表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/192

スカウト

舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。


・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少歳に召喚され蘇る。 ばあちゃんは当主の代理で、現当主の娘さんは病気だった。


|||||


主治医はサリナさんの手術の執刀を拒否した、針と糸での傷口の縫合すらやったことが無いんだと。

俺としてもそんな奴に任せるつもりはない、虫垂炎の症状に似てはいるが確定じゃないから、不測の事態に対処できる程度の医者に任せたい。


で、スラムの診療所に来てる、もちろんマリアさんもクロエさんも一緒で、ばあちゃん家から護衛もイッパイついて来てる、スラムだし、サリナさん関係だし。

ここに来たのはマリアさんが援助している孤児院の紹介だ、貧乏で口が悪いが腕の良い治療師が居ると。

ばあちゃんはサリナさんの看病中、サリナさんに投薬した痛み止めなんかの効果を確認してもらってる、昔の薬がどう作用するのか判らんし。


サリナさんの病気を治すには、外科処置が出来る人材が必須だ、俺には出来ない。

おじさんにはスプラッタは無理だ。


「 ここかしら? 」


「 そうみたいだね、ママ 」


「 ここで待っていてくれ、先に様子を見てくる 」


クロエさんが馬車を下り、護衛2人と一緒に路地に入っていく。


「 マリア、マリオンこっちだ 」


数分後に戻ってきたクロエさんに先導されて、狭くて暗い路地を進む。

しばらく歩くと小さな平屋の建物が見えてくる、腕や足から血を流してる人が建物の外にまでいるから、ここで間違いないだろう。

スラムではポーションは使えないし、神殿の治癒魔法も受けられないんだと、お金が無いから。

そんな環境で患者を診ている人なら、外科処置をしてるんじゃないかと考えてスカウトにきたんだが。



「 それで、ハイエルフのお貴族様が俺に何の用があるんだ 」


「 始めまして。 マリアの息子マリオンです 」


診療がひと段落したタイミングでお話だ、彼は針と糸で傷口を縫合してた、俺が知っている外科処置そのものだ。

何とか協力をお願いしたい、そのための用意はしてきたからそれなりに自信はある。


「 マリアね、有名な薬師だな。 だが、ハイエルフ5氏族じゃ女が家系を継ぐんだろ? それにお前は見たところ人間だ 」


「 ええ、そうです。 孤児院に居るところをママに保護されました、だから私には家督を相続する権利は在りませんね 」


「 はっ! 拾われたか、そりゃ運が良かったじゃないか坊主! 」


「 ・・・・・・運が良い、ねぇ 」


こんな世界に無理やり連れて来られて運が良い、か。

何も知らないってのは幸せだな。


「 リオ。 話を進めないと 」 ・・・・・・そうだったな。


「 あなたの腕を見こんで、ある人の治療を手伝って頂きたいと思いまして 」


「 治療? ハイエルフにゃ優秀な医者が居るんだろ? ポーションだって使いたい放題だし、神官だって呼べば直ぐに来るんだろ? 」 全くやる気がなさそうだ。


「 どちらにも治せなかった病気なんですよ 」


「 だったら諦めな。 話はこれまでだ、ケガ人が待ってるんでな 」


立ち上がって診察室へと向かう男、それを黙って見送る俺。

なぁに、どうせすぐ戻って来るさ。


「 お前何しやがった! 」  ほら。


|||||


彼が落ち着いたところでもう一回お話だ、彼はゴルド、スラムで唯一のまともな(・・・・)医者らしい。


「 じゃあちゃんと全員治したんだな? 神官が居ないみたいだから、ポーションか? 」


「 いいえ。 ああ、ポーションは1本使ったかな 」


「 じゃあ、どうやって治したんだ! 」


彼の治療を見ている間に、護衛の騎士さん達に治療の魔道具で治しておいてもらった。

早いとこ彼と話がしたかったし、かと言ってケガ人を放置するのも悪いなって思ったんでな。


「 話を聞いて頂けるなら、お話しましょう 」


