銀と青
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少歳に召喚され蘇る。 エルフのばあちゃんちで始めた魔道具の修理は完了、賭は俺の勝ちだ。
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薄暗い室内には強めの香水の匂い、部屋の中央にあるベッドには長い銀髪の女性が横になってる。
ベッドの横には口元を布で隠した2人のメイドさん。
ゆっくりベッドまで近づいて、小さな声で出ハッキリと御挨拶。
「 ご挨拶が遅れました。 マリアの息子、マリオンと申します 」
「 初めまして、マリオン君。 フォートレス家当主 サリナです 」
「 お加減が悪いとお聞きしましたが? 」
「 ええ。 前から時々あったんですけど、今回は特に酷いんですよ 」
彼女の額から落ちるタオル、熱を下げようとしているんだろう。
そのタオルを氷水につけてもう一度額に当てるメイドさん、手は真っ赤だ、氷水にタオルをつけて絞るタダそれだけの作業を何回繰り返したのか。
「 ばあちゃん、レジを用意してくれる 」
「 レジ? それは何なんだい? 」
「 何って・・・・・・。 ほら、服とか下着とかに使う伸びる素材の 『 ああ、ゴムのことだね 』 」
今はゴムって呼んでるんだと、白川さんと河原君が広めたらしくて、他にも通用するカタカナ文字があるんだと。
前はカタカナ文字はほとんど意味が通じなかったんで、会話する時にカタカナ語を使わない様に俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ。
ばあちゃんに用意して貰った薄い板状のゴムを2人のメイドさんに持ってもらって、中央に砕いた氷と水を入れて4角を束ねて紐で縛る、氷嚢の完成だ。
紐を棒にくくりつけたら、タオルを交換していたメイドさんに渡す。
「 これを額に当てて下さい、冷たすぎる様なら氷を減らして水を増やして 」
「 畏まりました 」
5氏族の長と会食したとき違和感があった、各氏族の長は大体同じ歳に見えたんだが、ばあちゃんだけスゲー歳が離れてた。
メイドさん5人のうち1人はばあちゃんと同じ銀髪で、ばあちゃんと同じ家系じゃないかと思ったんだが、子供にしては歳が離れすぎだ。
それと魔道具に付いてた長い銀髪、ばあちゃんの娘さんが寝込んでいると聞いたのは昼食のあとだ。
「 私の不注意で、魔道具に髪の毛が付いていたと聞きました。 申し訳ございません 」
「 いえ、それは気にしないで下さい 」
「 どうしても一度見ておきたかったのです、それで調子が良いときに見に行ったのですが・・・・・・ 」
サリナさんの病状は最悪で主治医の診断では不治の病、お腹の中から腐っていく原因不明の難病なんだと、看病しているメイドさんが口元を隠しているのは感染予防だとか。
んで、サリナさんは、ばあちゃんも知らないうちにコッソリ魔道具を見に来たらしい、命を落とす前に見ておきたかったんじゃなかろうか、って言ってた。
「 大丈夫ですよ、髪の毛が入ったって魔道具は壊れませんから。 そうそう、やっと修理が終わりましてね、明日からは色んな物を造りますからぜひ見にいらして下さい 」
「 そうですわね・・・・・・調子が良ければ見に行きたいですわね 」
ちょっと寂しそうな笑顔だ、そろそろ本題に入らせてもらおう。
「 それで、お腹を見せて頂いてもいいですか? 」
「 ・・・・・・お腹をですか? 」
「 ええ。 マリオン君が気になると言い張りましてね 」
さっきまで俺の後ろで黙って立ってた男性が会話に割って入ってきた、主治医なんだけどな。
「 私は構いませんが・・・・・・移してしまわないか心配なのですが 」
まぁ気持ちは判る。
医者でも無い奴がいきなり入って来て腹を見せろって言うんだから、戸惑うのも無理は無い。
看病していたメイドさんが凄い目で睨みつけるのも判る。
「 多分移らないと思いますよ、それに移っても私の責任ですからご心配なく。 それでは少々失礼して 」
お腹を出すのは主治医にお任せだ、貴族のしかも既婚者のお腹は旦那さん以外は見ちゃいけないらしいしな。
「 少しだけ触りますから、痛かったら言って下さいね 」
サリナさんのお腹には外見上の大きな変化は無い、チョット下腹が膨らんでいるけど。
何か所触って確認、下腹部を中心として右下の痛みが酷い様だ。
「 出来たよマリオン! 」
「 ちょっと失礼しますね 」
ばあちゃんが部屋に入ってくる、手には俺が頼んでおいた物を持ってる。
頼んでおいたゴム製の氷枕が完成したらしい、水が漏れていない事を確認する、大丈夫だな、後はメイドさんにお願いしてセットして貰う。
「 これは・・・・・・気持ち良いものですね 」
「 それは良かった。 急に来て、変な事をお願いしてしまったお詫びと言う事で 」
主治医とアイコンタクトしてから部屋を出る、後はばあちゃんにお任せだ。
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主治医と一緒に倉庫に向かって廊下を歩く、完成した魔道具が早速役に立ちそうだ。
部屋に入る前に、ばあちゃんから主治医を紹介された。
症状を色々聞いたんだが、聞けば聞くほど虫垂炎としか思えなかった、んで、触診の真似事をやらせて貰ったんだが。
「 それでどうなのかね? 」
「 多分ですけど、虫垂炎が悪化した可能性が高いと思います 」
何回も同じ症状になってるて聞いたから慢性タイプだと思うんだよ、それが悪化して盲腸までやられてるかも。
「 それで治るのかね? 」
「 治りますよ。 手術が上手くいけば、ですけどね 」
「 本当かね!! 不治の病だぞ! 」
「 基本的な薬と手術器具は造りますよ、魔道具でね。 後はあなたの腕次第です 」
「 何を言っているんだ?! 」
「 何って。 あなたが手術をするって話ですが? 」
いきなり立ち止った主治医の顔色は、今にも倒れそうなほど青かった。
気付かれた点、誤字等在りましたら、読後の感想をお待ちしています。