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白黒とカラー

舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。


・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少年に召喚され蘇る。 勇者の休息所で2泊3日する事になった。


|||||


『 ディスタンドの歴史 』 を読んでるんだが、何年前の事なのかさっぱり判らない、真実なのかも判らんし。

他にすることが無いんで何とか読めてる感じ、2泊3日の最大の敵は退屈だった。

それよりも、だ。


「 そろそろ、昼飯の時間だと思うんだが 」


小屋には時計が無いんで正確には判らないが、9時に王都を出たから移動時間と読書の時間から計算して昼飯の時間のはずだ。

俺の腹時計でも昼飯の時間だ、スミティ氏は来ないけど。


呼んでた本を置いて、バッグに入ってるマリアさんが作ってくれたサンドイッチを取り出す。

この分じゃ夕飯も出て来るか判らないんで、1個だけで我慢して足りない分は水を飲んで誤魔化そう。

この身体になって良かったことの一つは胃の調子が良いことだ、肉を腹いっぱい食べても胃がモタレ無いのは嬉しい。


「 結界の中って静かなんだな 」


サンドイッチの包みを剥がす音が部屋に響く、外からの音が入ってこないんで不気味なくらいに静かなんだが、この部屋は怖くない。

常に何かがまとわり付いてくる感じがしてる、見えない子犬や子猫がじゃれついてる感じが近い。

部屋を確認しても灯りの魔道具が無かったから、夜には真っ暗になるだろう。

俺は暗闇が怖いけどこの小屋なら大丈夫そうだ。



サンドイッチに食べようと口を開いた瞬間、窓から眩しい光が差し込む。

直ぐに椅子から降りて床にしゃがむ、サンドイッチは離さない。

窓に背を向けていたから目は眩んでいない、姿勢を低くしてライトアローの魔道具を用意してから窓に近づく。

壁に背中を付けてコッソリ外を見るが林しか見えない、窓枠の下を通って反対側へ。

同じように壁に背を付けて、コッソリ外をうかがう。


「 マリアさん? 」


マリアさんが笑顔でピョンピョン跳ねてる、周りを見渡して危険が無いことを確認してから窓を開ける。


「 ママ! どうしたの、今の光はなに! 」


こちらに気が付いたマリアさんが何か叫んでるけど何も聞こえない、身振り手振りで小屋の入り口の方を示してる。

意味は分からないが無事そうなんでひと安心、一口も食べていないサンドイッチを包み直してから小屋のドアを開ける。


「 お帰りなさいませ。 ご主人様 」


ばあちゃんエルフを先頭にして10人のエルフが跪いてるんだが。

俺は秋葉原に来た覚えは無い。


|||||


「 つまり、2泊3日ではなかったと 」


今回の試験? 確認? の詳細をばあちゃんエルフが説明してくれた、結果が判ったんで俺を呼び出そうと声をかけたが反応無し、色々試してライトの魔法を思いついたんだとか。


