闇夜の黒エルフ
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少年に召喚され蘇る。 待ち伏せされ戦闘中に鉱山の地下に落ちた、何とか迂回して脱出を試みる。
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地上に出られたのは潜ってから3日目の夕方近く、ひょっとしたら4日目かも。
誰も知らない出口だったらしく出口の上には大きな岩、その岩を削って地上に出た。
地表に出てみると、鉱山を掘ったときに余った土を集めて作った小山が在った。
結局、通路沿いに真っ直ぐ来たつもりが、通路そのものが曲がっていたらしく予想外の場所に出た。
小山に登って周囲を見ると、射撃時の閃光でゴーレム君が健在だと判った、元気に反撃してる。
竪穴の反対側には出られたんで狙いは成功だ、んでも、直ぐに攻撃する気は無いんでしばらく待機だ。
「 まだ、あんなに兵士が居るのね 」
急速に日が落ちる、ゴーレム君のいる上、地上部分をみると幾つもの焚き火が視界に入る。
アベリアが言うには、焚き火の大きさと数でおおよその人数が判るらしいんだが。
「 600~700人かしら。 もっといるかも 」 アベリアは渋い顔だ。
「 チョット行ってくるから、リオはここで待っててね 」
「 気をつけてねクロエさん 」
「 心配しないで。 アベリア、リオをお願い 」
「 ええ、わかったわ。 見つからないようにね 」
クロエさんは闇に紛れて敵陣に向かって行った、闇夜の黒エルフは見えにくいな、アベリアだと見つかりそう。
3日目の事なんだが、クロエさんを見ていてふと思った。
フタコブラクダはコブの中に水と脂肪を貯えてるんで、砂漠でも無補給で長期間活動できる。
女性も同じではないのかなと。
「 母乳は出ないわよ? 出るなら出してあげたいんだけど・・・・・・ 」
「 そんなこと考えてないよ 」
申し訳なさそうに、赤くなってたクロエさんがいた。
「 ・・・・・・出ないわよ? 」
「 そうみたいだね 」
そんな所は見ていない、クロエさんより小さいし期待もしていない。
お堅いアベリアがこんなことを言ったのも、地上に出られた解放感からだろう。
俺もエルフ族も、地下で生活出来るような身体構造にはなっていない。
それに、いつ崩れるか判らない膨大な質量が頭の上にあるのはかなりのプレッシャーだ。
魔道具の補修は穴の入口まで戻って、隠れながら作業して終わらせた。
この3日間、余りまくった魔力を魔道具にチャージしてたから、持って来た魔道具をフルで使用できる。
今の俺達に足りないものは食料と情報、どちらもあいつらが持ってるんで、マルッと吹き飛ばすわけにはいかない。
夕方まで待ったのは焚火で敵の人数を確認するため、それに、食料を頂いてくるのも夜の方がやりやすい。
とりあえず体力温存のためにも寝ておこう、クロエさん待ちだな。
小山の頂上付近にある大きめの石にもたれて目を閉じる、もちろん奴らには見えない場所だ。
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「 リオ。 起きて、リオ 」
「 ・・・・・・ん 」
「 リオ、夕飯をとって来たわ 」 衛星はとっくに真上に来てる。
かなり寝こけていたようだ、それとだ。
「 お帰りクロエさん。 それとあの人は? 」
小山のふもとのアベリアの隣には、銀髪のエルフ族がいるんだが。
クロエさんと手を繋いで小山を下りる、今日はケイオスとエルテア、2つの衛星が出てるんで明るい。
2人に近づく、銀髪のエルフはクロエさんと似たような服装をしている、アベリアはいつの間にか着替えてるな。
何処から着替えを調達したかは、後から聞いてみよう。
「 冒険者? 」 彼女は少なくとも兵士じゃ無い。
「 クロエ、この子が危険人物なの? 」 誰だこいつ。
