結界の中の小屋
初投稿となります、よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって一度死んだんだが、少年に召喚され蘇る。 カリウス家のお茶会で使用する素材を集めるため、エルフが管理する森へお出かけして休憩中。
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俺の前には昼食のメインとなる3種類のロールパンサンドイッチが並んでいる、挟んである具材がバラバラで統一感が無いんで何サンドになるのかは不明、他にもサラダや鶏肉料理なんかもある。
何サンドか不明なのに3種類と判るのは出来映えによる、ピシっとしてるもの、そこそこのもの、チョット崩れてるものが3種類だ、挟んである具で分けたんじゃ無い。
「 今日は、マライアとマルセラと3人で作ったのよ。 いっぱい食べてね 」
広げられた料理を眺めてる俺にコーヒーを渡しながら、マリアさんが説明してくれた。
完成度が違う理由は何となく判ってたんだが、冷めたコーヒーを温め直すと風味が飛ぶな、今度来る時はドリッパーを持ってこよう。
「 いつもより豪華だね 」
マリアさんは王都で一番の薬師なんで家は裕福なんだが、それにしても今日の昼食はかなり豪華だ。
カリウス家の夕食より豪華になってる。
「 ・・・・・・そうね。 久しぶりに家族揃ってお出かけするから、張り切っちゃった! 」
マリアさんがテヘペロしてる、マライアは引きつった笑顔だし、マルセラは空を見てる。
木の枝で空は見えないんだが、クロエさんは静かだ。
食後はマッタリ。
草笛を教えて貰ったが俺は鳴らせなかった、その辺の草の茎を使って引っ張り合い、先に切れたら負け的なものでも勝てない。
マルセラとマライアと、何度も勝負するが一度も勝てない。
「 森の中でハイエルフに勝つのは難しいわよ? 」
見ただけでどの茎が強いのか判るんだとマリアさんが教えてくれた、マルセラがマリアさんの口を慌てて押さえたけどシッカリ聞こえた。
「 やる前から負けが決まってたんだ 」
「 ズルじゃありませんからね! 」
「 そうなんだ。 じゃあ、チョット別のことをしてみようか 」
花びらの枚数が多い花が在ったんで、花びらが多い花を選んだら勝ちにしたんだが勝てなかった。
んではと、数が奇数か偶数かを当てて貰おうとしたんだが、これは出来なかった。
「 お兄様、奇数とか偶数って何なんでしょう? 」
「 奇数と偶数と言うのは・・・ 」
説明したら理解は出来るようだが納得していない顔をしてる、念のため素数も聞いてみたんだが知らなかった、これで勝てると思ったんだが。
「 リオ? それが何かの役に立つのかしら? 」
「 姉さん、それは・・・・・・知らない人に自慢できるかな? 」 日常生活には全く意味は無い。
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「 マルセラ、葉っぱで作った船で競争しようか! 」
「 競争ですか? 」
近くに在った葉を取って笹舟に似たものを作る、マルセラの目はキラキラだ。
「 兄様! これは葉っぱで作った船ですね! 」
「 そうだよ。 この船で先に下まで・・・・・・そうだな、先にあそこまで着いたら勝ちにしようか 」
近くに流れる沢の下流にある、小さな小さな池を指さす。
「 あそこね! 判ったわ! 」
ハイエルフでも水の流れまでは操れないだろうと予測、1回くらいは勝っておきたい。
「 それと魔法を使うのは禁止ね 」 子供の遊びに魔法は禁止だ。
「 え! 」 マルセラは使うつもりだったらしい、使わせないけど。
俺、マライア、マルセラが各々船を作って準備完了、賞品は無い。
在ったとしても名誉だけだ、あとチョット自尊心が満足するくらいだな。
3隻の船が沢を下って行く、それを追いかける俺達、沢の流れは緩やかだからユックリ歩いても付いていける。
岩に邪魔され、流れのもて遊ばれつつゴールに近づく3隻、今の所1位はマルセラで俺は2位だ。
ゴールは沢の水が作ったような、小さな小さな池みたいなところ。
沢の縁は大きな岩も無く、コケも生えていないから滑って転ぶことは無いだろう。
「 ん? 」 なんか妙な感じがしたな。
「 お兄様どうしたのですか? 私は最後まで諦めませんわよ! 」
「 そうはいかない。 一番は僕がもらう! 」
全身でシャボン玉を割ったような、通り抜けた様な感じがしたんだが振り返っても何も見えない、エルフが森に掛けた結界なんだろうか。
小さな池に向き直るとさっきまでは無かった小屋に気が付く、小屋は丸太で出来てる小屋だ。
結界の中に住んでるんだから多分ハイエルフで、多分何かの事情が在るんだろうけど、後で小屋を訪ねてみよう、何だかスゲー気になる。
