聖騎士の贈り物
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少歳に召喚され蘇る。 サリナさんの回復のお祝いパーティーに変なおっさん達がやって来た。
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サリナさんが招待したらしいおっさん達は全部で5人、さっき騒いだのは中央にいる小太りのおっさんのようなんだが、見たことは無い。
「 お招き頂きありがとうございます、本日は息子の・・・・・・ 」
一番後ろからこちらに歩いてくる小太りと4人だが、オーディエンスがそれを許さない、10人位のハイエルフが壁を作って行方を遮る。
進めなくなったおっさん達は、その場で大声を出し始めた。
「 息子の魔法契約の件なのですがね! 」 おっさんが何か言ってるな。
「 契約の清算と言っときながら、手ぶらじゃないか 」
サリナさん家のばあちゃんが、おっさん達のさらに後ろ倉庫の入り口から入ってきた。
「 契約の清算なら、金貨と息子の首を持って来なくちゃねぇ 」
ニヤニヤ笑うばあちゃんの笑顔が黒いんだが似合ってるから困る、普段からいつもこんな調子でやらかしてるんだろう。
「 その件なのですがな、契約は無効なのですよ! 」
「 おや、そいつは初めて聞くねぇ。 説明してくれるんだろうね? 」
「 説明が必要ですかな? 商業ギルドのトップのお方とは思えない発言ですな! 」
そうだそうだと騒ぐおっさん4人がウルサイ。
「 では、僭越ながらご説明いたしましょう。 契約書を見せて頂けますかな? 」
メイドさんから受け取った契約書をおっさんに渡すばあちゃん、そのまま破かれたらお終いだと思うんだが。
「 ・・・・・・ふむふむ。 やはり契約は無効ですな。 ここにはこう書いて在ります、『 金貨10万枚とマリア様がお作りになったポーションと、相手の首を受け取る 』 これは不味いですな~ 」
「 それがどうしたって言うんだい? お互い同じ条件の契約だ、問題はないだろうさ 」
「 いえね、『 首 』とは書かれていますが『 血 』の事は書かれていない 」
ニヤニヤしながらこっちを見るおっさん、何を考えているのか。
「 『 血 』を流さずに『 首 』を取る事は出来ませんからな! この契約は無効、いえ! 不完全な契約なのですから賠償を払って頂かないと! 」
右手に持った契約書を左手で叩きながら話すおっさん、俺には何を言っているのか判らんがイチャモン付けてるのは判った。
ばあちゃんがシマッタって顔でこっちを見てるし。
これはあれか、俺のひげは罪を犯していないから切るなって断頭台で言った人の話か、チョットと違う気がするが。
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サリナさんは俺の左腕を掴んでる、右手にはマルセラがしがみ付いてる、マライアは右足にしがみ付きマリアさんは俺の後ろから両肩を抱えてる。
これは俺を守ってくれているんだよな、身動き取れないように押さえつけてるんじゃないよな。
「 マリオン君に責任は在りませんわ、賠償なら私が払いましょう 」
俺の手を抱えるサリナさんの手に力が入った、ばあちゃんは地面とお話し中。
ちょっと待て。
「 一体何の話をしてるんだ? 話が見えないんだが? 」
周りを見渡すと、みんな目を逸らすか悲しそうな顔をする、そんなに不味い状況なのか?
「 ・・・・・・これは聖騎士の贈り物よ 」
「 聖騎士の贈り物? 」
サリナさんが話してくれたのは、昔々のお話。
国民に無理難題ばかり押し付ける、無能な王に聖騎士が挑んだ話。
『 ならばドラゴンを退治して見せよ! さすればお前の言う事を訊き届けようではないか! 』
魔法契約を結ばされた聖騎士。
『 判りました。 それでは 』
聖騎士は剣を抜いてかまえる。
『 ドラゴンを退治して見せましょう。 では王よ! ドラゴンを我が前におびき出して頂きたい! 』
そう言って、彫刻のドラゴンに向き合った。
彫刻のドラゴンが動くはずは無く、偽りの条件で魔法契約を結んだ王は呪いを受けて命を落とし、聖騎士は国を開放し正しき王に王座を継がせた。
「 だからねマリオン君、『 出来ない事 』を魔法契約の条件にしちゃいけないの・・・・・・ 」
なるほど、断頭台じゃ無くてお休みさんの方だったか。
「 偽りの条件ですか。 別に偽ってはいませんが? 」
レーザーメスを使えば何とかなりそうだし、凝固剤で血を固めてもいいし、んでも、それ以前の問題だろ。
「 リオ、なにか方法があるの? 」
「 あるよ、いくつかね 」
緊張が解れたんだろうか、俺を掴んでるみんなの力が緩んだんで抜け出す。
そのまま、おっさん達の方へと歩き出す。
「 血を出さずに首を用意する方法は在ります。 でも、それ以前にですね 」
左右に分かれて道が出来たオーディエンスの中を、ユックリ歩いておっさん達に近づく。
「 それは私がやる事じゃない 」
「 何を言ってるんだお前は? お前がやるに決まっている! 」
「 いやいや。 契約書をもう一度読んでください、『 受け取る 』って書いて在るでしょ? 私は受け取るだけで良いんですよ、用意するのはあなた達だ 」
「 な、何を言っている! 」
「 『 金貨10万枚を受け取る 』とも書いて在りますよね? 受け取るんです、私が 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
ユックリ、ユックリ歩く、おっさん達の顔色が悪くなってきてるな。
「 でしょ? 私が鉱山で鉱石を掘り、製錬して金にして、国王? 国になるのかな? にお願いして金貨にしてから受け取るんですかね? 違うでしょ? 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
「 首も同じ、私は受け取るだけで良いんですよ。 首も金貨も用意するのはあなた達だ 」
小太りのおっさんから契約書をそお~っと奪い返す、もう一度見直すが間違いない、『 受け取る 』だ。
さて、おっさん達はどうするんだろう。
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