「 始めまして。 超危険人物のマリオンと申します 」
お辞儀もつけておこう、カーテシーは出来無いぞ。
クロエさんが笑ってる、俺も調子に乗り過ぎだ、解放感のせいだな。
銀髪エルフ族の彼女はアマルティア、クロエさんが所属してたパーティーの元リーダーだそうだ。
クロエさんが敵陣で物資を探してる時に、偶然出会ったんだと。
それで想定以上に時間が掛かったのか、話し始めると長そうだ。
「 じゃあ、私達はこの子を狙ってたってことなのね? 」
「 そうなるわね 」
俺はスープにパンを浸して食べてる、温かい食事は久しぶりだ。
チーズはちょっと癖が強い、俺には合わない。
「 あのクレーターも彼が? 」
「 そうよ 」 クロエさんがスープを食べながら答えてる。
アマルティアが引いてるみたいだけど、干し果物の糖分が脳に染み渡る。
「 どんな魔法を使ったのかしら 」 見事なクレーターが出来てるからな。
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ディスタンドとスリスターは長年の友好国同士であるため、慣例として国境は子爵が治めてるそうだ。
今回の出兵は兵士約1200人と冒険者約200人の合計1400名が集められたらしい。
危険人物を国内に入れないため強制的に集められたとか、未知の魔道具を使いスリスターで大量虐殺の罪を犯した危険人物なんだと。
国境には兵士数人+冒険者100人、鉱山には兵士1000人、鉱山と領都の間に兵士200人+冒険者が100人が布陣。
鉱山に配置されたのが1000名の兵士だけだったのは、ここで全てを終わらせるつもりだったらしい。
それを排除しちゃったんで、領都側と国境側から兵力を抽出して鉱山に再配置するつもりなんだと。
「 1400名の兵力が必要な危険人物ね。 俺も出世したな 」
「 1400名の兵士は、子爵家としては全力なんじゃないかしら 」
アマルティアの見立てでは、予備兵力は殆んど無いらしい。
領主の館には若干残っている様だが。
「 って事は、残りは400位か。 ここを乗り越えれば後はどうとでもなりそうだ 」
食後のコーヒーは最高だ、一服出来れば言うことは無いんだが。
「 マリオン君は、まだ戦うつもりなの? 」
「 こちらから仕掛けてはいない。 やられたからやり返す、それだけだよ 」 慈悲は無いけどな。
100倍タイプを3発撃ち込めば、鉱山に居る兵力はほとんど殲滅出来る。
奥に2発、手前に1発、十秒も在れば終わる。
アマルティアの見積もりが狂ったのは、兵士と冒険者の違いが原因だったそうだ。
兵士はまとまって食事をするけど、冒険者はパーティー毎に別れてるんだと。
「 兵力の再配置にはもう少し掛かるわ、あと2日か3日ね。 でも、ほとんどは冒険者よ? それでも戦うのかしら 」
クロエさんの仲間を巻き込みたくは無いけどな、手加減してやられるつもりも無い。
クロエさんがモロモロをアマルティアに説明してる、俺は悪くないんでそこんとこよろしく。
「 そうなの。 それで今回の依頼が、ディスタンドの魔道具ギルドから出てるのね 」
スリスターの魔道具ギルドは解散して、商業ギルドの1部門に戻ってる。
元々、魔道具ギルドは商業ギルドの1つの部門だったが、魔石の売り上げで膨大な利益を上げるようになって勝手に独立、魔道具ギルドを設立したんだと。
それが元に戻った。
んでだ、隣の国の様子にディスタンドの魔道具ギルドが危機感を覚えて、俺を処分しようとしたのではないか。
って言うのが、アマルティアの推測なんだが。
「 とりあえず3日待ってちょうだい。 撤退するように、冒険者仲間だけでも説得するから 」
追加の兵力が無いんなら、3日待つことにはリスクは無い。
その間に体調も整えられるしな、クロエさんの元リーダーに任せてみますか。
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