舟の競争はマルセラの勝利で終わった、俺は2番でマライアが3位。
マライアは3位だ、ビリじゃない。
「 私の勝ちね! 」
マルセラが葉っぱで出来た船を手の平に乗せてクルクル回ってる。
何気ない仕草なんだろうけど、エルフは森の民というが納得できるくらいここの景色にあってる、マライアは悔しそうだけど。
「 お兄様、もう一度です! 」 それに関しては賛成、勝つまでやりたいところだ。
「 ちょっと待って。 その前に挨拶しておかないと 」
「 挨拶ですか? 」
「 そこの小屋の人にね。 家の前で遊ばせてもらうんだから、挨拶はしておかないとね 」
街の中じゃなくて森の中の一軒家だからな。
1人になりたくて不便な森の中で暮らしてるとしたら、急に家の前で子供が騒ぎ始めたら怒るだろう。
いきなり魔法を使う短気なエルフだったら最悪だ、礼節は守らないと。
「 ・・・・・・イオ? 大丈夫なの? 」
「 大丈夫だよ姉さん、ちょっと挨拶するだけだから。 変な人だったら逃げるけど 」
マライアはもう逃げる気だし、マルセラはマリアさんの後ろに隠れてる。
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小屋の扉の前に立ってノックしようとして、ふと右側で俺を見てるマリアさんの引きつった笑顔に気が付いた。
そうか、ここは小さいけど家だ。
お上品なノックじゃ聞こえないかもしれないと思い直し、ノックを止めて握りしめた手で扉を叩く。
ドン ドン ドン
「 急に訪ねてすみません! ちょっとよろしいでしょうか! 」
返事は無い、すでに亡くなっているんだろうか。
ドン ドン ドン
「 どなたか、いらっしゃいませんか! 」
・・・・・・しばらく待つが部屋の中で動く気配はない、中に誰かが居るような感じがするんだが、居留守を使われてるのか。
人に会うのが苦手なヒッキーなハイエルフが住んでいるのなら、用件だけ告げて引き返すとしよう。
「 お。 開いたな 」
考え込んでるうちに勝手に小屋の扉が開き始める、魔道具を使用した自動扉なのか、中の人が開けてくれたのか。
小屋の中は薄暗いが灯りが必要なほどじゃない。
「 どなたか、いらっしゃいませんか! 」
気配はするんだが返事は無い、中で倒れてたりしな。
ちょっと心配になってきた。
「 ママ。 勝手に入っちゃ、不味いよね? 」
「 大丈夫だと思うわ。 それより、ちゃんと挨拶しないとね 」
マリアさんはニッコリ笑ってる、さっきと違って輝くような笑顔だ。
中に入れっていうけど、この小屋の扉って外側にも内側にも取っ手が無いんだよな、試練の部屋と同じ扉じゃん、嫌な感じはしないから閉じ込められることはないと思うけど。
「 どなたか、いらっしゃいませんか? 」
戸口でコッソリ中を覗いてみる、ベッドとテーブルと椅子が見えるが人影は無い。
床にも倒れていないから最悪のケースは無いようだ、ゴミやホコリも落ちてないから誰かは居るのか。
「 お邪魔しま~す・・・・・・ 」
閉じ込められないように、片足で扉を押さえながら小屋に入る。
小屋の中は綺麗に片付けられている、シーズンはじめのキャンプ場のバンガローのように虫の死骸や葉っぱが入り込んでる事も無い。
「 失礼しま~す。 いらっしゃいませんか? 」
部屋の中を見渡して目に入るのは、ベッド、テーブル、椅子、本棚もあるけど本は少ない。
「 変だな、誰も居ないのか 」
「 リオ? どうしたの? 」
振り返ると、マリアさんとマライアとマルセラが小屋の外から中を覗いてる、中に入れば良いのに覗くだけだ。
お化けや幽霊がでるような雰囲気じゃ無いんだが、ここは男の子として先頭に立つべきか。
「 誰かの気配はするんだけど、誰も居ないんだ。 倒れてるんじゃ無ければいいんだけど 」
中に入ろうとしないマリアさん達をそのままにして、部屋に入る。
入って左側にベッドと本棚、正面にテーブルと椅子と扉、右側にはキッチンと扉。
部屋の中の空気は清々しいほど清浄で、森の中より気分が良くなる、花粉症が始まったらここで暮らせないだろうか、花粉症は辛いんだよな。
キッチンを調べるが最近使った痕跡が無い、誰も居ないのかそれとも外食派なのか。
キッチンの奥の扉は食料庫? だったか、何も置かれていない。
もう一つの扉は水洗トイレとお風呂。
「 トイレットペーパーがあるよ、予備まであるし 」 ちょっとビックリだ。
ここにも誰も居なかった、倒れてるんじゃ無ければ良いけど、隠し部屋に隠れているのか?
「 ママ、奥にも誰も居なかったよ・・・・・・ 」
元の部屋に戻ると、マリアさん達が小屋の外で跪いてるのが見えた。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。