来ました。 幸せだったと。 今なら、いえ、この歳なってあなたの気持ちが判りました。 私も家族のためなら命を投げ出せる。 あの時、元の世界に私の家族が居たら・・・・・・、私もあなたの決定に賛成したと思います 』
気が付くのが遅すぎると思うよ、白川さん。
完全に手遅れだ。
『 あなたは全てを捨てて、ソルを護ってくれました。 私達がやったのはソルを維持する事だけ。 いえ、それすら出来ないでしょう 』
その先しばらく記録を見て、俺は途中でダイブを中断した。
「 でぇーい 」
立ち上がってキューブを床に叩きつける、んで、踏む踏む、踏みつける。
どうやら俺は、この世界に嫌われているらしい。
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