この小屋に掛かっていたのは攻性結界で、結界に触った瞬間に結果が判るんだそうだ。


「 許されていない者が結界に触れると、排除されますのじゃ 」


クロエさん吹き飛ばされて、重傷でボロボロになってたからそれは知ってる。

んで、5氏族会議で問題となったのは2つ、話が本当かどうか、それと結界は問題無く働いているかどうか、要は自分の眼で見るまでは信じないって事だ。


「 排除と言うと具体的には? 」


「 バラバラになりますのじゃ 」 クロエさんはバラバラにならなかったが。


答えてくれたのは最長老のばあちゃんエルフ、部屋に入っただけで納得してくれるんだったら俺としては楽でいい、スミティ氏は青い顔してるけど。


「 ・・・・・・ 」 ばあちゃんが顎をクィッとした。


スミティ氏が立ち上がり、左手を前に出してユックリ小屋に近づいてく。


「 我々の祖先は、勇者様からこの建物を護るよう言われております。 じゃから、少しなら結界に触っても大丈夫なのですじゃ 」 


「 その割には、スミティ氏の顔色が悪いんだが 」


「 ご安心を。 結界の効果を確認するのも、長としての役目デスからの 」 ばあちゃんの笑みがチョット黒い。


話している間も手を伸ばして歩いていたスミティ氏、小屋まで3m位のところで指先が光った。


「 結界に触れたようですじゃ 」

「 結界に劣化はありません! 」


「 もっと進みな 」 


「 しかし・・・・・・ 」

「 心配すんじゃないよ。 ちゃんと、マリアの作ったポーションも用意してある 」


歯を食いしばり、脂汗を流しながらジリジリ進むスミティ氏、光は手首まで来てる。

スミティ氏の横まで来て、光の先を確認したんだが光から先が見えない、ばあちゃんが『 バラバラになる 』 って言ってたんでスプラッタを覚悟してたんだが。


「 指先はどこへ? 」

「 結界の攻性作用で消失しました!! あなたは、何とも無いのですか!! 」


「 何ともないな 」


先端の光の部分に結界の境目が在るはず、今はスミティ氏の肘の近くに在るはずだ。

つまり、俺は結界を跨いでいるはずなんだが身体に変化は無い。


「 結界の確認はそのあたりで良いじゃろ 」


後ろに倒れ込んだスミティ氏に、ポーションを飲ませるミーシャ。

スミティ氏の肘から先が綺麗に無くなってる、血が流れていないのが幸いか。




「 ・・・・・・ですから、波乱様が結界に近づいたら結界が変形して、こんな感じで・・・・・・ 」


結界が動作してる小屋に入れたんで、俺はスリスターのハイエルフ5氏族公認の『 転生者 』に認定されたらしい。

んで、ばあちゃんが結界の結果について説明してくれてるんだが。


「 変形と言うと、こうグニャっと? 」


「 そうですじゃグニャっと 」


「 結界ってスライムで出来てるのか 」 知らんかった。


「 違いますじゃ! じゃから、こう変形して・・・・・・ 」


護るだけの守性結界と違って、攻性結界は侵入しようとする存在に対して攻撃するらしい。

でも、俺が入ろうとした時は結界が変形して、結界の方からお迎えに来てたんだと。


「 結界にとってあなた様は、護べき対象と認識されていますのじゃ 」


勇者が張った結界に護衛対象と認識される存在は、そんなに多くないらしい。


|||||


直ぐ帰ろうと言ってたばあちゃんエルフを説得して、1泊だけさせてもらう事にした。

食事やその他を運ぶのに苦労したみたいだけど、無理を承知でお願いした。


その夜見た夢は白黒じゃなくてカラーだった。


ラナがライトソードとライトアローで、魔物の群れと戦ってた。

白川さんが城壁で祈ってた、わざわざ高い所に登らなくてもいいのに。

河原君が盾を振り回してたけど、こいつはどうでもいい。


3人とも周りから頼りにされてる、民衆も彼らを褒め称えてる。

でも、ラナの横顔が少し辛そうなのが気になった。



「 おはようリオ、よく眠れた? 」


「 お早うママ。 ぐっすり眠れたよ 」


「 ・・・・・・ 」 マリアさんは何かを期待してるみたいだけど。


「 残念だけど何も起こらなかったよ。 技術もスキルも手に入らなかった 」


「 そうなのね。 でも気にしないで、リオはリオなんだから 」


朝食後、俺達は王都へと戻ることになった、無理して一泊したから早めに戻らないと。

沢に沿って歩き、少しずつ小屋から離れる。

どうしてラナは辛そうだったのかが気になり、気付かないうちに足が止まって小屋を振り返ってた。


「 ・・・・・・リオ? 」


「 ・・・・・・墓参り 」


「 墓参り? 」


「 墓参りに行きたいな、直ぐじゃ無くても良いから 」


「 そうね。 そのうちみんなで行きましょう! 」


そうだ墓参りに行こう。

3人がどうなったのか、何を成し遂げたのか、その足跡を辿ってみよう。

そう心に決めて前を向いて歩きだす、目に入る風景に色が付いているのに気が付くのはもう少し後だった。


気付かれた点、誤字等在りましたら、読後の感想をお待ちしています。

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