かざぐるま
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少歳に召喚され蘇る。 サリナさんの手術は終了して、経過観察中。
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「 サリナさん、お加減はどうですか? 」
「 少し体が重い感じがしますけど、痛みはもうありません 」
部屋には先にばあちゃんが来ていた、息子さんも来ていてベッドの上に乗って何やらやってる。
土足で。
この部屋は土足禁止にしたはずなんだが。
マリアさんちの俺の部屋は土足禁止に改装した、カーペットを取り払ってフローリングになってる。
こちらの世界では土足で部屋で生活してる、何が落ちてるか判らないところを歩いた靴で、トイレに行っても便所スリッパなんて無いのに、そのまま部屋のカーペットを歩く
その上でくつろぐなんて俺には出来なかった、そうすると、カーペットの上は移動するための空間になってしまい空間のムダ使いだし、衛生的にもよろしくない。
今回サリナさんが療養する部屋は、カーペットを剥がしたら大理石みたいな石張りの床だったんで、そのまま使用、1日2回水拭きしてる。
静電気の問題も在る、毛足の長いカーペットだと30~50KVの静電気が発生する、手術中に患者の内臓に放電するのは避けたかった。
確認すると部屋の中に土足で入ってるのは息子だけだから、みんなは守っていてくれてるようなんだが、誰も息子には注意しないのか。
ため息ついてると、アーガイルさんが静かによってきた。
( 排便が少しありました、色は黒。 排尿もありました。 体温が2度高いですね )
( 了解です、解熱剤と抗炎症剤を投与しましょう。 今回はアーガイルさんにお願いしても? )
( 私がやっても良いのですか!? )
腰に付けていた無痛注射器セットを外して、ベルトごとアーガイルさんに渡す、使い方は教えてあるし俺が使ってるところを見学させてたから大丈夫だろう。
今まで無痛注射器は俺しか使ってなかったけど、今後は2人にも使ってもらわないとな、俺は医者じゃない。
「 何をやっているのかな? 」 投与が終わるまで俺は子供の相手だ。
「 折り紙です。 勇者様が伝えたとされているものですよ 」
答えてくれたのはサリナさん、息子は俺を無視か。
「 なるほど、これは手裏剣? 紙鉄砲ですかね? 」
見た事があるような無いような。
「 かざぐるまだよ 」
「 かざぐるまね 」
息子さんが教えてくれた。 なるほど、そういう感じにも見えるか。
アーガイルさんがサリナさんに薬剤を投与し終わった、良いね無痛注射器は。
「 ねぇ、何でこれかざぐるまって言うの? 」
「 形が、かざぐるまに似てるからだね 」
息子さんは納得していないな、これは。
そう言えばこっちの世界には風車が無い、魔石が動力源として存在するからだろう。
「 ちょっと待っててくれるかな、かざぐるま作って来るから 」
倉庫へ行ってチャチャっと作って部屋へ戻る、工芸品じゃないから時間は掛けない。
戻って来ても息子さんは土足のままだ、足跡が部屋に残ってる。
「 これは? 」
「 これが、かざぐるまさ。 こうすると 」
ふーっと息を吹きかけるとクルクル回る2つのかざぐるま、急造品にしては上手く出来たんじゃなかろうか。
「 スゴーイ。 どうやったら回るの? 」 息子さんは大喜びだ。
「 風を当てればいいんだよ。 息を吹きかけてもいいし、持って走ってもいい 」
風車は、魔道具でベアリングを使っている物をチョイスして製造、ベアリングだけ取り出して使用してる。
薄い金属製の板を2枚使って羽にしたが、竹とんぼみたいなんで羽を4枚にした。
んでも、失敗作の扇風機みたいになっちゃったんで、更に羽を増やして8枚にして何とか形にした。
ついでにサリナさんに渡すものも作っておいた。
「 なんで風を当てると回るの? 」
ベクトルで説明するか、作用反作用で説明するか、判り易いのはどちらだろう。
「 羽に風が当たるだろ、そうすると風が羽を押すんだ。 でも、ほらここを見て、羽が傾いているだろ。 」
「 うん、曲ってる 」
「 そうだね、曲ってるね。 曲ってるとね、風は羽を後ろじゃ無くて斜めに押すことになるんだ、だから回るんだよ 」
「 じゃあ、真っ直ぐにしたら回らないの? 」
「 自分でやってごらん 」
そう来ると思って、羽は差し込んで在るだけだから角度は自由に変えらる様にしてある、時間が無いから羽の軸を差し込んだだけの簡単な構造になったとも言える。
羽根の角度を変えたかざぐるまを台から外して、部屋の中を走り始める、病室で走り回るのはどうかと思うんだが誰も注意しないな。
ばあちゃんも、ホッコリした様な目で見ているだけだ。
