有給休暇なら良いんだが
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・色々あったディスタンドへの道中でラナに再会した、停滞場フィールドで寿命を延ばしていたらしい。 白川さんは女神として神殿で信仰の対象になってた。 白川さんの墓参りをした。
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「 中は変わっていないな 」
「 波乱様の設計されたシステムは、1度も不具合を起こしていません。 完璧に作動しています 」
俺は施設での療養期間に、ゴーレムを利用したメンテナンスシステムを構築しておいた。
施設を永続的に使用するために。
ラナによると不具合も無く運営できてるみたいなんだが。
となると、ラナが起こされたエラーって何なんだって話なんだが。
パッと見て変っていたのは水耕栽培プラントで栽培してる植物、元から在った植物は外では絶滅したと。
だから外に生えてる植物で、似たような効果のある植物を探して植え替えたそうだ。
ラナと話しながら、手を繋いで施設を進んでいく。
「 そりゃ、いるよな 」
B5Fに5台並んだポッド、その中央の1台には俺がいた。
ポッドの側まで来るとラナは繋いでいた手を放す、ラナが見せたかったのはこれか。
そういえば、送り返せなかったって言ってたしな。
ポッドの足場に乗って中を覗き込む、また身長が足りないからな。
ポッドの中には昔の俺がいる、髪には白い物が混じっていて顔にはシワとシミもある。
「 おっさんだな~ 」
こうやって見ると、自分で思ってた以上におっさんしてる、目の下にはクマが張り付いてるし、げっそり痩せてるし。
それより目立つのが腕が一本無いことだ。
「 魔王が右手から浸食を始めたので、切除しました 」
俺の視線に気が付いたラナが説明してくれた。
ラナによると、2人っきりの時にミューティションが始まったらしい。
誰も被害者がいないなら良しとしよう、映像が残っているか後で確認するとして。
「 そうか。 その時ラナは怪我しなかったんだよね? 」
「 はい、大丈夫でした 」
「 俺は魔王だったんだろ? ホントにケガは無かった? 」
「 一撃でしたので 」
ラナの脚を奪ったのは、魔王になった俺だと思ったんだが。
俺は弱い魔王だったのか、一撃でやられるとは情けない。
「 ポッド3の物体を素粒子レベルまで分解、その後 『 よろしいのですか? 』 」
ラナが俺とポッドの間に割って入ってきた。
「 いいよ。 こいつには無理させたからな、休暇をやらないと 」
ホントに使い倒したからな、奥歯は全部作り物だし。
虫歯になった訳じゃない、食いしばってたら欠けたり割れたりして、気が付けばボロボロになってた。
おじさんは色々と大変なんだよ。
今さら元の世界に送り返しても、もう誰も待ってはいないだろうし、このまま保管しておく理由が無い。
それにだ、何時までもラナを俺のワガママに付き合わせたくはない。
「 それともラナは、俺の中身より身体が好きなのか? 」
「 そんなことは! 」
「 『 身体が好き 』 なんか、エロイ響きだな 」
「 私は! 私は、波乱様の魂の匂いが好きなんです! 」
ラナが俺に抱き付いてきた。
んでも、それは髪の毛の匂いな、俺の魂はそこには無い。
「 ポッド3の物体を素粒子レベルまで分解、その後は大気中に放出 」
『 処理を実行します。 体内に分解不能の物質があります 』
「 分解不能? 材質と大きさは? 」 おかしなものを食べた覚えは無い。
『 材質不明、大きさはおよそ30mm 』
ラナが俺の顔を覗き込む。
「 波乱様。 変な物食べませんでしたか? 」
とりあえずラナの頭をグリグリしておく、ポッドに入るための足場に乗ってる今なら届く。
「 ポッドの中で死んでるのに、どうやって食べるんだ 」
「 痛い! 痛い! 」
ラナが嬉しそうだ、いつの間にかソッチ系に目覚めたのか?
偏頭痛の時はこの辺をマッサージすると楽になる時もある、だからコレは体罰じゃ無い。
「 おかしな物質だけ残して処理を実行しろ 」
『 実行します 』
徐々に消えていく俺の身体、おっさんの最後なんてこの程度で充分だ。
見送ってくれる人がいればいい、それ以上は贅沢ってもんだ。
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「 波乱様 」
俺は代から床へ飛び降り、歩き始める。
「 さて。 そろそろ戻ろうか 」
「 波乱様! 何か在ります! 」
ポッドに背を向けて歩いていた俺を、ラナは後ろから抱き上げる。
そのままポッドへ直行だ。
「 波乱様! 」
ポッドを指さすラナ、俺にも見えている、見えてるけどな。
「 いいかラナ。 世の中には警告色ってのが在ってな、ああいう色の物は危険が危ないんだよ 」
ポッドの中央には30mmの怪しげな色の球体が残されてる、分解できなかった物質だろう。
どう見ても触らない方が良さそうだ。
「 それにな。 人は ”残念”って言って、やり残した事とか未練とかをこの世に残すこともあるらしい。 あれは多分それだ。 そんなのに関わったら祟りがあるぞ 」
後で海の底にでも沈めてやろう。
「 大丈夫です! 」
「 大丈夫って何が? 」
「 波乱様ならアレに触っても大丈夫です 」
「 だから触らないって 」
逃げようとする10歳の俺と、押さえ込もうとするラナ。
ここに第三者がいれば通報案件だぞ、通報されるのは俺かも知れないけど。
「 大丈夫です! 勇者のカンが、大丈夫だと言ってます 」
すごいな、勇者のカンって喋るんだ。
ラナと揉み合っても敵うはずも無く、渋々球体を手に取った。
手の平で溶けて消えていく変な球体、何か在ったらポッドに飛び込もう。
「 波乱様? 」
「 何ともないな 」
とりあえずステータスを確認する、魔道具操作の技術が戻って来てた。
スキルは魂が、技術は身体が覚えてるんだな、でも戻ってくるなら魔王も欲しかった。
その後、俺とラナをポッドでフルスキャンする。
俺は異常無しだったがラナはアチコチ傷だらけ、片脚が義足だし。
「 では波乱様、しばらくお待ち下さい 」
「 わかったよ 」
「 ・・・・・・ホントにですよ? 何処にも行かないで下さいね? 」
「 トイレ以外はここを動かないよ 」
「 ホントに何処にも行かないで下さいね? 絶対ですよ? ホントに・・・ 」
ラナがなかなかポッドに入らない、軽くパニクッてるのか、それとも単に心配なのか。
「 ではこうしましょう! これを持っていて下さい 」
持ってろって言うなら持ってるけど。
「 これが無いと、下着だけでみんなの前を歩くことになります。 すごく恥ずかしいんですからね? 判りますよね? 」
「 判った。 下着姿のラナを皆には見せたくないからね、ここで待ってるよ 」
やっぱり軽くパニクッてるな、ここには俺達2人しか入れないんだが。
まぁ長い間待っててくれたからな、これからはラナの望みも叶えてやらないと。
ラナからメイド服を受け取りポッドの足場から降りる。
「 じゃあ始めるよ、ラナ 」
「 はい、波乱様 」
ラナが横になるとポッドのハッチが閉まる。
「 ポッド2の治療を開始しろ、脚の再生と傷の治療、傷跡も全部消すように 」
『 治療を開始します 』
終了予定は54分後、その間過去の映像を確認しておこう。
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