引っ越し
初投稿となります、よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって命を落としたんだが、少年に召喚され蘇る。 エルフが管理する森へお出かけ、森にあった小屋には勇者が張った結界があったが難なく突破する。 そのせいで、勇者に近い存在の転生者とバレた。
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森へお出かけしてから10日が経った。
俺は2~3日おきにカリウス家に訪問して、魔道具の調整を進めた。
魔道具のステータスを確認して、交換の準備が必要なオレンジと、注意が必要なイエローの部品を全て製造してストックした、故障を示す赤色の箇所は無い。
かなりの量になったんだが、これだけ用意しておけば故障個所をブロック毎に交換するだけで全ての故障に対応できるから、お茶会の間は問題無く稼働するだろう。
カリウス家のお茶会の準備は滞りなく進んでいるとメイド長から聞いた、素材集めは商業ギルドと冒険者のお仕事だ、俺は知らん。
「 マリオン! ちょっとお手伝いしてくれる~! 」
「 今行くよ! 」
毎朝の薬草の手入れを手伝ったあと、ボ~ッとしてたらあっと言う間に時間が過ぎてた、時計を見たらもうじきお昼だ。
マリアさんに呼ばれて行くと玄関に見た事の無い2人のエルフが立っていた、耳に特徴有るから直ぐに判る。
耳を隠してるエルフは居ないらしい、種族の特徴で自信があるから、髪の長い女性でも耳は出しているんだと、マリアさん家でも誰も隠してないしな。
「 マリオン。 こちらが今日お隣に引っ越してこられた、スミティさんよ 」
「 始めましてマリオン君。 隣に住むことになった、スミティです 」
「 3女のミーシャです 」
見た目は30~40歳のナイスミドルなエルフと、カーテシーしてるマルセラと同じくらいの歳の女の子、エルフだから正確な年齢は見た目じゃ判らんが。
「 はじめまして、マリオンです 」 頭を下げてお辞儀しておく。
「 マリオン、これをキッチンまで運んでくれる? 引っ越しシチューよ 」
マリアさんが差し出して来たのは大きな鍋、中身はシチューだそうだが。
「 はい、ママ 」 引っ越しシチュー?
大きな鍋をキッチンに運ぶ、鍋と言うより寸胴だが。
レベルが上がってその辺の大人より腕力のステータスは高い、運ぶのには苦労しない。
苦労はしないんだが引っ越しシチューってなんだ、引っ越し蕎麦なら判るんだが。
「 リオ、マリアの用事は何だったの? 」
庭からリビングに入ってきたクロエさんが、俺に訊いてきた。
庭でマライアと稽古してたらしい、タオルで汗を拭いてる。
「 お客さんが来てたよ、今日引っ越してきたんだって。 これ、引っ越しシチューだって 」
手に持った寸胴をクロエさんに見せる。
「 引っ越しシチュー! 美味しいのよね、これ。 あれ? パンはどうしたの? 」
「 僕が頼まれたのはこれだけ 」
クロエさんも知ってるのか、引っ越しシチュー。
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昼食は新しいお隣さんと一緒に食べることになった、これも伝統なんだとか。
「 エルフの伝統なんだよ。 マリオン君は初めてなのかな? 」
「 そうですね・・・・・・、引っ越しソバなら知ってますけど、引っ越しシチューは初めてです 」
マリアさんはスプーンを持っていない方の手を頬に当ててる、知らない人が見たら『 シチュー美味し~ 』って感じに見えるけど、シッカリ意味がある。
あの日、勇者の休息所で幾つか決めた事の1つだ。
あの日、勇者の休息所で皆で話し合って決めた事がある。
まず、クロエさんが俺にしたことは不問にする、俺からしたら完全に誤解なんだが、黒エルフの長年の恨みがあるらしく俺の首を簡単には諦められないんだと。
だから、結論は事実が判るまで先延ばしにして、それまでは護衛してくれるって。
「 本当によろしいのですか? 」
何度もマリアさんが確認してきたけど俺は自分の作ったものは全部覚えてる、暴走してんな事になるような魔道具は無い。
本人だけじゃ無くて生まれた子供も孫も肌が黒くなるなんて、間違い無く遺伝子レベルでどうにかなってる。
もし偶然にでも作ってたんなら、改良すれば魔物を一掃できるよな。
防衛施設の記録にアクセス出来れば証明出来るんだが、記録が残ってるかは微妙だ、それに5000年経ってるから地形が変わってる可能性も在る、施設が無事なのかも判らんけど。
それと、俺の事は秘密にすることにした。
話しても誰も信じないだろうし、何より所持してた技術が無くなってるから、前と同じ事をやれって言われても出来無い。
マリアさん達との関係は今まで通り、いちいち跪かれたんじゃ気疲れするし。
「 じゃあ、私のことはママと呼んで頂けるんですのね! 」
「 お姉ちゃん・・・・・・英雄のお姉ちゃん・・・・・・ 」
マリアさんが凄く喜んで、マライアがトリップしてたけど、マルセラはマルセラのままだった。
結界の森、その中心に位置に在った小屋は勇者の休息所、フラッとやって来てしばらく滞在する時に使うんだと、マリアさんは休息所を守ってる5氏族のうちの1人らしい。
んでだ、色々と聞いてみたんだが、ハイエルフと黒エルフでは俺の評価が全く違っていた。
ハイエルフでは勇者と共に魔星から星を救った英雄の1人、黒エルフでは騙して呪いを掛けた極悪人だそうだ。
「 引っ越し蕎麦? 蕎麦とは何なのかな? 」
『 手の平を頬に当ててる 』 時は正直に話して問題無いケース、両手でやってる時や、頬に当ててる手に反対の手を添えてる時は『 誤魔化せ 』 の合図と決めた。
マリアさんはポッチャリ体型だから、似合うんだよなこのポーズ。
何度もチラチラ見てるとそのうち気付かれる、こう言う時は目の焦点を合わせず全体を見るようにすれば良い。
細かい所まで観察は出来無いが、慣れてしまえば簡単にできるおじさん必須の技能だ、ミーティングで周りの様子をうかがう時にはとても便利。
当面の目標はマリアさん達の安全なんだが俺は社会情勢が全く判らんから、マリアさん(居ない時はクロエさん)に判断してもらう。
マリアさんの手には変化無し、そのまま話して良いと言うこと。
「 蕎麦は穀物の種類ですね、それを粉にして細いパスタ状にした食べ物です。 それをツユに付けて食べます 」
黒パンを千切りながら答えていると、ふと気が付いた。
テーブルにあるのは木の実をタップリ使った贅沢な黒パンだ、シチューに付けて食べるには美味しいんだが、そもそも黒パンは贈り物にするものじゃない。
それに、スミティさんは貴族っぽい、ミーシャちゃんはカーテシーしてたし、黒パンを贈り物する身分じゃない。
「 これは、引っ越し蕎麦の変形したものですか? 」
「 その通りよマリ。 蕎麦が無いからこうなったの 」
「 なるほど 」
贅沢すぎる黒パンだがシチューに負けない味になってる、白パンではシチューの味しかしないだろう、納得だ。
「 麺やパスタじゃなくて、パンになったのは何でなの? パスタの方が蕎麦に近いと思うんだけど 」
黒パンをシチューに浸しながら訊いてみるが、誰も答えてくれなかった。
顔を見ると全員が視線を逸らすから誰も知らないんだろう、まぁ、伝統なんてそういうもんだ。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。