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息子さんがかざぐるまで遊んでいるうちに、サリナさんの処置を進めよう。
「 サリナさん。 水は飲めてますか? 」
「 ええ。 目が覚めてから、コップで2杯飲みました 」
「 それでは、もう食事を始めて見ましょうか 」
ポケットから出した物をサリナさんに渡す。
「 これは? 」
「 1つで1食分の栄養が補給できる携帯食です。 中身はゼリーになっていますから、胃や腸に負担が掛からないでしょう 」
サリナさんに渡したのは兵士用の携帯食のゼリータイプ、ゼリーの中に気泡は入って無いんでお腹は膨らまないがカロリーと栄養バランスはバッチリだ、若干のカフェイン的な興奮剤は入っているが。
水以外の物をお腹に入れて、取り残した残留物を体外へ排出したいんだよな、ゼリーには食物繊維も入ってるし。
「 そこを回すとフタが取れて・・・・・・そうです。 そこに口を付けて吸うか、下の容器を押して食べて下さい 」
「 これは! 甘くて食べやすいですね! 」
「 そうですね、食べやすい様に工夫されています 」
「 甘いの! 僕も食べる! 」
息子さんが騒ぎ始めた、かざぐるまで気を逸らしていたんだが食べ物には反応するか。
「 あら、じゃあ食べて 『 いけません! 』 」
「 それはサリナさん用の病人食です。 早く健康になりたいなら、全て召し上がって下さい 」
「 嫌だ! 僕も食べるんだ! 」
子供が騒ぎ始めた、子供をなだめながらこちらをチラチラ見てくるサリナさん。
どうするか見ていたが、息子さんは諦めようとしない。
「 どうでしょう? 一口だけなら大丈夫だと思いますが? 」
「 ばあちゃん、普段からこんな感じ? 」
サリナさんは無視してばあちゃんの顔を見る、そろそろイラッとしてきた。
「 こんな感じって、何がだい? 」
握りしめてた右手の親指を立てて、背中越しに息子さんを指さす。
「 孫がどうしたってんだい? 」
「 お孫さんは父親に似てますね、耳は人族と同じ形だし、髪の色も父親と同じだ 」
「 ああ、そうだね。 気にいらないが、しかたがないさ 」
「 性格も父親そっくりだね 」
「 そんなこと無ないさ、あたしやサリナがシッカリ育てているからね 」
「 そう? 気に入らないことが在ると騒ぎ出す、この間見た父親にソックリだけど? 」
クルッと回ってベッドを向く。
「 この部屋は土足禁止にしてある、サリナさんの治療のためにね。 でも彼は土足だ、それにベッドの上に乗ってる 」
顔はばあちゃんに向けたまま続ける。
「 なんで誰も注意しないのかな? 」
「 それはだね・・・・・・ 」
「 子供の見た目が親に似るのは当たり前だけど、中身はどうなんだろね? 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
部屋の中が静かになった、誰もしゃべってない、息子さんも空気を読んだのか静かになったと思ったら、
サリナさんが口を塞いでるだけだった。
「 今日彼は、『 騒げば規則を破っても許される 』って言うスキルを身に付けた、誰も彼を叱らないから。 このまま育てば 『 貴族は平民に何をしても許される 』 って言うスキルに進化するのかな? 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
「 言ったはずだよ? サリナさんは病気で体力が落ちてる、他の病気に罹り易くなってる。 今他の病気に罹ったら命に係わるって 」
ばあちゃんに近づいて静かに話す。
「 サリナさんの命より、孫のワガママを優先する気か? そのつもりなら治療を中止するけど 」
その後、サリナさんのベッドのシーツと布団が交換され、部屋は掃除され、ばあちゃんは騒ぐ孫を抱えてどっかに行った、きっちり躾て欲しいものだ。
最初に動き始めたのが、最初からサリナさんの看病をしていたメイドさんだったのは、流石と言うべきか。
「 そのかざぐるまは、なぜ回っているんです? 」
サリナさんの枕元のケースの中で、ユックリ回る黒いかざぐるま。
俺が作ってきたかざぐるまは、汚れない様にガラスのケースをしてサリナさんの枕元へ飾った。
1つは金属の色の、もう一つは黒色をしていて、黒色の方だけガラスケースの中でユックリ回ってる。
「 かざぐるまにチョット手を加えたんです 」
「 魔道具でしょうか? 」
風の無いケースの中で動いていれば、魔道具にも見えるだろう。
「 これには魔石を使っていません、厳密に言えば使ってはいるのか 」
「 ??? 」
「 かざぐるまの表面に、魔法陣用のインクを塗ってあるんですよ。 まぁ、魔素ぐるまってとこですかね 」
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