「 ・・・・・・話くらいは聞いてやる 」



椅子に座りなおしたゴルドにサリナさんの病状を伝える、んで、なんとか治したいと。


「 そりゃあ腐れ病だ、治すのは無理だよ 」


「 治せますよ、あなたが手伝ってくれればですけどね。 報酬は金貨100枚と 『 治せるわけがないだろ! 』 」


「 ・・・・・・なぜそう思うんです? 」


「 俺はここで治療をしてる! スラムでだ! いいか、俺は人と獣人が専門なんだよ! 」


「 なるほど。 それで? 」


「 それでって。 俺はハイエルフもエルフも診たことが無いんだよ、治療できる訳がないだろ! 」


もっと落ち着いて話せ、俺に向かってツバを飛ばすな。


「 出来ますよ、私が保証します。 そうですね、では先に報酬の話をしましょうか 」


「 だからそう言うことじゃ 『 急患です!! 』 」



治療室に行ってみると、連れてこられたのは犬獣人の少女、建物から落ちたそうで腿のあたりで骨折してる。

骨が皮膚を破って血が流れていて見ているだけで痛そうだ、出血量が少ないから動脈は傷ついていないようだが、母親らしき犬獣人の女性が暴れ無い様に押さえつけてる。


「 ちょっと待っててくれ、先にこの子の手当てをする 」


「 判りました、私もお手伝いしましょう。 クロエさんバッグをお願いします 」


受け取ったバッグから消毒液を取り出して、まくり上げた腕のひじから先を消毒する。

そのまま少女の足に消毒液を掛けようとして手を止める、このまま消毒したらかなり痛いだろう。


「 先に痛み止めを打ちます 」


バッグから取り出した無痛注射器のメモリを『 子供 』にセット、無痛注射器は小型の拳銃に薬液のシリンジが付いてるような形をしてる。

昔、魔道具に注射器のデザインを登録するときこの形にした、どんな形にでも出来たんだがこの形にしたのは俺の趣味だ。


「 痛みを無くす薬をうつから、ちょっと足を開いてくれるかな 」


少女も少女を連れて来た女性も混乱してる、気持ちは判る。

んでも、こういう時は堂々と淡々と作業を進めた方が上手くいくことをおじさんは知ってる。


「 心配いりません、痛みを無くした方が治療しやすいですからね。 君も痛いのはイヤでしょ? 」


泣いてる少女に話し掛けると、思いっきり頷いた。

少女の太腿の内側、傷口より心臓に近い所に注射器の先を当てて引き金を引く、プシュっと乾いた音がすれば完了だ。


「 どう? 少しは痛くなくなったかな? 」


「 ・・・・・・はい。 痛く無くなりました 」


嬉しそうに笑う少女だが、自分の足を見てまた泣きそうになる。


「 痛く無くなっただけで、骨折の治療はこれからだからね。 それと、少し足が動かしにくいから気を付けて 」


少女が頷くのを確認してから、消毒液を手に取る。


「 傷口を消毒するから、痛かったら言ってね。 痛い時は痛み止めを追加するから 」


今度こそ消毒液をかけるが少女は痛くなさそうだ、不思議な顔で俺の作業を見つめてる。


「 ・・・・・・お前はいま何をした? 」


またゴルドが俺にツバを飛ばしてくる。


「 痛みを止めて、傷口を消毒しました 」


「 ・・・・・・ 」


「 治療を続けます 」


話をしながら治療の魔道具を手に付ける、ここまでは準備作業でここからが治療だ。

準備が出来たんで少女と女性に話し掛ける。


「 これからこれで骨折を治します、痛く無いから安心してね 」


治療の魔道具を付けた手を傷口にかざして魔力を込める、魔道具がほのかに光ると傷口も光り始める。


「 ちょっと待て! そのまま治すつもりか! 」


「 血管はダメージが無いようですから、このまま治療しようと思いますが? 」


「 ・・・・・・そのままだと骨がズレたまま繋がることが在る、ちょっと待ってろ 」


ゴルドは少女の膝辺りを両手で抱えて引っ張り、傷口を見ながら骨の位置を元に戻すと、振りかえって俺に向かって言う。


「 始めてくれ 」


黙って頷いて治療を再開、少女の治療が完了したのは2分後だった。

誤字脱字の報告、読後の感想などお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